中国侵略戦争阻む反戦闘争の爆発を アジア安保会議で米中激突 米「インド太平洋は優先作戦地域」

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週刊『前進』04頁(3348号03面01)(2024/06/10)


中国侵略戦争阻む反戦闘争の爆発を
 アジア安保会議で米中激突
 米「インド太平洋は優先作戦地域」


 5月31日から6月2日にかけてシンガポールで開催されたアジア安全保障会議は、その前段に行われた米中国防相会談も含めて、米中が激しく衝突する場となった。アメリカ帝国主義の中国侵略戦争への突入が、米中対立を非和解的に激化させ、中国スターリン主義の反人民的な軍事対抗を引き起こし、アジア・全世界を巻き込む世界戦争に向かって歴史の歯車を急回転させている。

フィリピンめぐり米中国防相が応酬

 約1年半ぶりとなる米中国防相会談は5月31日に行われ、台湾や南中国海を焦点に米中の激突・応酬が繰り広げられた。
 オースティン米国防長官は、台湾海峡周辺で中国軍が「挑発的な活動」をしていると非難した。また、南中国海で中国船とフィリピン船の衝突が相次いでいることを念頭に「航海の自由の尊重」を中国に要求。さらにウクライナ戦争をめぐり、米側は中国がさらなるロシア支援に乗り出せば「米国と同盟国はさらなる措置を取る用意がある」と語気を強めて恫喝した。
 一方、中国の董軍国防相は、「台湾は中国の内政問題であり、外部勢力が干渉する権利はない」と主張し、米軍がフィリピンに展開した中距離ミサイルを「地域の安全にとって重大な脅威」と非難した。米帝が台湾に近いフィリピンを引き込んで対中戦争準備を加速させていることに、激甚に反応しているのだ。

米帝の支配力衰退東南アジアで顕著

 アジア安保会議とは、英シンクタンク「国際戦略研究所」が主催し、アジア太平洋諸国を中心に40カ国以上の防衛相・国防相が集まる会議だ。「国際的な安全保障上の課題を話し合う」ことを建前としているが、実際には米帝、日帝、中国といった「大国」がそれぞれの軍事・外交戦略を展開し、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国や太平洋諸国への影響力を競い合う場と化している。
 マルコス比大統領は5月31日の基調演説で「フィリピン国民が相手の故意の行為によって死亡すれば、それは戦争にきわめて近い」と主張、相互防衛条約を結ぶ米帝と共同で中国に反撃する可能性を示唆した。これに中国は「好戦的すぎる」と反発し、中国とフィリピンの一触即発の状態があらわとなった。
 続いてオースティンは6月1日、「欧州と中東で起きている歴史的な軍事衝突にもかかわらず、インド太平洋は依然として私たちの優先的な作戦地域だ」と演説。ウクライナ戦争や中東での戦火の拡大にもかかわらず、米帝の延命をかけて何よりも中国侵略戦争に注力すると宣言したのだ。
 これに対し、董軍は翌2日、「台湾問題は核心的利益の中の核心」と強調。「外部勢力が『一つの中国』原則を空洞化させ、『台湾独立』を助長している」と米帝を非難し「中国軍は『台湾独立』を阻止するために断固として強力な行動を取る」と主張した。
 これを受けオースティンは3日、「台湾海峡での衝突は間違いなく破滅的なものになる」とさらに強い言葉で中国を恫喝し、「台湾関係法に基づく(台湾支援の)義務を果たす」と、台湾情勢への介入を一層強めていくことを宣言した。
 だが、こうした米帝の中国への激しい非難・恫喝にもかかわらず、インドネシア、ベトナムなどASEAN主要国は必ずしも米帝の側にくみせず、「地政学的な緊張の高まりにグローバルサウスは幻滅している」(インドネシア・プラボウォ次期大統領)と双方に妥協を求める姿勢を示した。これ自身が、アジアにおける米帝の没落と支配力・影響力の著しい衰退を示している。だが、米帝はさらに中国への圧力を強め、戦争へと事態をエスカレートさせていくしかないのだ。

日米韓防衛相会談で3カ国演習合意

 アジア安保会議に先立つ5月31日、ウクライナのゼレンスキー大統領は記者会見で「ロシアの領内で西側諸国の兵器を使用するのは時間の問題だ」と述べ、米帝などから供与された兵器で遠からずロシア領内を攻撃することを宣言した。
 続いてゼレンスキーは6月2日にアジア安保会議に出席し、演説。ASEANを中心とする各国に軍事支援の継続を訴えたほか、6月にスイスで開かれる「平和サミット」への参加を各国に呼びかけ、これをめぐって「(中国が)平和サミットに参加しないよう各国に働きかけている」と批判した。
 これに対し、中国外務省の報道官は3日の記者会見で「中国が他国に圧力を加えるという状況は一切ない」と反論した。
 一方、2日に開かれた日米韓防衛相会談では今夏、複数領域での日米韓3カ国合同軍事演習の実施が合意された。中国との「衝突回避」に努めると言いながら、韓国やフィリピンなどと軍事同盟を強化し、演習を拡大し、戦争への準備を推し進めているのが米日帝国主義なのである。
 反戦闘争のさらなる爆発で、中国侵略戦争・世界戦争の元凶=帝国主義打倒へ攻め上ろう。
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