安保・沖縄闘争の巨大な爆発を 対中国戦争同盟への大転換図る日米共同声明―岸田演説許すな
週刊『前進』04頁(3341号03面01)(2024/04/22)
安保・沖縄闘争の巨大な爆発を
対中国戦争同盟への大転換図る日米共同声明―岸田演説許すな
(写真 陸上自衛隊宮古島駐屯地への抗議行動に改憲・戦争阻止!大行進や全学連らが参加した【2月18日 宮古島市】)
4・10日米首脳会談は、日本帝国主義とアメリカ帝国主義の同盟関係を、名実共に対中国の侵略戦争同盟に飛躍させる転換点となった。「未来のためのグローバルパートナー」と題した共同声明は、冒頭の第1行で「過去3年間を経て、日米同盟は前例のない高みに到達した」と宣言する。その「高み」とは、中国に対して日米が共同で本格的に侵略戦争を遂行する高みということだ。この日米会談・共同声明を徹底的に暴露・弾劾し、米日帝国主義の中国侵略戦争を阻む安保・沖縄闘争の爆発をかちとらなくてはならない。
中国侵略戦争へ態勢確立
岸田は11日に米議会の上下両院合同会議で行った演説で、「中国からのこれまでにない最大の戦略的挑戦」を非難し、「自由で開かれた国際秩序や平和」と「私たちが共有する価値」を守り続ける「覚悟」なるものを強調し、「今この瞬間も、侵略を抑止し平和を確かなものとする任務を遂行している自衛隊と米軍の兵士たちに感謝を捧げる」「日本はすでに米国と肩を並べて立っている」「米国は独りではない。日本は米国と共にある」と述べた。日本の首相でここまで露骨な、そして軽薄な軍事的発言をした者はいない。また日米共同声明では、「2国間のグローバルパートナーシップの中核は、日米安保条約に基づく……2国間の防衛安保協力である」「日米の抑止力・対処力を強化するため、南西諸島を含む地域における同盟の戦力態勢の最適化が進展している」「この取り組みをさらに推進する」と確認している。加えて「尖閣諸島」(釣魚島)に言及し、「核を含むあらゆる能力を用いた安保条約第5条の下でのコミットメント」が表明されているが、このことは超重大である。台湾に近い「尖閣諸島」周辺で中国軍との衝突が起きれば、米日はこれを即日本有事として対応するということを意味しているからだ。
つまり、米日が一体で中国侵略戦争を推進する態勢がすでに実戦的に確立され、今まさに軍事的に対峙(たいじ)している状態にあると宣言したのである。そこに核心がある。一般的に、平和を守るために「抑止力」をかつてなく高め、同盟関係をグローバル化させたという話ではないのである。米日ともに中国侵略戦争の機構と歯車を全力で回し始め、そこにあらゆるものを動員している。その画期点をなす日米会談と共同声明だった。そこをはっきりさせない評論はゴミくずのようなものでしかないと言わなければならない。
岸田演説も共同声明も、日本はすでにそうした道に実際に踏み出してきたとして、2022年末の国家安全保障戦略の策定、敵基地攻撃能力の保持、軍事費の拡大、防衛産業の強化と武器輸出に関する制約の破棄、経済安全保障や戦略物資の供給網(サプライチェーン)確保、中国に対する経済的・技術的締め付けでの日米協力などを並べ立てた。そして、中国侵略戦争のための米軍と自衛隊の一体的な展開の態勢を戦争の全領域で構築してきたことを踏まえ、それをさらに発展させるために「2国間でそれぞれの指揮統制の枠組みを向上させる」と強調している。実際の戦闘に突入するためには、自衛隊の統合司令部設置と在日米軍の作戦指揮機能の向上、そして両者の統合システムの形成が不可欠なのである。
