焦点 自衛隊と靖国神社 隊員の〈戦死〉想定した思想攻撃
週刊『前進』04頁(3340号03面02)(2024/04/15)
焦点
自衛隊と靖国神社
隊員の〈戦死〉想定した思想攻撃
元海将が靖国トップに
4月1日、靖国神社の職員のトップである宮司に、海上自衛隊で自衛艦隊司令部幕僚長などを務めた元海将・大塚海夫が就任した。元自衛官が宮司に就任するのは2人目だが、元将官が就くのは初だ。大塚は2月の靖国神社「社報」への寄稿で、現職自衛官時代に靖国神社の崇敬奉賛会に入会したことを語り、「国防という点で英霊の御心を最も理解できるはずの我々こそが……その思いを受け継ぎ、日本の平和のために尽力すべき」と述べている。靖国神社には氏子総代にあたる崇敬者総代が10人いるが、その中にも現在、元海上幕僚長の古庄幸一、元陸上幕僚長の火箱芳文がいる。火箱も「旧軍の気持ちを理解できるのは自衛隊だ」と述べ、さらに自衛官が戦闘で死亡する事態に備えて「政府として、どう対応するか議論すべきだ。私なら靖国にまつられたい」とあけすけに語っている。(3月31日付朝日新聞)自衛隊による靖国神社への集団参拝も次々と強行されている。1月9日、陸上自衛隊幕僚副長が幹部自衛官らを伴い、22人で靖国神社に集団参拝を行ったことが明らかとなった。さらに2月には海上自衛隊が集団参拝を行っていたこともわかった。昨年5月、海自の幹部候補生学校の卒業生165人が遠洋練習航海に先立ち、練習艦隊の当時の司令官らを先頭に靖国神社に集団参拝していた。
これらの件について、「信教の自由と自衛隊の問題」かのように扱う報道が多いが、そもそも靖国神社の実態は単なる宗教施設ではない。明治維新の過程で天皇の側に立って死んだ者を祭った東京招魂社(1869年建立)を前身とし、天皇を祭主として、第2次大戦での敗戦までは陸海軍省が直接管理していた。戦中には現役の陸軍大将が宮司を務め、合祀(ごうし)者も軍が選定していた。つまり、靖国神社は「天皇とその国家のために命を捧げた者」だけを「英霊」として選別的・差別的に祭り上げる「顕彰施設」なのだ。天皇のため、国家のために戦争で死ぬことを賛美し、それを全人民に強制する目的で日本帝国主義がつくりあげたイデオロギー装置である。
「靖国の思想」復活狙う
大宮駐屯地(埼玉県)の陸自第32普通科連隊が4月5日、公式アカウントで「大東亜戦争最大の激戦地硫黄島……慎んで祖国のために尊い命を捧げた日米双方の英霊のご冥福をお祈りします」とSNSに投稿。「大東亜戦争」という、大日本帝国によるアジア・太平洋戦争を正当化する言葉を用いたことに非難が殺到した。同連隊は旧陸軍の近衛歩兵連隊に連なる系譜を持ち、今も「近衛連隊」を自称、先述の公式アカウントのプロフィールにも明記している。中国侵略戦争への体制構築が進む中で自衛隊幹部が反動的に突出しようとしているのである。その背後には、実際に自衛隊員の〈戦死〉が避けられない中国侵略戦争の切迫がある。「何のために命をかけるのか」をめぐり、日帝支配階級は思想支配の強化に踏み込まざるをえないのである。それは「靖国の思想」以外に動員するイデオロギーを持たない日帝の脆弱(ぜいじゃく)さでもある。
戦争の切迫は自衛隊に激しい動揺と分岐を生んでいる。反戦闘争を爆発させ、帝国主義こそが命をかけて倒すべき全人民の敵だということを、「軍服を着た労働者」である自衛隊兵士に訴えよう。