反戦の怒りで戦争国会包囲を 国家総動員の反動法案許すな

週刊『前進』04頁(3338号03面01)(2024/04/01)


反戦の怒りで戦争国会包囲を
 国家総動員の反動法案許すな


 3月28日、参議院予算委員会と本会議で新年度予算案の採決が強行された。今通常国会では、8兆円の大軍拡予算案に加え、地方自治法改悪案、経済安保情報保護法案、食料安保関連法案の成立が狙われている。いずれも、中国侵略戦争に向けて「国益」を前面に押し出し、国家総動員体制を構築するための反動法案だ。この戦争国会を粉砕する力は労働者人民の戦争絶対反対の実力闘争にある。4・2国会闘争に決起し、戦争に突き進む岸田政権を打倒しよう。

緊急事態条項の先取りだ
 地方自治法改悪案

 中国侵略戦争に突進する岸田政権の地方自治法(地自法)改悪は、改憲=緊急事態条項の導入を先取りし「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」の「発生のおそれ」だけで国家の強権発動を可能とする歴史的大攻撃だ。反戦・反基地闘争を爆発させ、総力で阻止しよう。

閣議決定だけで国家が強権発動

 岸田が狙う地自法改悪は戦争を阻む「歯止め」としてあった地方自治権を解体し、閣議決定だけで強権発動を可能とする戦時独裁法の制定というべき攻撃だ。
 これまで地方の空港・港湾・道路・鉄道、土地・河川・海岸、宅地、学校・病院などのインフラの管理・運営権は地元の自治体が持ってきた。そのことごとくを国が戦争のために自由に使えるように変えようとしている。
 沖縄闘争は中国侵略戦争を阻む最前線の闘いとして続けられている。辺野古新基地建設の埋め立て計画変更は沖縄県と国との裁判闘争となって争われてきた。昨年末の政府と裁判所が結託した代執行強行は怒りの火に油を注ぎ、実力阻止の機運は南西諸島全体で激しく燃え上がっている。
 すでに政府は全国32カ所の空港・港湾を軍事利用のための特定重要拠点に指定し、自治体との協議に入っている。しかし、出撃拠点化を阻止する闘いが沖縄をはじめ京都・舞鶴港、広島・呉、大阪港、香川・高松港など全国の空港・港湾をめぐって繰り広げられている。自治体当局による自衛隊への名簿提供反対の闘いが全国に拡大している。広がる地方の反乱に追い詰められた岸田は、地方自治を最後的に解体して戦争に突進しようとしているのだ。

戦争動員への道情報提出を強制

 地方自治の解体は戦時下の国家総動員体制づくりと一体だ。地自法改悪案は国が「地方公共団体に対し、資料及び意見の提出」を求める指示・命令権を条文化した。資料とは住民の職業・資格・資産、法人の業種・業績などを含むあらゆる情報だ。地域は限定されない。全国の自治体が持つ情報を国に差し出すことが強制される。
 改悪案の土台を作った第33次地方制度調査会(地制調)の総会で、自治労出身の岸真紀子参院議員や自治体首長は「国と地方の連携」を求めた。法案はそうした意見をも利用して自治体の「資料及び意見の提出」を条文化し、全国知事会は「要請に一定の配慮がなされた」と表明した。しかし沖縄の例を見れば、それが国の戦争政策に反するならば真逆のものとして使われることは明らかだ。
 法案は国による自治体職員の「応援の要求及び指示等」の項で「適任と認める職員の派遣をしなければならない」とする。戦時下での有無を言わせぬ戦争動員だ。「二度と赤紙を配らない」(戦争動員の先兵とならない)と誓った自治体労働者・労働組合の渾身(こんしん)の決起が求められている。

