ライドシェア解禁阻止を 労働者不足を逆手にとり雇用と権利奪う戦時政策

週刊『前進』04頁(3335号02面04)(2024/03/11)


ライドシェア解禁阻止を
 労働者不足を逆手にとり雇用と権利奪う戦時政策


 内閣府の規制改革推進会議が昨年12月26日に中間答申を発表し、「ライドシェア全面解禁」がいよいよ現実のものになろうとしています。タクシー労働者にとって史上最大の重大情勢です。核心は「雇用の破壊」であり、「タクシー労働者」という職業をなくそうとする攻撃です。

根本問題無視し規制緩和進める

 「ライドシェア」とは、一般の人が空いている時間と自家用車を使って、スマホアプリでマッチングした乗客に移動の足を提供し、報酬を得るというビジネスモデルです。普通免許を持つ人なら誰でもスマホで登録するだけでタクシーのようにお客さんを運ぶ仕事が可能になります。
 ライドシェアはアメリカから全世界に広がり、日本では2015年から導入に向けた動きが始まりました。コロナ禍の後、運転手の退職が相次ぎ「タクシーがつかまらない」という現象が社会問題化したのを逆手にとって、規制改革推進会議は昨年10月から一気に議論を進めました。労働者不足を招いた根本問題には一切手を付けず、さらなる規制緩和によって問題を「解決」しようというのです。
 今年4月から、タクシー会社が運営する「日本型ライドシェア」が解禁となります。運転手はタクシー会社とパートなどの雇用契約を結び、事故やトラブルには会社が責任を負います。
 そして6月には全面解禁に向けた「ライドシェア新法」の骨子が規制改革推進会議で取りまとめられ、法が成立すればすぐにでも実施される運びとなっています。全面解禁されれば、ライドシェア事業への参入は基準をクリアすれば基本的に自由です。運転手は業務委託(個人事業主)や兼業・副業とし、「雇用によらない働き方」が想定されています。特に主要な働き方として想定されているのは、ウーバーイーツやすき間バイトなどにみられる「デジタルプラットフォームを介した就労」です。
 問題は、このようなプラットフォーム型就労者は労働法上の「労働者」であるのか、労働者としての権利を行使できるのかという点にあります。しかし、議論は全く行われず、むしろ「労務仲介事業者による業務委託なので当然労働者ではない」という論調です。そうなれば、最低賃金も労働時間管理も適用されず、医療保険や年金も自己責任となります。そうした「就労者」が、約25万人いるタクシー産業の労働者の中に生まれ、現状破壊的に広がり、急速に置き換わっていくことになります。

戦争に向け国家の大改造を狙う

 約10年間進まなかった議論が一気に「ライドシェア全面解禁」へと動き出した背景には、中国侵略戦争に向けた国家大改造の動きがあります。
 22年12月に安保3文書が改定され、敵基地攻撃能力などの整備が盛り込まれました。それに先立つ11月22日、「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」が「あらゆる能力を国力としての防衛力という観点で総合的・一体的に利活用すべき」と報告しました。労働力=労働者も「国力」として、国防のために総合的に利活用できるようにすべきだと言っているのです。岸田政権は人口減少・労働者不足の中で、それを「雇用によらない働き方」、つまり業務委託や兼業・副業によって行おうとしています。その一つのモデルが「プラットフォーム型就労」です。これは戦時の労働者政策、労働者の戦争動員の一つなのです。
 ライドシェア解禁を通じてプラットフォーム型就労を押し広げ、労働者をさらにバラバラに分断することで無権利状態にし、国家が自由に労働者を利活用する。労働者は生きるためにダブルジョブ、トリプルジョブで働き、労働者としての誇りも奪われ、戦争への協力も求められるということです。
 政府はライドシェアを突破口に、教育や福祉、介護など全産業にこのような働き方を広げようとしています。今こそ、タクシー労働者が誇りにかけて全労働者の先頭で闘いましょう。3月20日の集会にぜひお集まりください。
(自交総連SKさくら交通労働組合執行委員長・河野晃興)

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ライドシェア反対! 学習・討論集会
 3月20日(水・休) 午後1時30分 京橋プラザ区民館1号室(東京都中央区銀座1―25―3)
 主催 3・20集会実行委員会

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