深刻化する日帝経済の絶望的危機 緩和策の矛盾は解決不能 活路求め戦争経済へ転換
週刊『前進』04頁(3342号04面01)(2024/04/29)
深刻化する日帝経済の絶望的危機
緩和策の矛盾は解決不能
活路求め戦争経済へ転換
革共同第9回全国大会第2報告は、「米帝の大没落と中国侵略戦争」論を柱にした革命的時代認識と、革命的共産主義者の党と労働者階級の基本的立場と任務について鮮明に提起した。この立場にたって、本論文では中国侵略戦争参戦へ突き進む以外に出口がない日本帝国主義の絶望的危機性、特にその経済的破綻性について、第2報告で提起した核心点を深める形で論じたい。
⑴日帝の中国侵略戦争参戦に道を開いた日米首脳会談
4月10日の日米首脳会談は、日帝の中国侵略戦争参戦へ向けた画歴史的な戦争会議となった。バイデンが「日米安保同盟発足以来、最も重要なアップグレード」と述べたように、その核心は日米安保同盟の中国侵略戦争同盟への大再編であり「共同作戦遂行のために不可欠な指揮権の完全な一体化」への踏み込みだ。重要なのは、戦後世界体制の最後的崩壊、アメリカ帝国主義の大没落を根源とし、その世界支配をかけた中国侵略戦争に日帝・岸田が主体的に参戦する意思を明確にしたことだ。第2報告が明らかにした通り「米帝の中国侵略戦争において絶対的に不可欠なのが、中国スターリン主義と直接対峙(たいじ)する日帝の動員と参戦である」。米帝にとって、日米同盟を核として日米韓、日米豪印、日米比、日本も一角に加えた米英豪軍事協力枠組み(AUKUS)などの対中国軍事同盟を形成することなしに中国侵略戦争は成り立たない。「日本は要」であり、自衛隊を最前線の戦闘部隊とし、在日米軍・自衛隊基地、沖縄をはじめ全国の民間空港・港湾、公共インフラ、労働者を総動員し、沖縄―日本全土を戦場にたたき込むことを前提にしてしか、この戦争を貫徹できないのだ。
同時にそれは、米帝の世界支配の貫徹のために、徹底してこの帝国主義強盗同盟=日米安保同盟を使いきり、日帝を米帝のもとにとことん動員するものだ。日本全土がどれだけ凄惨(せいさん)な戦場になろうとも、中国本土を血の海にし、支配体制を力ずくで転覆し再支配する侵略戦争をやり抜くということである。
日帝は、米帝以上に危機を深め、経済的にも政治的にも帝国主義としての存立すらままならない状態であるがゆえに「米帝の中国侵略戦争に積極的・主体的に、自分自身の戦争として参戦することに帝国主義としての存続、延命をかけざるをえない」(第2報告)。それがどんなに破産的で絶望的であろうとも、日帝にとって唯一の出口は戦争なのだ。
日帝の中国侵略戦争参戦との闘いは、中国侵略戦争を現実に阻止する決定的闘いであり、日帝の帝国主義としての延命を断ち、打倒し、日本革命―アジア革命―反帝・反スターリン主義世界革命を切り開く歴史的決戦だ。闘う中国―アジア人民と連帯し、日帝の中国侵略戦争への突進を革命的内乱に転化する革命的反戦闘争の巨大な爆発をつくり出そう。
⑵帝国主義としての存立をかけて経済の軍事化を推進
戦後世界体制の最後的崩壊の中、最弱の環・日帝は帝国主義として存立できるか否かの瀬戸際にある。とりわけ経済的危機は絶望的だ。異次元金融緩和に依存
第一に、10年以上にわたる「異次元金融緩和」から抜け出すことのできない経済構造に陥ったことだ。3月19日、日銀はマイナス金利を解除して17年ぶりの利上げ(上げ幅はわずか0・1%程度にすぎない)に踏み切ることを決めた。長期金利を低く抑える長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の枠組みも廃止し、上場投資信託(ETF)の新規の買い入れも終了した。だがそれは「出口戦略」と呼べるような代物ではない。米欧諸国が先行的に利上げに踏み切る中で日米金利差の拡大により円安が進行し、悪性インフレが進む中で打つ手がなくなったにすぎない。しかも円の下落は1㌦=154円台を超えて進み、毎月6兆円もの国債購入も継続する。
