焦点 止まらない円安 財政破綻国の大軍拡が根本原因
週刊『前進』04頁(3344号03面03)(2024/05/13)
焦点
止まらない円安
財政破綻国の大軍拡が根本原因
歴史的な円安が止まらない。4月29日、外国為替市場で円相場は1㌦=160円台に下落した。1990年4月以来34年ぶりの円安水準だ。その後、円は154円台まで急速に値を戻した。5月2日にも円相場は1㌦=157円台に落ちた後に153円まで急騰した。いずれも政府と日銀による為替介入があったことが判明している。介入規模は計8兆円強に達したと見られる。だが、こうした政府の介入で円安が止まるとは誰も思っていない。
今日の円安は日本帝国主義の絶望的破綻の表れだ。
日銀の国債購入は継続
2022年2月のウクライナ戦争開戦後、世界は戦時インフレに見舞われた。米欧の中央銀行は利上げに動いたが、日帝は金融緩和策をやめることができず、米欧と日本の金利差を背景に円安が続いてきた。それがさらに急速に進んだきっかけは、低金利政策の維持を決めた日銀の4月26日の金融政策決定会合だ。そこには、どうあがいても低金利政策をやめられない日帝の末期的な危機がある。日銀は3月19日の金融政策決定会合で、マイナス金利の解除と長期金利を低く抑えるためのイールドカーブコントロールの撤廃、上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(REIT)の新規購入の終了を決めた。だがマイナス金利の解除と言っても、短期金利をマイナス0・1%から0ないし0・1%へとほんのわずか引き上げるに過ぎない。最大の問題は、国債を無制限に買い上げる政策の継続を決めたことだ。今後も事実上の日銀の国債引き受けで、国家財政の赤字を埋め続けるのだ。
日帝は最悪の財政破綻国家だ。国と地方自治体が抱える長期債務残高は23年度末で1285兆円に達した。その日帝が「5年で43兆円」の大軍拡に乗り出したのだ。財源は日銀の国債引き受けに頼るほかにない。岸田政権は国債を軍事目的に充てないとしてきた財政原則を破り、防衛費を賄うための建設国債の発行を決めた。日銀の国債引き受けで膨大な軍事費を調達することの根本的な破綻性が、「日本国家の投げ売り」とも言うべき円安をもたらしているのだ。
安倍政権以来の「異次元金融緩和」は、大インフレを引き起こしてもおかしくないものだった。
低賃金に加え物価高騰
そうならなかった最大の要因は、新自由主義が30年以上も労働者に強いてきた低賃金だ。それが需要を落ち込ませ、資本の海外侵略を伴った低価格競争も激化させてインフレを抑えた。だが戦争で局面は変わった。賃金は上がらずに物価高騰が労働者を襲っている。この事態は、43兆円の大軍拡を強行しながら防衛増税には踏み込めない岸田政権の矛盾も生んだ。岸田が23春闘で「賃上げ」を絶叫したのは、その危機を突破して実際に戦争を遂行できる国家体制をつくるためだ。だが、大企業の正社員に限られた「賃上げ」も、円安によるインフレで完全に吹き飛んだ。実質賃金は3月時点で24カ月連続の減少だ。岸田がうそぶく「30年ぶりの経済の明るい兆し」などどこにもない。だから岸田は戦争にのめり込んでいく。円安は他方で輸出企業に膨大な利益をもたらし、異様な株高の要因にもなっている。労働者を踏みにじって生き延びる資本の本質は、そこにもあからさまに示された。中国侵略戦争に突進する岸田政権を打倒してこそ、労働者階級は生存を守り抜けるのだ。