日米首脳会談を弾劾する 中国侵略戦争同盟へ大転換 今こそ安保・沖縄闘争の爆発を

週刊『前進』04頁(3340号03面01)(2024/04/15)


日米首脳会談を弾劾する
 中国侵略戦争同盟へ大転換
 今こそ安保・沖縄闘争の爆発を

(写真 沿道から声援を受けながら、「日米首脳会談粉砕」の声を街中に響かせた4・9渋谷デモ)

 4月10日の日米首脳会談は、これまでの日米同盟・日米安保のあり方を原理的に転換し、文字通り「中国侵略戦争遂行のための軍事同盟」として再編する歴史的な戦争会談となった。これに先立つ4日には、2000年代以降の米歴代政権の対日政策に最も大きな影響を与えてきた有力シンクタンク・国際戦略問題研究所(CSIS)の新たな報告書「2024年の日米同盟——統合された同盟に向けて」(第6次アーミテージ・ナイレポート)が発表された。今回の日米会談で協議され共同声明に明記された主な内容は、このCSIS報告書を全面的に反映したものだ。いよいよその具体的実像をあらわにしてきた米日帝国主義の中国侵略戦争を阻むために、今こそ巨大な反戦闘争―安保・沖縄闘争の爆発をかちとらなくてはならない。

指揮統制連携強化が核心

 4月8〜14日にかけて訪米した岸田は、10日に米大統領バイデンと首脳会談、共同記者会見を行い、11日には米議会の上下両院合同会議で演説、またフィリピン大統領マルコスを交えた初の日米比3カ国首脳会談を行った。
 日本首相の「国賓待遇」での訪米は1987年の中曽根に始まり岸田が5人目。前回は安倍政権時の2015年4月で、上下両院合同会議での演説も安倍以来9年ぶりとなる。当時の安倍は前年の集団的自衛権行使容認の閣議決定を踏まえ、この訪米で「防衛協力のための指針」(日米安保ガイドライン)の再改定に合意、そしてこの「対米公約」を盾に同年9月、安保戦争法の国会成立を強行した。だが今回の岸田の訪米と日米会談は、中国侵略戦争を日米共同作戦として遂行するための極めて具体的な日米安保の転換を確認したという点で、過去の訪米とは比較にならないほど踏み込んだ中身となった。
 岸田は出発前、首相官邸で記者団に対し「日米関係が一層盤石だと確認し、世界に発信する重要な機会になる」と述べ、日米同盟は「グローバルパートナー」だと強調した。7日に放送された米CNNのインタビューでも、岸田は日米同盟が「歴史的な転換点にある」と主張し、11月米大統領選を前に「選挙結果にかかわらず米国民に日米関係の重要性を認識してもらうことが重要だ」と述べた。会談に合わせて発表する共同声明には、22年12月の安保3文書改定で日本が「反撃能力」(=他国領域への攻撃能力)の保有を決めたことで「日米同盟は前例のない高みに達した」と評価し、日米の「戦略的協力の新時代」を確認することなども、3月段階で読売新聞などにリークされた。
 駐日米大使エマニュエルも4月5日の記者会見で、「一つの時代に終止符を打ち、新たな時代の第一章を迎える会談になる」として、その内容が日米同盟の戦後史を画するものになることを強調、さらに米軍・自衛隊の統合運用の強化は「台湾有事」を含む中国をにらんだ対応だと述べ、対中国を最大のテーマとする会談になることを語った。
 基軸国・米帝の大没落とその世界支配の崩壊、そして米中対立の全面的・非和解的な激化が米日帝の中国侵略戦争―世界戦争へと転化しつつある中で、米日の帝国主義的軍事同盟としての「強固さ」を世界に誇示するとともに、中国侵略戦争―世界戦争を実際に戦う戦争同盟として日米安保の再編を図ることが、今回の岸田訪米と首脳会談の狙いにほかならない。
 具体的には、①米軍・自衛隊の「指揮統制」の連携強化、②在日米軍司令部の機能強化、③防衛装備品の共同生産体制の強化、④米軍大型艦船の日本での補修、⑤米軍による自衛隊施設および民間空港・港湾の利用促進、⑥宇宙開発・ミサイル防衛網構築での協力、⑦半導体、量子、人工知能(AI)、クリーンエネルギーなどの諸分野での連携など、多岐にわたる新たな日米合意が行われた。
 最大の核心は①、②を通じて「日米の指揮統制枠組みの見直し」を進め、米軍の指揮下に自衛隊をも動員した中国侵略戦争遂行のための「統合司令部」機能を構築することにある。現状では、横田基地(東京都)にある在日米軍司令部は基地・部隊の管理を主な任務とし、実際の戦闘での作戦指揮権は(在日米軍ではなく)ハワイに司令部を置くインド太平洋軍が持っているが、今回の会談では在日米軍司令部の機能と権限を強化(②)し、来年3月創設の自衛隊統合司令部との間で「連携強化」に向けた措置をとる(①)ことが確認された。これを受け、5月末の日米外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)で在日米軍司令部への作戦指揮権の一部付与、同司令官の「中将」から「大将」への格上げ、自衛隊統合司令部との調整のための常設合同チームの設置などが協議される見通しとなった。
 このような「指揮統制枠組みの見直し」は日米安保の歴史上初であり、まさに「1960年安保改定以来64年ぶりの日米安保同盟の最大のアップグレード」(英紙フィナンシャル・タイムズ)にほかならない。実際、他国への攻撃任務は基本的に米軍のみが担うとしてきた従来の日米安保には、一元化された「統合司令部」機能は必ずしも必要ではなかったが、すでに「反撃能力」を保有した自衛隊が米軍と共同で他国を攻撃する(米軍と肩を並べて最前線で戦う)新たな日米安保には、指揮統制の一元化は不可欠となる。自衛隊がミサイル攻撃の目標を特定するために、圧倒的な監視・偵察能力を持つ米軍からの情報提供に頼らざるを得ないこと一つをとっても、このことは明白だ。