何より、量的緩和策で積み上げた矛盾は解決不能だ。2023年度末の普通国債発行残高は1068兆円で、11年度末から300兆円以上拡大する見通しだ。うち約53%を日銀が保有している。政府が国債を大量に発行し、日銀が買い支える構図が固定化されてきた。政府短期証券や借入金なども含めた、いわゆる「国の借金」は1286兆円にも上り、今後もますます増え続ける。財務省の試算では、33年度には利払い費だけで24・8兆円にもなり、長期金利が想定より1%上がった場合さらに8・7兆円も増加するのだ。
そもそも「異次元金融緩和」なるものは、日帝の1990年代以来の長期低迷の上に直撃した2008年大恐慌という根本的行き詰まりの中で、12年末に政権復帰した安倍の「戦後体制の打破」=戦争国家への転換に呼応して、日銀が戦後的なあらゆる制約を取っ払い、政治目的に沿って国債や株式を買いあさる破滅的政策だ。そこに経済政策としての整合性など何一つない。
「アベノミクス」の柱として当時の日銀総裁・黒田が13年4月に打ち出した「量的・質的金融緩和」は、ゼロ金利が常態化する中で、長期国債の大量買い入れによる資金供給量の倍増(量的緩和)を政策目標とし、ETFなどリスク資産の買い入れ(質的緩和)も加え「2年で2%の物価上昇=経済好循環」実現をうたうものだった。長期国債買い入れは「年間80兆円増額」と、新規発行額を丸ごと買い占めるほどの規模になった。1930年代の戦時経済・戦時財政以来の日銀による国債引き受け(マネタイゼーション)に事実上踏み込んだのだ。それでも物価目標を達成できず、2016年2月に異例のマイナス金利を導入した。
「目的達成のためにはあらゆる政策手段を活用する」と叫んで次々と「禁じ手」に踏み込んできたのが日銀であり日帝だ。帝国主義国家としての破綻的姿を満天下にさらし「経済の好循環」などおよそ成り立たない矛盾を抱え込んだのだ。
実態とかけ離れた株高
第二に、日本経済の異常性を示すのが、日経平均株価が史上最高値を更新し一時は4万円を超えた、この間の「バブル期を超える株高」だ。これは資本主義特有の「バブル経済」とも様相を異にし、労働者人民の景気実感とはあまりにもかけ離れている。労働者人民には物価高・低賃金・生活苦が襲いかかる一方で一部のブルジョアジーがぬれ手にあわの利潤をむさぼるという階級社会の本質的姿がむき出しになり、ブルジョア社会の建前すら崩壊している。株高の最大の根拠は長年にわたる異常な金融緩和政策であり、特に帝国主義国家の中でも前例のない日銀(中央銀行)によるETFの買い入れである。買い入れ策自体は終了したが、17〜20年には年間4〜7兆円もの巨額のETFを買い支え、現在も簿価で37兆円分を保有している。株式は債権と違って償還期限もない。絶対に売られることのない大量の株式が株価を支えているのだ。
アベノミクスのもとで、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用方針も大量の株式購入へと変更され、20年3月末段階で日経平均株価を構成するトップ企業225社のうち実に192社(85%)で日銀とGPIFが筆頭株主という異常な状態となった。大資本に直接流し込んだ公的マネーが株価を押し上げるという状況が続いてきたのだ。
その上に、円安の進行が一部の輸出系の大企業の利益を膨らませ、これが見せかけの業績改善となった。そこに海外投資家の投機的資金が流入した。米株式市場も、08年大恐慌後の空前の緩和策を土台に、巨大金融資本や一部のハイテク関連企業が巨額の富を蓄積し、バブル的様相を深めている。「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる7社の時価総額だけで13兆㌦に達している。この投機的資金の一部が日本株にも流れ込み、中国侵略戦争情勢の加速に伴う中国市場からの資金の引き上げと相まって株高を生み出している。どれ一つとっても好景気・高成長とはかけ離れており、極めて不安定だ。直近でも、中東全域への戦争危機の拡大が直撃して1千円超下落した。