「発生のおそれ」で発動が可能に

 地制調答申の作成過程では「非平時」として「自然災害」「感染症」と並んで「武力攻撃」が公然と議論された。そして法案は「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」の「発生するおそれ」の段階で国定による指示・命令を発動できると明記した。しかし、突然起こる自然災害や感染症をめぐっては事前の「発生のおそれ」など感知しえない。参戦のための国を挙げた戦争準備が想定されているのは明らかだ。発動はあくまで緊急時の「特例」だという。「特例」と称して憲法を停止する緊急事態条項が明文化されようとしているのだ。
 さらに、地自法改悪案は自治体の公金収納の「地方税共同機構」による共同化と、デジタル化による「情報システムの適正な利用」を義務とした。地方自治の制約ゆえになかなか進まない住民情報の標準化・共同化(政府クラウド化)の強制であり、国税・地方税を網羅する戦費調達システム構築の第一歩だ。
 また、地縁団体が地域社会の維持・形成を担う「指定地域共同活動団体制度」の創設を明記した。総動員体制を支えた「隣組」制度の復活を想起させるものだ。断じて軽視できない。
 中国侵略戦争突入情勢下で、石垣港への米ミサイル駆逐艦の寄港に反対した全港湾沖縄地方本部のストライキは、戦時下の労働組合が取り組むべき実力の闘いだ。戦争絶対反対のデモとストを闘う労働組合の再生をかちとろう。地自法改悪を阻止しよう。
   ◇    ◇   
●4・2国会闘争
 4月2日(火)午後6時30分 衆議院第2議員会館前
●4・13新宿デモ
 4月13日(土)午後4時 新宿駅東口アルタ前集合
 主催 労組交流センター自治体部会/改憲・戦争阻止!大行進東京

民間人を調査・監視・弾圧
 経済安保情報保護法案

 岸田政権が地方自治法改悪と一体で今国会成立を狙う「重要経済安保情報保護・活用法案」は、中国侵略戦争のために官民一体で兵器などの秘密研究・開発・生産体制を強化し、反戦闘争を弾圧し、産業と人民を戦争に総動員していくための重大な攻撃だ。絶対に許してはならない。
 同法案は3月19日から衆議院で審議入りした。2014年に施行された特定秘密保護法(スパイ防止法)と一体であり、特定秘密保護法が秘密保護の対象を「防衛、外交、スパイ防止、テロ防止」の4分野に限定しているのに対して新法案はこれを経済の領域に拡大するものだ。
 政府が指定した「重要経済安保情報」を漏らした者、またそれを違法に取得した者は5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金に処せられる。機密性が特に高い情報の漏洩(ろうえい)には特定秘密保護法を適用する。漏洩または取得行為を「共謀・教唆・扇動」した者も処罰する。ジャーナリストや市民が、国家が隠したい秘密情報を入手し社会的に暴露・報道することを、「国家の安全保障」の名目で徹底的に弾圧しようとしているのだ。
 経済分野のどういう情報が「重要経済安保情報」に当たるかの基準は全くあいまいだ。政府は「手の内を明かすことはできない」としており、いくらでも拡大解釈が可能だ。特定秘密保護法とは比べものにならないほど広範囲に国家機密の網がかぶせられ、規制・統制が強められる。
 もう一つの重大問題は、「適性評価(セキュリティークリアランス)」=身辺調査だ。国が個人の身辺調査を行って、資格を得た者だけが機密情報を取得し利用できるようにする。
 犯罪・懲戒歴や薬物の使用、飲酒の節度や精神疾患、経済状況、家族や同居人の国籍などを詳しく調べる。交友関係なども当然調べられる。先行するアメリカでは、国家への忠誠心や性行動など、個人の思想・信条やプライバシーに踏み込んだ身辺調査が行われている。日本でも同様の調査が行われることは必至だ。
 「適性評価」は特定秘密保護法のもとですでに実施されているが、22年末までに評価を得た13万人の大半が公務員だ。これに対し経済分野に対象を拡大する今回の法案では、公務員のほかに民間企業や大学・研究機関の研究者・技術者・実務担当者など、広範囲の民間人が対象になる。身辺調査は「本人の同意が前提」とされているが、なんの歯止めにもならない。営業のために国の保有する情報を必要とする企業は、関係する社員に資格の取得を強制するだろう。
 何よりもこれは、日本帝国主義がアメリカ帝国主義をはじめとする同盟国と共に中国侵略戦争に突入することを念頭に、セキュリティー基準を米帝とそろえるためのものだ。反戦闘争を弾圧し、戦争への総動員体制づくりを狙う同法案を断固粉砕しよう。

