中国侵略戦争構え軍事同盟拡大 日米・日米豪・日米豪比防衛相会談 共同演習激増、核配備も

週刊『前進』04頁(3344号03面01)(2024/05/13)


中国侵略戦争構え軍事同盟拡大
 日米・日米豪・日米豪比防衛相会談
 共同演習激増、核配備も


 4月日米首脳会談で合意した日米安保の「中国侵略戦争同盟」への大転換、その具体化に向けた日本帝国主義・岸田政権の動きが加速している。防衛相・木原稔は5月3日の米インド太平洋軍司令官の交代式に合わせてハワイを訪問、その前日に日米、日米オーストラリア、日米豪フィリピンの防衛相会談を立て続けに行った。その内容は、日米を中心に多国間の中国包囲網を構築し、軍事演習を激増させ、その全矛盾を沖縄に押しつけながら核戦争の準備まで推し進めようとするものだ。4・28闘争に続き5・15沖縄現地闘争を闘い、米日帝国主義の中国侵略戦争を阻む安保・沖縄闘争の爆発をかちとろう。

「拡大抑止の強化」とは

 木原とオースティン米国防長官との日米防衛相会談では、4月の首脳会談で合意した「日米同盟の抑止力・対処力強化のための戦略的イニシアチブ」の実現に向け「緊密に連携していく」と確認、とりわけ「南西地域における日米の共同プレゼンスを着実に拡大していく」として、沖縄への米軍・自衛隊の軍備増強と軍事演習の激増を図ることをあらためて明言した。さらに、これまで事務レベルで行われてきた「拡大抑止」についての協議を閣僚級の協議に格上げし、次回の日米外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)で取り上げることも確認した。
 日本のメディアはこの拡大抑止について、「核を含む戦力で米国が同盟国を守ること」などと「解説」しているが、あたかも米軍の核戦力が日本を「守る」ものであるかのようなデマ宣伝を繰り返すだけで、それが具体的に何を意味するのかを何ら説明しない。もともとこれは米韓協議で使われてきた概念であり、核ミサイルやそれを搭載できる戦略爆撃機、戦略原子力潜水艦、地上発射装置などの戦略資産を米本国に配備することを「直接抑止」、韓国などの同盟国に配備することを「拡大抑止」と表現してきたのである。
 すでに韓国では、昨年4月の米韓首脳会談を転機として、核兵器搭載可能な米軍戦略爆撃機B52が初めて着陸、同じく戦略原子力潜水艦も42年ぶりに釜山港に寄港するなど、拡大抑止の名のもとに核基地化が推し進められている。日米の「拡大抑止の強化」とは、中距離ミサイルをはじめとした核戦略資産の日本への配備のことであり、中国侵略戦争を核戦争として遂行するために日本をその出撃基地にするということだ。
 加えて木原は、日本経済新聞のインタビューで「日本の防衛力で米国の拡大抑止を強化する」と語り、米軍核戦力と日本の通常戦力を「組み合わせる」との考えを示した。米中が核ミサイルを撃ち合うことを前提に「(日本が)相手のミサイル発射拠点などをたたく反撃能力の運用で協力を深める」(5月3日付日本経済新聞)というのだ。木原は、実際の戦争ではなく、あくまでも「抑止力」という建前で語ってはいるが、現実に核戦争を遂行することも含めて米日が協議を進めていることは明白だ。
 また木原は、今後米軍と自衛隊の間で①防衛力整備、②部隊運用、③防衛装備の技術協力の3本柱で戦略の統合を進めると強調。①防衛力整備には日米指揮統制の一体化を含み、②部隊運用については「米軍の衛星情報で相手の動向を探知し、自衛隊が〔米国製巡航ミサイル〕トマホークなどを使って反撃する運用を想定する」と、「有事」における具体的な戦闘行為にまで踏み込んで言及。③防衛装備の技術協力では「日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議」(DICAS)の新設を強調し、今回の防衛相会談でもその早期開催に合意した。

米比演習で中距離弾配備

 日米防衛相会談に続き、オーストラリアのマールズ国防相を加えて行われた日米豪3カ国防衛相会談では、先端防衛技術分野での共同開発・研究の促進に向けた取り決めに署名、さらにステルス戦闘機F35を用いた3カ国での共同訓練を今後2年間に各国で実施する方針に合意し、2027年にミサイル防衛実射訓練を初めて3カ国共同で実施することも確認した。
 さらに同日、フィリピンのテオドロ国防相も加え、昨年6月以来2度目となる日米豪比4カ国防衛相会談を行い、初の4者共同記者会見も実施、今後4カ国で海上での合同軍事演習を強化していく考えを表明した。会談後には中国を名指しして「航行の自由の行使に対する度重なる妨害」への「深刻な懸念」を盛り込んだ共同文書も採択した。
 重要なことは、この日米豪比の国防相会談と並行して、4月22日から5月10日にかけて米軍とフィリピン軍による大規模軍事演習「バリカタン」が行われたことだ。日本を含む14カ国もオブザーバーとして参加した。同演習は、中国とフィリピンが領有権を争う南沙(スプラトリー)諸島のある排他的経済水域(EEZ)や台湾に近いルソン島北部などを舞台とし、「敵対勢力に占拠された島々の奪還」を想定し、「敵艦」に見立てた船を撃沈させる実弾演習も行われた。加えてルソン島北部では、米ロの中距離核戦力(INF)全廃条約の失効後で初となる、米軍中距離ミサイルの発射装置の配備にも踏み込んだ。米軍はこれを「一時的な措置」と説明しているが、以前から米政府が計画している、日本の南西諸島から台湾、フィリピンに至る「第一列島線」への中距離ミサイル配備構想の端緒であることは明らかだ。
 こうした米軍の一線を越えた踏み込みに対し、中国外務省は「地域の安定が損なわれるだけだ」と強く反発した。さらにロシア外務省も6日、「米国がアジア太平洋地域に中・短距離ミサイルを配備した場合、ロシアも核抑止力を含めあらゆる対応に出る」と表明、プーチンも同日、ロシア軍に戦術核兵器の演習を指示したと発表した。
 米日帝国主義の中国侵略戦争への突進が世界核戦争を急切迫させる中、全世界の反戦闘争と固く連帯した日本における安保・沖縄闘争の爆発にこそ、人類の生存と世界史の帰趨(きすう)がかかっている。中国侵略戦争阻止を掲げて5・15沖縄闘争を闘い抜き、日帝打倒の突破口を開こう!

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