日米韓3カ国の軍事同盟的結合の強化、米英豪3カ国軍事協力枠組み(AUKUS=オーカス)や日米豪印4カ国(クアッド)での軍事的な協力、最先端技術の軍事化促進という確認もなされた。さらに、11日に行われた日米比の3カ国首脳会談では、南中国海で中国とぶつかっているフィリピンとの軍事協力強化の取り決めがなされた。その軍事的な意味は大きい。南中国海・アユンギン礁付近で昨年10月に起きたフィリピン軍チャーター船と中国海警局艦船との衝突事故を機に、同海域をめぐって中国とフィリピンとの対立が激化する中、米日帝は積極的にフィリピンを引き込み、特に米軍がフィリピンを拠点にして対中国作戦を展開する戦略を具体化しようとしているのだ。フィリピン問題は、沖縄・嘉手納米軍基地の戦略的機能とも密接に関係している。
日帝自身が強行する戦争
これまでとは違い、日本がアメリカと積極的に肩を並べ、自分自身の戦争として中国侵略戦争に突入する——日米同盟・日米安保はついにそういう次元にまで達したと、バイデンと岸田は今回の首脳会談で確認したのだ。帝国主義の同盟関係の核心は軍事問題であり、そこに「国家総力戦」的に防衛産業や経済安保が絡んでくる。経済や国家財政、その他の全領域も戦争と軍事に総動員される。この日米共同声明の「約束」あるいは「宣言」がこのまま実行されていけば、東アジア全体が地獄の戦場になっていく。なぜなら「台湾有事」とは、米日が中国を追い詰め、引きずり出してたたく全面戦争=世界戦争として構想されているからだ。まず台湾人民を犠牲にする形で、最終的には中国スターリン主義を体制崩壊に追い込むまでやまない戦争となる。だからこそ「同盟のグローバル化」が必要なのだ。米帝は中国侵略戦争のそのような「大きさ」にある意味でおののいている。
では日本の政治指導者や自衛隊幹部、そして財界・ブルジョアジーらはどうか? 彼らの超無責任・超軽薄さは驚くほどである。岸田の米議会上下両院合同会議での演説のトーンは、戦前の日帝が「満州国」のでっち上げを開き直った際の、1933年2月国際連盟総会での日本首席全権・松岡洋右の脱退演説を想起させるものだ。「満州国」を不承認とする連盟総会の勧告案に対し、松岡はこれを拒否するという日本政府の閣議決定に基づいて、連盟総会で「極東の紛争の根本原因は中国の無法行為にある」「日本は極東の平和と秩序のために満州国を独立させたのだ」「日本の政策は世界の平和維持に貢献しようとする純粋な希望に基づくものだ」などと侵略者特有の身勝手極まる自己正当化の暴論を展開した。岸田演説はこれと同様の、侵略と戦争の歴史に対する反省のかけらもない軽薄で傲慢(ごうまんな)な帝国主義者の戦争放火演説だった。「二度と戦争をしない」という日本人民の戦後の誓いを、このようにいとも簡単に、最低の支持率しかない政権の「閣議決定」によって踏みにじり、投げ捨てていいのか。その点の無責任さ、軽薄さで岸田は戦前の戦争犯罪人たちとよく似ている。
戦前の中国侵略の原点にも台湾植民地化があり、そこから「韓国併合」「満州事変」を経て全面的な中国侵略戦争へ、さらにアジア・太平洋戦争へと突き進んでいった。「台湾有事は日本有事」と主張する麻生や安倍らにも、そうした日帝の中国侵略戦争を今度は米帝と共にやり直すという発想がある。米帝単独では対応できないスケールの、中国の現体制の転覆まで行き着く大戦争を、日帝の存亡をかけて総力戦でやろうとしているのだ。
岸田は、中国という「権威主義体制」からの挑戦に対して「自由と民主主義を守る」ためなら、どんな犠牲を出しても戦う「覚悟」があるなどと言う。だが冗談ではない。かつての「満蒙は日本の生命線」(松岡)という言葉と「台湾有事は日本有事」(岸田や麻生)という言葉を並べてみてほしい。これはほとんど同じではないか。
沖縄は日本革命の震源地
