経済安保新法成立を弾劾する 兵器の共同開発・生産狙い労働者を調査・監視・処罰
週刊『前進』04頁(3345号03面03)(2024/05/20)
経済安保新法成立を弾劾する
兵器の共同開発・生産狙い労働者を調査・監視・処罰
中国侵略戦争のための「重要経済安保情報保護・活用法」が10日、参院本会議で可決、成立した。この日は同時に、陸海空の自衛隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」設置のための改悪自衛隊法も成立した。このように中国侵略戦争の国家総力戦体制づくりが、野党の完全な屈服を突いて急速に進んでいる。絶対に許してはならない。
経済安保新法は軍事技術及び関連する産業・技術に「国家機密」の網を広くかぶせ、労働者人民を戦争に動員していくものである。
政府は「法案は軍事分野とは無関係」との説明を国会で繰り返したが、大うそである。新法の核心は、日米帝国主義の中国侵略戦争のために、米帝などとも共同して兵器の共同開発・生産を推進することにある。
4月の日米首脳会談で、ミサイルの共同開発・共同生産や、米軍の大型艦艇や軍用機を日本の民間施設で整備することが決められた。戦闘機の日英伊共同開発も進められている。こうした軍事生産を急ぐ日帝にとって、機密の保持は不可欠・急務となっている。
経済安保新法は、2014年に施行された特定秘密保護法(スパイ防止法)が秘密保護の対象を「防衛、外交」などに限定しているものを経済分野に拡大する。「漏洩(ろうえい)すると安全保障に支障が生じる」情報を政府が「重要経済安保情報」に指定し、あらかじめ「適性評価制度(セキュリティークリアランス)」をクリアした者にだけ情報を扱う権限を与える。情報を他人に漏らした者、また「違法に」取得した者には、5年以下の拘禁刑や500万円以下の罰金が課される。機密性がより高い情報の漏洩には特定秘密保護法(懲役10年以下の罰則)を適用する。「共謀・教唆・扇動」も処罰される。ジャーナリストや市民が、軍事研究と密接に関わる産業技術の秘密情報を入手し、反戦の立場からそれを暴露・報道することも処罰しようとしている。
経済分野のどのような情報が「重要経済安保情報」に該当するかの基準は全くあいまいであり、「基幹インフラや半導体技術」などが例示されているが、政府がいくらでも対象を拡大できる。特定秘密保護法よりもはるかに広範囲に国家機密の網がかぶせられ、規制・弾圧が強められる。
「適性評価制度」も重大な攻撃だ。この制度は特定秘密保護法のもとですでに実施されているが、今回、対象者が公務員のほかに民間企業の労働者や大学・研究所の研究者・技術者などに大幅に広がる。内閣府に新設される調査機関が警察などを使って対象者の「犯罪歴」や薬物使用、飲酒状況や精神疾患、経済状況を詳しく調べ、それをクリアした者に情報を取り扱う資格を与える。先行するアメリカでは交友関係や国家への忠誠心など、個人の思想・信条やプライバシーに踏み込んだ調査が行われている。日本でも同様の調査が行われることは必至だ。
資格を得た後も警察などが「スパイ防止」と称して資格取得者及びその周囲の労働者の行動、交友関係を常に監視し弾圧することを狙うだろう。労働者の職場からの反戦決起を恐れ、未然に封殺しようとしているのだ。
財界は新法の成立を「資格保持が国際共同開発や海外入札の参加条件になる例があり、法整備は日本企業の競争力強化につながる」(5月11日付日本経済新聞)と歓迎している。三菱重工業や日立などは、これを機に一挙に軍需生産や他国との共同開発・生産を増強しようとしている。文字通り「死の商人」だ。
戦前、軍機保護法や国防保安法がつくられ、原子爆弾や細菌兵器の研究・開発が大学の研究所や民間機関も動員して密かに進められた。このような歴史を決して繰り返してはならない。中国侵略戦争阻止、岸田打倒の反戦闘争を爆発させよう。6・9闘争に全国から結集しよう。