写真に言及できず論告は大破綻 大坂同志の無罪奪還を(上) 中田賀統 元法政大学第一経済学部自治会委員長

週刊『前進』04頁(3323号03面01)(2023/12/11)


写真に言及できず論告は大破綻
 大坂同志の無罪奪還を(上)
 中田賀統 元法政大学第一経済学部自治会委員長


 大坂裁判の最終弁論と最終意見陳述が行われる10月26日朝、前進社本社に警視庁による家宅捜索があり、私の傍聴希望はかなわなかった。こんな日にガサ(家宅捜索)とは、大坂正明同志の無実を明らかにする最終弁論を前に身をすくませる権力の心情を自己暴露するものだった。
 本紙3318号に大坂同志の最終意見陳述全文が掲載された。「検察・警察のでっち上げは明白/供述調書に信用性は全くない」。感動的な意見陳述で一分のすきもない。
 唯一の「証拠」とされた供述調書は権力のでっち上げである。それは検事・中津川彰らの反階級的犯罪であり、絶対に許されない。検察官の論告求刑には2点の、回避され、不問に付された争点がある。①大坂同志の無実を証明する現場写真の存在と、②証人らの供述調書が違法に取られたことである。検事論告が回避したこの2点を徹底的に暴露し、検事・中津川らのでっち上げを粉砕しよう。

現場の写真こそ無実の証拠だ!

 弁護団が、無実を証明する物証はあるのだ、それが現場写真だと明示に突きつけ、検察側のでっち上げを厳しく追及したにもかかわらず、論告において検察は、写真の存在について一言も言及できなかった。論告を前にして、検察内部でこの写真問題について言及するか、どのように言及するか、言及しないかをめぐって、長時間の延々とした対策会議が行われたことは容易に想像がつく。そのあげくの結論が言及しないということであったのだ。写真問題に言及した途端に、検察のでっち上げた虚構がすべて崩壊してしまうことをそこで彼らは確認したのである。だからこの言及しないという結論は、決して小さな事柄ではなく、検察の完全な敗北宣言なのである。
 膨大な現場写真があった。私服(刑事)ら権力自身が大量に撮っている。さらに報道陣、近所の民間人。権力はデモ隊の先頭から最後尾までことごとくを撮っている。これらの写真のどこにも、大坂同志は写っていないのである。
 星野再審への証拠資料として朝日新聞社のカメラマンだった人から提供された2枚の現場写真が、大坂同志の無実を証明する決定的な物証(証拠)となった。機動隊の阻止線に向かって突撃を開始した白ヘル部隊には、現場証言をしているAR、AO証人などは写っているが、大坂同志は写っていない。だから、大坂同志がそこで「飛び出してきた」などと言うAR供述が権力のストーリーに沿った偽証であったことが写真という動かない証拠をもって暴かれたのだ。

違法な取り調べを居直る中津川

 唯一の「証拠」たる供述調書は、検事・中津川らによる暴力的な違法な取り調べで作ったものであり、任意性、信用性がなく、証拠たりえないものである。
 弁護団の最終弁論では検事・中津川の違法な取り調べを次のように厳しく断罪している。「ARは、本件殺人罪で再逮捕される1、2日前に警視庁の取調室で、中津川検事と取り調べにあたる刑事らの立ち会いの下で父親から殴られるという異常な経験をした。父親はARに向かって『立ち上がって眼鏡を取れ』と申し向け、拳で顔面を3、4回にわたって殴った。中津川検事ほかその場に居合わせた捜査官らは誰もそれを止めようとせず、父親に殴らせ続けた」
 弁護団は、このようにしてなされた「取り調べは信用性の情況的保障を破壊されたものであり、その供述調書は証拠とすべきではない」と断罪した。
 中津川は、「更生させることが私の使命だ」と証言し、公判廷においても真実や事実などどうでもよい、父親に殴らせたことも問題ない、非難されることなどないという態度をとった。でっち上げで良しと開き直っているのだ。石川一雄さんや袴田巌さんら、戦後の数々の冤罪を生みだした違法な取り調べを恬(てん)として恥じないやつなのだ。裁判官はこんな違法・不当な取り調べを認めるのか。こんなやつのでっち上げで大坂同志を奪われては断じてならない。

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