医療を戦争の道具にするな! 反戦デモと春闘ストの先頭に立つ 革共同医療福祉労働者委員会
週刊『前進』04頁(3334号03面03)(2024/03/04)
医療を戦争の道具にするな!
反戦デモと春闘ストの先頭に立つ
革共同医療福祉労働者委員会
中国侵略戦争に突入する中で、日本帝国主義・岸田政権は国家・社会を根本からつくり変える攻撃を進めている。その切っ先に位置づけられているのが医療福祉の戦時型再編=破壊攻撃だ。「いのちを守る」医療・介護・福祉労働者こそが反戦闘争の先頭に立つという11・19日比谷での決意を今こそ実践する時だ。
進む自衛隊の実戦部隊化
自衛隊は現在、完全に実戦部隊として訓練を行っている。昨年11月の統合演習では戦死した隊員の遺体を入れる納体袋を大量に運び込み、仮埋葬や臨時の遺体安置所設置を想定した訓練を沖縄県内で行った。また、防衛省は今年度から自衛隊員に輸血するための血液製剤の製造・備蓄に乗り出している。「有事に備えて十分な量を確保する狙い」「負傷した隊員の治療体制を整えることで、継戦能力の強化につなげたい考え」(2023年3月9日付読売新聞)だ。自衛隊員25万人からあらかじめ採血し、自衛隊中央病院で血液製剤化して南西諸島などに送り10年間冷凍保存するとしている。22年末に改定された「防衛力整備計画」に明記された方針に基づき、日本赤十字社からの搬送が間に合わない大量の要輸血者が出た場合(戦争そのものだ)を想定して体制を整えようというのだ。
一線を越えて激しく進む自衛隊の実戦部隊化、臨戦態勢化のもとで中国侵略戦争が本格的に始まったならば、医療行為への動員が一般の医師や看護師にも拡大していくことは火を見るよりも明らかだ。
戦時型転換狙う報酬改定
「今日のウクライナは明日の東アジア」と繰り返し、ウクライナ戦争参戦と一体で中国侵略戦争への本格的準備を進める岸田政権は、6年に1度の24年度「医療・介護・障害福祉」各報酬のトリプル改定を医療福祉の全面的戦時型転換攻撃として位置づけている。2月14日に厚生労働省が決定した改定内容は、その正体を示している。皆保険制度解体がマイナ強制の狙い
第一に、マイナ保険証義務化を医療現場から強制しようとしている。岸田政権は昨年12月、現行の健康保険証を今年12月2日に廃止し「マイナ保険証」に一本化すると閣議決定した。しかし、昨年12月時点で全体のマイナ保険証利用率はわずか4・29%にすぎない。完全に破産しているにもかかわらず「事実上の義務化」を進めるのは、医療福祉現場にマイナンバー制度=総背番号制度を強制するためだ。
今回の診療報酬改定では「診察時にマイナ保険証で読み取る医療情報を活用できる医療機関」が初診時に80円を加算できるようにした。患者に対しても、3割負担の場合マイナ保険証で受診なら3円、紙の保険証なら9円と支払額に露骨な格差を付け、マイナ保険証での受診を誘導している。そして今年10月からはマイナ保険証の一定の利用実績を、25年10月からは電子カルテでの情報共有を加算の条件とする。さらに厚労省は医療現場にマイナ保険証促進計画の提出を求めるなどの圧力をかけている。絶対に許してはならない。
マイナンバーカードは、経団連が04年に打ち出した「社会保障個人会計制度」の導入によって、戦後革命期にかちとった皆保険制度を最後的に破壊することを狙っている。まさに所得で「いのち」を選別する戦時医療への転換にほかならない。マイナ保険証にひも付けされ蓄積される個々人の健康状態や専門資格などのデータは間違いなく徴兵・徴用のための情報として使われる。文字通り「戦争のためのマイナカード」だ。
だが、95%もの労働者人民がマイナ保険証を意識的に拒否し、岸田政権の狙いは頓挫しかかっている。医療福祉労働者が現場から立ち上がれば、保険証廃止=マイナカード強制は絶対に粉砕できる。
合理化と強労働を強制する医療DX
第二に、医療DX(デジタル化)推進に重点を置き、現場にさらなる合理化と強労働を強制する。医療DX体制を整備した場合に加算する仕組みは「業務効率化」と称する労働強化、強搾取のためのものだ。今次診療報酬改定は、4月1日に開始される「医師の働き方改革」と完全に一体だ。「勤務医の残業時間に上限を設ける」と称して時間外労働「原則年960時間」規制が適用されるが、これすら月に直すと80時間という過労死ラインの強労働に法でお墨付きを与えるものだ。さらに許し難いことに厚労省は、「宿日直許可」申請を奨励することで年1860時間という文字通りの殺人的労働を「合法化」しようとしている。これに対し医療現場や過労死家族から怒りの声と闘いが巻き起こっている。
日帝は「いのちを守る」医療福祉労働者を「いのちを奪う」戦争に動員するという根本矛盾を突破するために、意識的に殺人的強労働とそれを通した労働組合の団結破壊の攻撃をかけている。医療福祉労働者から誇りと団結を奪い、医療・福祉のすべてを暴力的に一変させ、戦時体制に駆り立てていこうとしているのだ。
戦時医療の発想で地域医療奪う攻撃
第三に、診療報酬改定では地域医療を奪う「地域包括ケアシステム」推進を強く打ち出す。「医療と介護、医療と障害福祉サービスの連携」と言うが、これは医療・介護施設を統合・廃止して患者や利用者を放り出す棄民攻撃だ。高齢化率が35%を超えるとされる2040年を見据えて、厚労省は①地域医療構想の実現、②医療従事者の働き方改革、③医師偏在対策を三位一体で推進するとしている。すでに激しく進められている地域医療構想は、JRの廃線化攻撃と同様に、現に人が住み生活している場所から医療・福祉を奪っていく攻撃だ。
「限りある医療資源」「限りある医療費」を理由に医療を奪っても仕方ないとするのはトリアージの考え方、戦時医療の発想だ。医療福祉労働者が戦争反対、戦時医療への転換反対、戦争協力拒否で団結して立ち上がり、地域住民の不安や怒りを束ねて闘う時だ。
医療福祉現場から反乱を
医療・介護・福祉現場を人員不足と低賃金、強労働が覆っている。日本病院会の調査では75%の病院が「看護職員不足」を訴えており、不足人数が10人を超える病院は7・6%に上る。この「崩壊」ともいうべき実態は、日帝の職場支配の貫徹と階級闘争の根絶、戦時医療への転換のために人為的につくり出されたものだ。岸田政権は、政治・経済・思想・生活など全般にわたって戦時体制を打ち立て、すべてを「国力としての防衛力」の名で一体的に利用しようとしている。その要に、いのちを守る医療・介護・福祉の労働運動の解体と社会保障制度の解体があるのだ。だからこそ、医療・介護・福祉労働者が反戦デモの先頭に立ち、ストライキを復権させる時だ。昨年結成された「戦争反対!マイナ保険証廃止!医療介護福祉労働者全国連絡会」は、今春闘を前に「職場支配権を資本家から奪い返す実力闘争を組織し、『戦争をとめ、いのちを守る』決意を社会に示そう」と誓い合った。すべての仲間に「医療・介護・福祉労働者こそ戦争絶対反対の先頭に立とう」「今こそストで闘うべき時だ」と真正面から訴えて討論を巻き起こし、闘う組合を登場させよう。この力で、戦争と地域崩壊に怒る労働者住民を束ね、「侵略を内乱へ」転化しよう。