台湾総統就任演説 中国侵略戦争阻止!6・9デモへ 米日帝と一体化し「反中」絶叫 中国は海上封鎖演習で対抗

週刊『前進』04頁(3347号02面01)(2024/06/03)


台湾総統就任演説
 中国侵略戦争阻止!6・9デモへ
 米日帝と一体化し「反中」絶叫
 中国は海上封鎖演習で対抗


 米日帝国主義が中国侵略戦争に突き進む中、台湾をめぐる軍事的緊張が激化している。5月20日に行われた台湾新総統・頼清徳の就任式に、米バイデン政権はアーミテージ元国務副長官ら代表団を派遣し、日本からは超党派の国会議員連盟「日華議員懇談会」(会長・古屋圭司=自民党)の31人が出席。米日の強力な後押しを受けた頼は就任演説で「反中国」を絶叫し、台湾を「主権独立国家」として押し出した。中国・習近平政権はこれに対抗し、台湾の海上封鎖を想定した軍事演習を行った。

「一つの中国」拒み台湾独立論を展開

 日本のマスコミなどは、頼の就任演説について、中台関係の「現状維持」を求め、蔡英文前総統の路線を継続することを表明しただけの比較的「穏健な」もののように報じているが、実際にはそうではない。その内容は、中台関係を「国家対国家」の関係として描き出す事実上の台湾独立論を展開したものであり、台湾総統の演説としてはかつてない重大な踏み込みにほかならない。
 2016年の蔡の就任演説では、「両岸(中台)間の対話と意思疎通」の必要性を認め、またいわゆる「92年コンセンサス」(=中台がともに「一つの中国」に属することを1992年の時点で互いに認めたという認識)についても、実際に92年の中台窓口機関の会談で「若干の共通の認識と了解に達した」ことを「歴史的事実として尊重する」と述べていた。だが今回の頼の演説は「92年コンセンサス」には一言も触れず、代わりに96年の初の総統直接選挙で「中華民国台湾は主権独立国家であることを国際社会に伝えた」と強調した。「一つの中国」を拒み、台湾はすでに「独立」しているのだと押し出したのだ(だが現実には、台湾を「国家」と認め公式に外交関係を持つ国は世界に12しかない)。
 中台の「関係改善をめざす」といった文言も完全に消えた。代わりに蔡の演説では使われなかった「中国」という言葉を連呼して、その中国に対して「中華民国の存在を直視すること」を要求した。中国とはまったく別個に独立国家として存在している「中華民国」を認めろと、中国に対して突きつけたのだ。さらに、「中国の軍事行動は世界の平和と安定に対する最大の戦略的挑戦」と非難し、この「脅威」に対抗するために「世界中の民主主義国家と共同体を形成する」とまで明言した。中国を事実上の敵国とみなし、米日などの帝国主義諸国との軍事・経済の両面にわたる同盟関係を強めることを打ち出したのだ。
 そもそも頼は、蔡前総統のもとで行政院長(首相に相当)に就任した2017年当時から「台湾独立の仕事人」を自称していた独立派の急先鋒(せんぽう)であり、22年9月の安倍国葬には副総統として参列(台湾副総統の日本訪問は1985年の李登輝以来)、また今年5月9日に東京で開かれた日華議員懇談会の会合に寄せたビデオメッセージでは「台湾は日本と生死を共にする運命共同体だ」とまで語った人物だ。だがこうした言動は、単に頼個人の意向によるものではなく、米日帝の中国侵略戦争への突入と連動し、その強力な後押しを受けたものであることは言うまでもない。米日帝は頼をウクライナのゼレンスキーのような存在として背後から支えながら、台湾への軍事支援の強化、南西諸島の軍事要塞(ようさい)化、台湾周辺での軍事演習の拡大など、中国侵略戦争に向けた策動をこれまで以上に激しく推し進めようとしている。

人民の支持を失い危機深める民進党

 だが、米日帝と一体となった頼のこうした主張は、台湾人民からは何ら支持も承認もされていないものだ。そればかりか、与党・民主進歩党の政治支配は頼の就任以前から危機的状況に陥っている。2022年11月の統一地方選での惨敗に続き、今年1月の総統選と同時に行われた立法院選でも過半数を割り少数与党に転落。立法院の権限強化を図る野党主導の法案をめぐっては、民進党は成立を阻止するため議長の着席を妨害するなど強硬手段に出たが、結局5月28日に採決に持ち込まれ、法案は立法院を通過、今後も与野党対立は激化すると見られている。こうした政治危機の根底にあるのは、不動産価格の高騰、貧富の格差の広がり、物価高といった現実に対する人民の不満と怒りの高まりである。だからこそ頼は、米日など帝国主義への依存を強めつつ、ひたすら反中排外主義をあおることで危機を乗り切ろうと必死になっているのだ。
 他方、中国・習近平政権は頼の就任演説に激しく反発し、「台湾独立勢力への懲罰」と称して、22年8月のペロシ米下院議長(当時)訪台時以来となる「台湾海上封鎖」の軍事演習を強行した。だが米日帝は、こうした中国スターリン主義の反人民的な軍事対抗をも格好のえじきとして、ますます戦争策動を強めようとしているのだ。
 戦争の最大の元凶である米日帝と対決し、首都・東京を揺るがす6・9大反戦デモをかちとろう。中国侵略戦争を阻む反戦闘争、安保粉砕・日帝打倒の闘いを今こそ爆発させよう。
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