中国侵略戦争に突入する日帝を今度こそ打倒しなければならない。米帝を引きずってでも戦争に突入すると宣言した日帝を打倒することこそが、労働者人民の生きる道である。何よりも、米欧日の対中国スターリン主義(対中ロ同盟)の戦争は第3次世界大戦である。それは第1次、第2次大戦より恐るべき戦争となる。絶対に阻止しなければならない。米日帝の中国侵略戦争の最前線基地とされようとしているのが沖縄だ。この構図は、明治政府の琉球処分過程がそのまま中国侵略・台湾植民地化につながっていった戦前の歴史と重なる。今日の中国侵略戦争は、沖縄に再び甚大な犠牲を要求している。なぜなら沖縄と台湾は同じ「戦域」の中に入れられる地理的関係にあるからだ。
日帝は「沖縄戦」の再来を前提に中国侵略戦争遂行のための態勢を形成しようとしており、その中で沖縄は矛盾と犠牲の集中点にされようとしている。言い換えれば、日米同盟=日米安保体制の矛盾がまさに沖縄に集中しているのである。沖縄の復帰50年を経て、日本帝国主義はこの基本構図から逃れられないことをさらけだしている。労働者階級人民には、この矛盾の構図を勝利の水路に転化することこそが問われている。それはけっして不可能ではない。1970年安保・沖縄闘争は、その勝利の根拠と可能性を萌芽的であってもはっきりと示した。
70年闘争の「安保粉砕・日帝打倒」の闘いは、「全基地撤去=沖縄奪還、安保粉砕・日帝打倒」へと発展することで真に本格的な爆発をかちとることができた。沖縄の戦後史と沖縄の内乱的戦後闘争史を学ぶことによって、当時の佐藤栄作政権が掲げた「核抜き・本土並み」沖縄返還の本質が日帝のアジア侵略戦争のための政策であることを認識できたのである。これによって70年安保・沖縄闘争は、60年安保闘争を質でも量でも上回る戦闘的内乱的大闘争となったのである。
そして今、闘うアジア・中国人民と連帯し、帝国主義の侵略戦争を内乱に転化し、日帝ブルジョアジーの腐敗しきった支配体制を革命で倒すことが問われている。安保粉砕・日帝打倒、労働者権力の樹立に向かって、今あらためて沖縄の闘いの意味を明確にし、沖縄を反戦闘争、日本階級闘争の革命的震源地とする「戦争を内乱へ」の闘いを切り開かなければならない。
70年決戦を超える闘いで弾圧粉砕を
国家権力は、反戦闘争が燃え広がりつつある現実に対して、戦時下の弾圧を仕掛けてきている。星野文昭さんを獄死させた日帝権力を絶対に許すことはできない。また、完全に無実であることが証明されている大坂正明さんに対して「懲役20年」の実刑判決を言い渡した東京地裁・高橋康明裁判長を徹底弾劾し、控訴審闘争に勝利し、大坂さんの無罪奪還を実現しなければならない。星野さんも、また今も東京拘置所にいる大坂さんも70年安保・沖縄闘争の先頭で立ち上がった日本人民の誇りだ。この弾圧を粉砕し、70年決戦を超える安保・沖縄闘争を実現しよう。昨年のG7広島サミット粉砕闘争や8・6広島闘争が被爆者の怒りと結合し、反戦闘争として大きく爆発したことに恐怖した国家権力は、今年に入って暴力行為等処罰法(暴処法)で5人を逮捕・起訴する攻撃に出た。広島・長崎、福島、沖縄は帝国主義の侵略戦争に対する日本労働者階級人民の闘いの砦(とりで)だからだ。さらに、何よりも日帝は、11月労働者集会・3労組陣形を破壊しようと必死である。階級的労働運動を守り、国際連帯を発展させ、安保・沖縄闘争の巨大な爆発をかちとろう。
内乱切り開く5・15闘争へ
70年闘争を超える反戦闘争・沖縄闘争の階級的発展を実現するために大事なことは、日米同盟論を戦後世界体制論、日帝打倒論との関係ではっきりとらえることだ。米帝は、第2次大戦の事実上唯一の勝利者として、戦後の帝国主義世界体制の絶対的基軸となった。他方で敗戦帝国主義としての日帝は、米帝との日米同盟政策にすがって延命した。沖縄を売り渡し、天皇制を存続させ、米占領軍の力で労働者階級を抑え込み戦後革命を乗り切った。さらに朝鮮戦争を経てサンフランシスコ講和条約と日米安保条約を締結し、日米同盟の力で戦後復興の道に入り、戦後高度成長を実現した。