しかもその実態をさらに見れば、政府・財界挙げて「経済の好循環」などと騒ぎ立てながら、実際には企業の利潤の確保のために物価高騰を促進し、「雇用の流動化」=非正規職化なども通して全体の賃金を抑えこんでいる。今年2月の実質賃金は1・3%減少で、23カ月連続のマイナスだ。実質賃金の低下による業績向上が株高の根拠になるという構図でもある。上場企業は配当と自社株買いでの株主還元を拡大し、24年3月期の株主還元総額は約25兆円で過去最高となる見通しだ。
非正規職化と低賃金によって青年・女性・高齢労働者を搾取し続けた結果として、バブルと社会の崩壊がまさに一体で進行している。
産業基盤の崩壊が進行
第三に、産業基盤が崩壊し、経済成長の展望など何一つない。「国内総生産(GDP)は世界4位に転落、円の価値は下落、実質賃金は低下し続け、人口減も加速し、財政悪化は止まらず、超低金利も日銀による株保有もやめられず、ハイテクなど『成長産業』での競争からは完全にずり落ちるという状況」(第2報告)だ。GDPは来年インドに抜かれ5位になると予測されている。国際通貨基金(IMF)によると00〜22年の日本の実質成長率は年平均0・7%だ。賃金も30年にわたり横ばいが続き、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中でも最低水準だ。人口減少問題も含めて何の展望もない低成長国家へと落ち込んでいることが円価値の下落要因だ。「成長産業」である半導体もAIなどのハイテク部門も完全に国際競争からずり落ち、1980年代にNECや東芝などが世界の半導体生産の上位を独占していた状況は見る影もない。トヨタをはじめ国内企業8社が出資し国産の最先端半導体開発を目指す「ラピダス」に国家的テコ入れをしているが、技術水準はトップ企業から何周も遅れている。
戦争が「唯一の活路」に
戦後の日帝の存立基盤は製造業の国際的競争力であり、輸出立国としての確立であった。日帝は、あくまで米帝基軸の戦後世界体制を基盤に、その経済力・工業力で急速に帝国主義的再建を遂げていった。国内市場が保護され海外輸出を存分に展開できるという極めて特異な条件のもとで、日帝資本は世界的資本として登場できたのだ。だが、74〜75年恐慌を画期とする米帝の絶対的優位性の崩壊、戦後世界体制の動揺の開始、世界経済の「統一と成長」から「分裂と停滞」への転化のもと、70年代後半から80年代の米帝の対日争闘戦は決定的に激化し、日帝の存立基盤は掘り崩されていった。半導体産業も基本的にたたきつぶされた。日帝資本は生き残りをかけ、貿易摩擦の回避や低賃金労働力を求めての海外への生産拠点移転を推し進めたが、それがますます国内製造業の競争力をそぎ落とし、「国内空洞化」状態にはまり込んだのだ。日本経済の長期低迷の根本には、戦後体制的条件下での「成長」の限界と、そこから脱却できない現実がある。
日帝にとって突破の道は戦争しかない。「いまや日帝ブルジョアジーにとって、日米同盟のもとでの中国侵略戦争への参戦と、そこにいたる過程での大軍拡、軍需産業の巨大化、経済の軍事化は、この現実からの脱出をかけた『唯一の活路』となっているのだ」(第2報告)。岸田は「防衛産業は国防を担うパートナー」(2022年国家防衛戦略)と位置づけて軍需産業の強化を図っている。防衛省は防衛装備発注時の企業側の利益率を8%から最高15%に引き上げ、昨年6月には事業継続が困難になった企業の設備を「国有化」して支える法律も制定した。
次期戦闘機開発や長射程ミサイル生産を担う三菱重工業は23年度上半期の防衛事業の受注高が前年比5倍となり、川崎重工業やNECも大幅に増加。三菱電機は防衛部門で約1千人を増員した。国内唯一の小銃メーカー・豊和工業は生産量を4倍強にするという。岸田は3月に「殺傷兵器の最たるもの」(自民党議員)である次期戦闘機輸出に踏み切った。システムやメンテナンスを含めた丸ごとの輸出であり、社会全体を軍需産業一色に塗り替えるものだ。