全面的な日米一体化狙う

 岸田は国会答弁で「自衛隊と米軍の指揮系統は独立している」「日米一体の軍事介入は行わない」などと繰り返しているが、実際には「有事」における作戦統制権を在韓米軍司令官が握る米韓同盟のように、米軍・自衛隊の一体化と在日米軍司令部への指揮系統の一元化を限りなく進めることが狙われている。CSIS日本部長のジョンストン(元米国家安全保障会議東アジア部長)は、「司令部を部分的にでも共同配置すれば、日米同盟は『今夜でも戦う』(ファイト・トゥナイト)という(韓米連合司令部の)モットーにより近づくだろう」とあけすけに語った。また、岸田訪米に合わせてNHKのインタビューに応じたサリバン米大統領補佐官(安全保障担当)も、「われわれは、日本におけるアメリカの作戦指揮の機能を高めるとともに日本との間で作戦指揮の機能の統合を確実に進めていく」と述べた。
 こうした指揮統制の一体化に加えて、日米の「統合抑止」を合言葉にした数々の重要な合意が行われた。③兵器の共同開発・生産についての合意も重大だ。キャンベル米国務副長官は3日、シンクタンク・新アメリカ安全保障センター(CNAS)主催の対談で、先端兵器の日米共同開発・生産による「統合兵器庫」の必要性が高まっていると語り、この点に関して日米関係は「根本的に新しい段階に入る」と述べた。日米会談では「防衛産業政策調整会議」と称する新たな協議体が立ち上げられたほか、航空自衛隊の戦闘機パイロット用の練習機「T4」の後継機の共同開発を確認。自衛隊と米軍で訓練段階から共通の機体を使うことで連携強化を図るという。
 これと一体で、④米海軍第7艦隊所属の原子力空母「ロナルド・レーガン」やミサイル駆逐艦などの大型艦船を日本で補修することが合意された。これまでは、米軍艦船の日本での補修は戦闘能力のない補給艦や輸送艦に限り、大型艦船の補修には米本土まで戻る必要があったが、今後は海上自衛隊などが利用する日本企業の造船所で補修できるようにする。これが重大なのは、「日本で補修できるようになれば、米軍大型艦船の日本周辺での稼働率が高まる。自衛隊と在日米軍の共同訓練の機会も増やせる」(4月2日付日本経済新聞)からだ。中国近海での米軍大型艦船の展開と軍事演習の激増へ道を開くものであり、これ自体が極めて重大な中国に対する軍事重圧であり戦争挑発だ。
 さらに、⑤自衛隊の基地や訓練場などの施設を米軍が共同使用する際の手続きを簡略化し、相互運用能力を高めることで合意。これまでは、米軍が自衛隊施設を利用する際には原則、日米地位協定に基づく日米合同委員会での合意と閣議決定が必要だったが、今回の合意を踏まえて5月の2プラス2で手続き簡略化の具体策を協議する見通しとなった。米軍による緊急時の民間空港・港湾利用の「柔軟化」も狙われている。
 ⑥宇宙協力という領域では、弾道ミサイルと同じ技術を用いる米国製ロケットの打ち上げを日本で行えるよう新たに協定を結ぶことが模索され、すでに大分空港をそのための「宇宙港」とする案が浮上している。極超音速滑空兵器を探知・追尾するための衛星網整備での協力も確認された。
 ⑦半導体やAI、量子技術など軍事転用可能な先端分野で新たに研究開発などの連携強化も確認した。これに先立つ8日には3カ国の軍事協力枠組み(AUKUS=オーカス)を構成する米英豪の国防相が共同声明を発表し、AI、サイバー、電子戦といった軍事に直結する先端技術分野で「日本との協力を検討している」と明記した。米バイデン政権の強い後押しを受けたものだという。だが、先端技術共有は「機密情報を漏らさない体制づくり」が前提となる。岸田が重要経済安保情報保護・活用法案(9日衆院通過)の成立を急ぐのは、他国との軍事同盟の強化・拡大や先端兵器の共同開発の促進のために、機密保護法制の制定が不可欠となるからだ。