首相命令で穀物生産強制
 食料安保関連法案

 「食料安全保障」を声高に叫んで国会に提出された「食料・農業・農村基本法」改悪案と、「食料供給困難事態対策法」(食料有事法=新法)案は、自衛隊増強、軍事費膨張、沖縄―南西諸島のミサイル基地化と一体で、農業・食料分野での戦時体制づくり、農民・農業関係者・労働者などの戦争動員を狙うものだ。
 基本法改悪の最大のポイントは、法律の目的を「食料の安定供給の確保」から「食料安全保障の確保」へと書き換えることだ。その理由・背景を政府は、「近年における世界の食料需給の変動、地球温暖化の進行、我が国における人口減少その他の食料、農業および農村をめぐる諸情勢の変化に対応し、食料安全保障の確保を図る」などと説明し、食料自給率の低下に危機感を表す。「戦争」という文字こそ使っていないが、これが戦時への対応であることは一目瞭然だ。
 そして具体的には、「食料供給困難事態」の兆候が現れた段階で内閣総理大臣を本部長とする「本部」を設置し、米・小麦・大豆などの主要穀物、あるいは肥料・飼料・種子・農薬などについて、輸入・生産・販売業者などに「出荷・販売の調整、輸入・生産の拡大」などを要請・指示できるようにするという。それが食料有事法だ。さらに「国民が最低限度必要とする食料が不足するおそれ」が生じた時は、「生産転換」「配給」の措置を講ずるとまで言っている。
 つまり有事・戦時となれば、食料調達のために首相を長とする「本部」が巨大な権限を振るって、「食料増産」を要求する。農家には「今まで通りの作付けをしている場合じゃない。穀物をつくれ、転作しろ」と命令するというのだ。それに反した者は20万円以下の罰金という罰則規定まで設けられている。
 農家・農業関係者には怒りが広がっている。1965年には73%だった日本の食料自給率が、現在の38%まで下がるにまかせていたのは誰か。ほかでもない歴代自民党政権の農業切り捨ての結果だ。もうけを出す農業、輸出できる農作物ばかりが重要視され、「農業では食べていけない」という中小の農家の苦境は放置され、農家戸数は激減してきた。遺伝子組み換えや残留農薬の基準を下げて、海外からの農作物輸入を野放図に促進してきた。国の農林予算の割合は、2000年度の4%から23年度は2%に半減した。その一方で軍事費は2倍化だ。その政府が今になって農家に「有事に穀物をつくれ」だと!
 全国農民会議共同代表の小川浩さんは「最初は補助金とか甘い汁を吸わせるかもしれないけど、戦争のための食料を農家に強制的に作らせるとは戦争動員そのもの。戦前のように『満蒙開拓』で中国侵略戦争の先兵として農民が動員された歴史を繰り返してはならない」と訴えている。
 労農連帯を強固に固め、基本法改悪と食料有事法を粉砕しなければならない。

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戦争のための地方自治法改悪案
①閣議決定だけで命令可能に
〇自治体が管理権限を持つ地方空港・港湾・道路・鉄道、土地・河川・海岸、公園・建物・学校・病院などの施設の軍事利用・接収命令が出せるようになる
〇自治体が持つ全住民・企業情報の提出、職員派遣(動員)の指示・命令も可能に
②「発生のおそれ」で発動可能に
〇「突然の大災害・感染症のまん延」を予測することはできない。戦争を想定
〇「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態における特例」→「特例」が恒常化
③公金収納・住民情報の共同化、「隣組」を想起させる団体の創設

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