「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」で木原稔防衛相が「防衛力強化を通じて防衛産業を育成する」「安全保障と経済成長の好循環を分かりやすく示す」と述べたように、日帝の言う経済成長とは、軍需産業、経済の軍事化以外にない。
日帝にとって中国侵略戦争は、帝国主義としての生き残りをかけた唯一の選択肢である。帝国主義とともに破滅と戦争の道に転落することを拒否し、「連帯し侵略を内乱へ」の旗のもと帝国主義の支配体制を打倒する革命的内乱を切り開くときだ。
⑶安保・沖縄闘争の爆発で 戦争同盟粉砕・岸田打倒を
日帝支配階級、岸田政権の政治支配は末期的状況だ。4月28日投開票の衆院3補選のうち2選挙区で自民党は候補すら出せなかった。岸田の支持率は10%台に転落し、労働者階級の怒りは沸き立っている。支配階級はもはや社会を成り立たせることもできない。民営化・外注化、人員削減を強行してきた結果、社会生活の最低限の基盤である鉄道・交通、医療、学校・教育、地域を破壊しつくし、社会が根幹から崩れ落ちている。どれだけ社会が崩壊しようが、日帝支配階級はすべてを戦争国家のもとへ総動員し、参戦にのめり込んでいく以外にないのである。この破綻しきった日帝の支配、岸田政権が存立しているのは、ただ一点、連合が政府・経団連と一体化して労働者の怒りを抑え込み、日本共産党スターリン主義など日和見主義=社会排外主義勢力が戦争国会と岸田政権を必死に支えているからだ。この全構造をぶち破る荒々しい階級闘争、階級的労働運動の力強い登場が全情勢を塗り替える。11月労働者集会に示された労働者の本来的力、3労組を先頭に反戦ストライキ・デモを闘う階級的労働運動にその展望があふれている。何よりも、学生・青年を先頭にした街頭を揺るがす巨大な反戦デモこそが勝負を決する。国家権力のあらゆる弾圧をぶち破り、内乱的激突情勢をつくり出そう。4・28闘争に続く5〜6月決戦を、中国侵略戦争阻止、岸田打倒の革命的内乱の突破口としよう。
5〜6月決戦の柱は安保・沖縄闘争の本格的爆発だ。
帝国主義強盗同盟としての日米安保同盟は、米帝の世界支配の要であり、戦後一貫して侵略戦争の出撃拠点であるとともに、敗戦帝国主義・日帝にとって戦後の帝国主義的再建と再軍備の唯一の道であった。それは、90年代以降の動揺と再定義、再編・強化の過程を経て、2015年安保戦争法―22年安保3文書で改めて日帝の基本路線として明確化され、いま中国侵略戦争同盟としての姿を完全にむき出しにした。日米安保の戦争同盟としての強化は、その全重圧と矛盾を沖縄に押し付けることでしか成り立たない。沖縄を全面的な最前線基地にすることなしに中国侵略戦争は貫徹できない。
だが、基地と戦争に対する沖縄の怒りと闘いを圧殺することはできない。米軍政との実力の闘い、「米軍基地全面撤去=沖縄奪還、安保粉砕・日帝打倒」のスローガンのもと本土―沖縄を貫いて闘われた70年安保・沖縄闘争、ペテン的「復帰」=5・15体制粉砕の連綿たる闘い、1995年以来の全島的決起、辺野古新基地阻止の不屈の闘い、そして米軍の全面軍事使用と自衛隊大増強に対する新たな闘いと、沖縄闘争はやむことなく燃え広がり、日米安保を根幹から揺さぶっている。安保・沖縄闘争には中国侵略戦争を阻止し、帝国主義の世界支配を覆し、日米帝国主義を打倒する力と展望がある。
米日帝の中国侵略戦争阻止! 日米安保=戦争同盟粉砕! 沖縄の最前線基地化=軍事要塞(ようさい)化阻止、全基地撤去! 参戦阻止、日帝・岸田打倒! 5月冒頭の木原訪米―日米防衛相会談、5月末に都内で開催される日米外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)、5〜6月戦争国会と対決し、5月沖縄闘争から「日米戦争同盟粉砕!岸田打倒!6・9全国闘争」へ総決起しよう。
〔諸岡鉄司〕