大坂同志無罪・奪還へ大救援運動を 中 現場写真が無実証明 大坂同志は現場にいなかった
週刊『前進』04頁(3331号04面01)(2024/02/12)
大坂同志無罪・奪還へ大救援運動を 中
現場写真が無実証明
大坂同志は現場にいなかった
(写真 1971年11月14日午後3時19分、神山交番前で道路いっぱいに広がって機動隊の阻止線に突撃するデモ隊。大坂同志は写っていない【報道記者が撮影し、星野再審弁護団に提供された写真の1枚】)
前回明らかにした通り、東京地裁(高橋康明裁判長)が無実の大坂正明同志に対して出した懲役20年の極反動判決は、憲法も裁判制度も無視したむき出しの国家暴力の発動にほかならない。35回におよぶ公判で明らかにされた真実をことごとく無視し、捜査段階でねつ造されたでっち上げ供述調書のみで有罪にするなどというのは、裁判所が裁判そのものを自ら否定するに等しい暴挙だ。誰が見てもその不当性は明白である。前回に続き、この「白を黒」と言いくるめる判決を徹底的に批判する。
決定的なことは、証拠とされた25枚の写真に、大坂同志を写したものが一枚もないということである。
この写真には、①公安警察官の中村が神山派出所前の建物の中から隠し撮りした23枚(中村写真)と、②報道記者が撮影し、星野再審弁護団に提供された2枚(UT写真)がある。事件当日、小田急線代々木八幡駅を降りたデモ隊約150人は、大向通りを渋谷駅に向かう途中、神山派出所前の新潟県警機動隊27人の阻止線の前でいったん止まり、これを突破すべく再び走りだした。中村写真は機動隊の阻止線に突撃するデモ隊の先頭部分からデモ隊の最後尾まで全部撮影されている。UT写真は阻止線を張る機動隊の側から撮影したもので、道路いっぱいに広がって突撃する直前のデモ隊の最前列の数十人が正面から撮影されている。
判決は、AR供述に基づき「(阻止線に向かって大坂は)真っ先に飛び出し、逃げ遅れた機動隊員に駆け寄り殴打した」などと認定するが、中村写真にもUT写真にも大坂同志は写っていない。AOとOTは、中村写真に撮影されているデモ隊の先頭を走る男性について「これが大坂だ」と特定し、別の学生Cも中村写真の中の別の男性をさして「大坂だ」と言うが、三者三様でそれぞれ別人を特定しており、そのどれもが大坂同志ではない。また警察権力は事件の翌11月15日から多くの公安警察官を投入し、中村写真から何日間も「面割り作業」に没頭したが、大坂同志は特定されなかった。これらの事実から明らかなことは、大坂同志は神山派出所前にはいなかったということだ。
ところが判決は、大坂同志の無実を完全に証明するこれらの写真を無視し、「なぜ被告人がどの写真にも写っていないのか」について一言も言及せず、「大坂が最先頭で走った」などと強弁しているのである。
矛盾に満ちた4人の供述内容
さらに判決は、「供述調書」の矛盾をご都合主義的に解釈し、勝手な決めつけを連発する。供述内容に矛盾があるのは検察官にうその供述を強要されたからにほかならない。ところが判決は、「供述が捜査官の誘導ではなく自発的に行われたことを示す」などと転倒した評価をする。また「機動隊員を殴打したのは何人か」「大坂はどこにいたのか」について、供述を強要された者たちは互いにその内容が異なり、ほとんど一致がない。ところが、判決はこれについて「現場の混乱や、ショッキングな出来事を目撃したために記憶が欠落した」と得手勝手な理屈を振り回し、「供述は核心において一致」「(供述の矛盾が)相互に信用性を高めている」などと強弁するのである。加えて重大なことは、判決は検事側立証の柱であったARを軸に据えることができなかったということである。弁護団の反対尋問(一昨年11月25日、第6回公判)でAR証言の破綻が突きつけられたからだ。
ARは星野文昭同志の裁判では、「殴打現場で見た大坂は後ろ姿で分かった」と言っていた。これが今回、「顔を見た」に変わった。その理由を追及されると、ARは「供述をはしょった」とか「殴打現場を通り過ぎて戻ってきたから顔が見えた」などとごまかした。だが、供述調書に添付された自らが描いた詳細な略図がUT写真と一致しないという事実を突きつけられ、完全に破産した。略図と同じ位置にARもAOも写っている。だが大坂同志だけが略図と異なりどこにも写っていないのだ。
さらにARは「大坂は白い服を着ていた」と星野裁判から一貫して証言しており、大坂裁判でもこれを維持した。その白い服の人物がUT写真の中にいる。AR略図に「大坂」と書かれた位置にいる。しかし反戦のヘルメットをかぶり、服装も体格も大坂同志と一致しない別人だ。
結局、大坂同志を目撃したという4人のうち、AR証言が崩壊し、AO、ITの2人が「大坂さんを見ていない」と証言した。ところが裁判所は、崩壊した検事側立証を救済するためAOの捜査段階の「供述調書」を軸に据え直し、刑事訴訟の判決文として破綻しきったデタラメな有罪判決を出したのである。