ベトナム侵略戦争を通してあらわとなった米帝の危機・戦後世界体制の危機に対し、米日帝は安保体制の再編とペテン的沖縄「返還」で対応し、さらに米帝は「米中和解」政策をとって世界支配体制の再編に動いた。また米帝は71年に金・ドル交換停止に追い込まれ、さらに中東危機・石油危機と74〜75年恐慌が世界経済を襲った。だが米帝がこのように危機と没落を深めても、日帝にとっては米帝との同盟関係強化以外に選択肢はなかった。帝国主義世界全体としても、米帝を基軸にした関係を再編的に継続するしかなかった。
70年代末から80年代のカーター・レーガン両政権を通じて、米帝はまだまだ圧倒的な力をテコに対ソ対決=帝国主義間争闘戦政策を展開した。それは新自由主義の展開と一体の世界支配体制の攻撃的な再編過程だった。90年代に入ると、ソ連・東欧スターリン主義圏の崩壊という戦後世界体制の大変動の中で、あらためて「日米同盟とは何か」が問われた。日米安保の再定義に基づく「米軍東アジア10万人体制」がその答えだった。この時に打ち出されたのが、普天間基地の「返還」と称して名護・辺野古に新たな基地を建設する攻撃だった。この過程で、沖縄は中東への米軍派兵の形で「米軍事力の世界的展開の拠点」とされた。
辺野古新基地はその後30年近く経過しても完成せず破綻的な状態となっているが、それでも暴力的に建設工事を続けているのは、沖縄基地が日米同盟の要となっているからだ。沖縄は今、かつてのどの時期よりも軍事要塞(ようさい)化され、侵略戦争の最前線となっている。これが「沖縄返還」の帰結である。
だが、沖縄を最前線の拠点として中国侵略戦争を推進することがもたらす犠牲の集中は、「沖縄の怒り」を爆発的なものにしている。辺野古新基地建設攻撃との対決を軸としながら、米軍・自衛隊による戦争の最前線化、軍事拠点化攻撃との全面的な対決が今、燃え広がっている。中でも、うるま市の陸上自衛隊勝連分屯地のミサイル基地開設強行と一体の陸自演習場建設に対する怒りの爆発が、防衛省を決定的に追い詰めている。宮森小学校ジェット機墜落事件(59年)の記憶も生々しいうるま市石川地区の住民の決起は、防衛省が「白紙撤回」を口にするところまで追い詰めた。だが、攻防は始まったばかりだ。ミサイル基地・陸自演習場、そして陸自第15師団の設置そのものを粉砕しなければならない。
いま一つ決定的なのは、米軍のミサイル駆逐艦「ラファエル・ペラルタ」の石垣港入港に対して、全港湾沖縄が絶対反対を決め、石垣港で港湾労働者50人のストライキが実現されたことだ。これと結合して石垣で自衛隊基地に反対して闘ってきた住民団体は、ラファエル・ペラルタ乗員の上陸に反対する実力の抵抗闘争を闘った。この闘いも、米軍と防衛省の計画に大きな打撃を与え、石垣・宮古・与那国などの「住民強制移住」計画にも影響を及ぼしている。国民保護と称して住民をたたき出し、島々を好き勝手に戦場にすることなどけっして許されないのだ。
政府は日米会談に合わせて、有事に使用する「特定利用空港・港湾」として、石垣港を含む5空港・11港湾を全国で指定したが、予定していた沖縄県内12カ所の港湾を指定することができなかった。九州や全国を含めて多くの自治体が軍事利用に抵抗している。全港湾の闘争は、動労千葉も支援連帯を表明し、全世界に発信された。日本の労働者階級人民は、沖縄を先頭に帝国主義の侵略戦争と闘う力を持っている。沖縄は「連帯し、戦争を内乱へ」の闘いの革命的震源地である。今年の5・15沖縄闘争で、この真理をはっきりと全国・全世界に告げ知らせよう。日米同盟と日帝に対する全面否定に革命の論理をつらぬいて闘い抜こう。
〔仲山良介〕