永住権はく奪を許すな 入管法改悪案は戦争準備
週刊『前進』04頁(3345号04面01)(2024/05/20)
永住権はく奪を許すな
入管法改悪案は戦争準備
(写真 衆院法務委員会で審議中の入管法改悪案に反対する人々が国会前で抗議の声を上げた【5月15日 東京都千代田区】)
5月15日、衆議院法務委員会で行われた入管法改悪案の審議で岸田首相は、「国際的な人材獲得競争が激化する中で我が国が魅力ある働き先として選ばれる国」となるための「外国人材の受け入れ制度」が「育成就労制度」だと語った。
「現代の奴隷労働」だと悪名高い「技能実習制度」を廃止し、新たに設ける「育成就労制度」は、単なる看板の掛け替えに過ぎないと批判が噴出している。改悪案では新たに「季節性のある分野」=農業・漁業で派遣形態を可能にするというのだ。「繁閑等」を踏まえ、夏は農業、冬は漁業という就労も可能となる。派遣元と派遣先の間で労働者がじゅうりんされるのは火を見るより明らかだ。
この一事をとっても育成就労制度が、安価・使い捨ての労働力としての外国人労働力導入であることは明らかだ。育成就労期間の3年間、さらに特定技能1号に移行後の5年間、計8年間は日本で結婚することも家族を呼び寄せることも禁止だ。これについて岸田は、「技能等を身に付けてステップアップしていかない限り、帰国していただく制度」だから当然と言い放った。岸田にとって外国人労働者は搾取の対象でしかないということだ。
育成就労から「特定技能1号」、さらに転籍も家族帯同も可能な在留資格「特定技能2号」に移行した場合、「最終的には永住資格を取得する外国人が増加し得る」と岸田・自民党は断言する。しかし根拠は希薄だ。昨年12月末時点で特定技能2号はわずか37人というのが現状だ(1号は20万8425人)。それでも「永住許可制度の適正化」を図ると称して永住権剥奪(はくだつ)を改悪案に盛り込んだのである。
新たに加えられる永住権取消事由は、以下の3点だ。①入管法上の義務を遵守(じゅんしゅ)しないこと。例えば在留カード常時携帯義務違反(入管法23条2項)、在留カード紛失後14日以内の再交付申請義務違反(同法19条の12第1項)なども含まれる。②故意の公租公課の滞納。③広範な類型の罪により拘禁刑(執行猶予でも)に処せられたこと。
②の公租公課とは、税金、国民健康保険、国民年金などを指す。急な病気や失職で支払えなくなった場合について、入管庁は「個別事情ごとに丁寧に判断する」などと言うが、法が通れば、法務大臣の「裁量」でいかようにも運用できる。
昨年6月強行採決された難民申請者・仮放免者をターゲットとした難民排除の改悪入管法の全面施行が6月10日に迫る中、永住者をターゲットにした改悪案が突然出てきたのはなぜか。
昨年6月末時点の永住者88万178人のうち中国人が32万4533人(37%)だ。国民年金未納が日本全体で約2割という実態は棚上げし、永住者、それも中国人をターゲットにした攻撃であり、反戦闘争への予防弾圧そのものだ。
「外国人は煮て食おうと焼いて食おうと自由」と言い放った入管体制の本質を中国侵略戦争突入下で全面化させ、在日労働者人民に日帝に屈従するか、それとも追放かを迫り、労働者階級を分断する攻撃だ。
しかしこの攻撃に貫かれているのは、朝鮮・中国―アジア人民の民族解放・革命戦争で一度は打倒された日帝の恐怖だ。戦時入管体制と対決し、プロレタリア国際連帯で中国侵略戦争を革命に転化しよう!