戦時下の米大統領選挙 虐殺支えるバイデンを直撃する労働者の怒り

週刊『前進』04頁(3330号03面03)(2024/02/05)


戦時下の米大統領選挙
 虐殺支えるバイデンを直撃する労働者の怒り

(写真 オークランド港を封鎖しパレスチナ連帯デモ【1月13日】)

 11月のアメリカ大統領選に向けた予備選が開始された。バイデンの支持率低下と「トランプ圧勝」情勢の根底にあるのは、米帝国主義の大没落と中国侵略戦争―世界戦争への突入だ。パレスチナ人民の10・7蜂起に応え、既成指導部の制動を突破して歴史的な反戦決起を開始した米労働者階級の闘いが鍵を握る。二大政党制をのりこえ帝国主義を打倒する力はここにある。

米帝の大没落で支配階級も分裂

 第2次世界大戦後、世界体制の基軸国となってきた米帝は世界全体に軍事同盟と軍事基地網を張り巡らせ、戦争に次ぐ戦争を続けてきた。民主・共和両党は戦後の世界支配において密接に協力し、米帝の軍事戦略はすべて共同で立てられてきた。バイデンも、上院議員時代から共和党とのパイプの太さを力にしてきたのだ。特に対中対決・対中核戦略を一切の焦点にすることでは、オバマ・トランプ・バイデン政権を通して両党は一致している。
 だが、昨年の議会では軍事援助予算を巡って両党の対立が長引き、ウクライナ援助額でついに合意できなかった。現実に「3正面作戦」に直面したとき米帝は股裂き状態になり、利権争いも絡んで支配階級内での対立が深刻化している。
 1月26日には、南アフリカ政府がイスラエルをジェノサイドの罪で国際司法裁判所(ICJ)に提訴したことを巡り、ICJが原告側の訴えをほぼ全面的に認める判決を下した。イスラエルに、ジェノサイド条約第2条が定める殺害、傷害などを防止するために、可能なあらゆる措置を講じることなどを求めるものだ。
 ICJは主に世界の保守的な法律家によって構成される機関だ。現裁判長は悪名高い米クリントン元国務長官の最高法律顧問だった人物だが、世界のパレスチナ連帯・ジェノサイド反対の闘いの爆発に押されて、ジェノサイドの証拠を無視することができなかった。
 そして、同判決を無視してジェノサイドを続ける米帝=イスラエルへの憤怒は全世界で沸騰している。米帝の世界支配は経済的・軍事的にも、イデオロギー的にも大崩壊している。

10・7蜂起うけ反戦闘争が爆発

 バイデンの支持率は低下の一途をたどり、1月の世論調査ではトランプ40%、バイデン34%と6ポイントも差がついた。しかも六つの接戦州(アリゾナ・フロリダ・ジョージア・ミシガン・ノースカロライナ・ペンシルベニア)すべてでトランプよりも低い。製造業の集積地であるミシガン、ペンシルベニア州の労働者が既成労組官僚の主導する民主党選挙運動に応じなくなっている。4年間のトランプ政権の経験で、労働者はもとより中間層でもトランプ支持者は減っている。だが、それ以上にバイデン支持が激減したのだ。
 何よりも、10・7蜂起の衝撃は米労働者人民に巨大な衝撃を与え、従来の力関係を一変させる闘いを生み出した。
 イスラエルは米帝が世界支配の要である中東に打ち込んだクサビであり、イスラエルを守ることは米帝にとって死活的だ。だからこそ既成勢力はイスラエル、シオニストと密接に協力し、労働総同盟・産業別組合会議(AFL―CIO)はシオニスト組織そのものであるイスラエルのヒスタドルート(労働総同盟)と密接な関係を持ってきたのだ。そのため、パレスチナ連帯とイスラエルに対する批判は、国家権力だけでなく既成労働運動やさまざまな「左派」からもすさまじい重圧を受けてきた。
 だが、10・7蜂起への感動とイスラエルへの怒りは一挙に大きな闘いを生み出した。国際港湾倉庫労組(ILWU)組合員をはじめとした武器輸送船阻止闘争や兵器工場前でのピケットなどの実力行動が次々と闘われ、街頭のデモは週ごとに拡大。1月13日、ワシントンには40万人が結集した。バイデンは「ジェノサイド・ジョー」と呼ばれ憎しみの的になった。
 こうした中で階級的力関係は劇変し、4年前に民主党選対の中心的スタッフだった人々500人以上が連名でバイデンを批判する書簡を出すに至っている。当時、ファシスト的に登場したトランプに対して民主党を支持することで対抗しようとした人たちが、労働者人民自身の力でトランプと闘う道に転換したのだ。

既成労組指導部のりこえる決起

 昨年、米基幹産業中の基幹である自動車大手ビッグ3で全米自動車労組(UAW)の組合員が体制内指導部の制動と対決してストを闘った。また、西海岸・東海岸諸州を中心に多くのUAW組合員がパレスチナ連帯反戦デモに決起した。イスラエル向け弾薬を製造しているジェネラル・ダイナミクス・ランドシステムズ社で働く組合員への製造拒否、業態転換闘争への決起の呼びかけも東部地区の活動家らによって行われた。
 だが、ガザ大虐殺の最中にUAWのフェイン委員長はバイデンを「労働組合の味方」として1月の政治大会に招待し支持を表明。会場ではバイデンの演説に対して東部地区の組合員3人が立ち上がり、パレスチナ旗を掲げて「停戦! 停戦!」と叫んだ。多数の本部派代議員らは直ちに「U・A・W」の連呼で叫びをかき消し、会場の外へ排除して警察に売り渡した。ランク&ファイル(現場労働者)の闘う潮流が反戦闘争を軸に階級意識を研ぎ澄まし、既成指導部を打倒する勢力へと成長しているからこそ、組合本部は決起を心底恐れ、あらかじめ圧殺の準備をしていたのだ。
 米労働者階級の大部隊が二大政党制の制動から抜け出し、帝国主義を打倒する力として登場してきている。ともに世界戦争を世界革命へと転化しよう。
(村上和幸)
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