安保粉砕・日帝打倒を!

 日米会談に先立ち、元国務副長官アーミテージ(共和党)と元国防次官補ナイ(民主党)を筆頭とする超党派のグループでまとめたCSISの報告書が出されたのは、今次日米会談にかけるアメリカ帝国主義としての狙いを明らかにし、11月大統領選の結果にかかわらずその路線を貫徹させるためだ。報告書は、日米共同声明と同様に「統合」をキーワードとし、対中国を念頭に「より統合された日米同盟」を強く要求するものとなっている。
 その冒頭では、今日のアメリカと日本は「第2次大戦後、最も崩れた国際環境に直面している」と述べ、米帝基軸の戦後世界体制の崩壊を彼らなりの言葉で認めた上で、今日の「不確実な安全保障環境」の原因として「ハマスのイスラエルに対する残忍な攻撃(その数百倍・数千倍も残忍なイスラエルのガザ大虐殺には一言も触れず!)」「イランとその代理勢力による中東紛争」「ロシアのウクライナ侵攻」「中国の修正主義的目的の追求」「北朝鮮の核能力」などを並べ立て、これに対して「日米同盟はかつてなく重要」と強調する。そして、日米安保はこの10年で「大幅に強化された」が、「同盟の基本構造の多くは、米国が戦略的パートナーとしては、日本にほとんど期待していなかった時代に根ざしたままである。かつては軍事調整の正式なメカニズムがなくても同盟は効果を発揮できたが、今日ではそれはできない」として、「指揮系統の近代化、情報協力の深化、防衛産業と技術協力の積極的な推進」、さらにそのための「日本のセキュリティ・クリアランス(安保機密情報を扱う適性評価)システムの強化・拡張」を要求。そして「同盟の指揮統制の再構築」と題して、米インド太平洋軍のもとに権限を強化した新たな在日米軍司令部の設立、日米の緊密な作戦調整のための常設の統合二国間計画調整事務所の設立などを提言した。今回の日米会談で合意された内容は完全にこの報告書の要求と合致している。
 CSISは昨年1月の報告書で中国との戦争をシミュレートし、この戦争では「日本こそが要である」と強力に訴えた。そして「重大な死傷者に直面しても作戦を継続する必要性を認識せよ」として、沖縄をはじめ日本全土でどれほどおびただしい数の死傷者が出ようと戦争を完遂することを要求した。まさに今、米帝は「唯一の競争相手」とみなす最大の敵=中国を粉砕するために、日帝を総動員した中国侵略戦争を全力で準備し、日帝・岸田もまた米帝と一体化して中国侵略戦争に突き進むことに帝国主義としての活路を見いだそうとしているのだ。
 だが、これは同時に、日米安保の大転換と日帝の全面参戦なくしては、米帝の中国侵略戦争が成り立たないということをも意味している。そして今や中国侵略戦争の恐るべき全体像が日に日に明らかとなる中で、その最前線の戦場にされようとしている沖縄では住民の怒りと新たな闘いがますます拡大している。日本における反戦闘争の爆発は、米日帝の延命をかけた中国侵略戦争を阻止し、世界戦争を世界革命へ転化する決定的な位置にある。4・28沖縄デー闘争の爆発をかちとり、本土・沖縄を貫く「中国侵略戦争阻止・米軍基地撤去!」「安保粉砕・日帝打倒」の大闘争を今こそつくりだそう!
このエントリーをはてなブックマークに追加