十亀弘史の革命コラム -14- ロシア内戦のルポに学ぶ
十亀弘史の革命コラム -14-
ロシア内戦のルポに学ぶ
ラリサ・ライスナーの『ヨーロッパ革命の前線から』(平凡社)の第1部「前線」は、10月革命後、1918年から20年のロシアの内戦の現場を、生き生きとつづった戦闘的なルポルタージュです。戦闘的というのは、ライスナー自身が政治委員として赤軍の兵士と共に、最前線の戦闘を体験しながら、そのルポを書き上げているからです。彼女は、革命の容赦ない厳しさについて「まえがき」に次のように書いています。「革命は残酷にも、革命的な専門家たちを片はしから使い減らして行く」
実際、それぞれに強烈かつ魅力的な個性をもった革命家たちが、白軍との戦闘の中で次々と命を奪われていきます。「攻撃の成りゆきがどうなるにせよ、第一線の兵士たちは、最初から死を運命づけられているのだ」。描かれているのは主要に、カスピ海へと注ぐヴォルガ川での水上の戦いです。「白軍艦艇は合わせて七隻。対するこちらは四隻。私たちは機関を停止し、砲撃を開始する。最初の一斉射撃が敵の艦尾のすぐ間近に水煙を立ちのぼらせ」る。
戦闘はどの戦場でも激烈を極めます。味方の側にも、おびえやひるみ、胸を締めつける疑念や動揺が生じたりします。しかし、革命は、あらゆる「壁を途方もなく苦労して突き破って自分の戦闘能力にふさわしい活動の場を発見して行ける人物」「真の意味での人間」を無数に生み出していきます。彼らの勇気と確信、自己犠牲心、果断さ、団結心は尽きることがありません。さらに戦闘の合間には明るさと笑いに満ちるときさえあるのです。
最も胸を打たれたのは次の箇所です。スヴィヤジスクという決定的な激戦地についての記述です。「私ははっきり覚えているが、このスヴィヤジスクには『強制されて』戦ったような兵士は、ただのひとりもいなかった。そこで生活し防衛に参加したすべてのひとは、自発的な規律という強い絆で結ばれていた。かれらは、最初はまったく絶望的と思われた戦闘に、自由な意志をもって参加したのである」。これこそ、最も厳しい状況における、具体的な〈労働者階級の自己解放〉そのものだと思います。そしてそれは、ボルシェビキの労働者階級への揺るぎない信頼こそが生み出させたにちがいありません。ロシアにおける、蜂起・内乱・権力奪取・内戦の過程、あるいはその個々の現場にも、学ぶべき教訓が無尽蔵にあると改めて深く感じさせられました。
(そがめ・ひろふみ)2024.2.12