自衛隊が大規模統合演習 民間施設・公道使用を大幅拡大

週刊『前進』04頁(3320号03面03)(2023/11/20)


自衛隊が大規模統合演習
 民間施設・公道使用を大幅拡大

(写真 中城湾港を利用して車両を搬出する自衛隊に対し、改憲・戦争阻止!大行進の市民らがゲート前で阻止闘争【11月10日 沖縄市】)

(写真 背嚢を背負い、本格的な迷彩服姿でパレードに参加する自衛隊【11月5日 石垣市】)


 パレスチナ自治区ガザへのイスラエル軍による大虐殺が続く中、11月10~20日に陸海空3自衛隊の統合演習が全国で一斉に行われた。自衛隊約3万800人、車両3500両、艦艇20隻、航空機210機を動員し、米軍約1万200人も参加する最大規模の実動訓練となった。自衛隊の統合演習は1979年から始まり、2006年から3自衛隊が統合運用体制に移行した後は指揮所演習と実動演習を1年ごとに交代で行ってきた。
 今回の特色は、昨年制定された安保3文書に沿い、空港・港湾などの民間施設の使用が大々的に強行されたことだ。さらに原発の防護訓練も行われた。
 吉田圭秀統合幕僚長は11月2日の記者会見で「航空自衛隊の基地が使えなくなった時の代替手段を平素から訓練しておく意義は極めて大きい」と、その狙いを明け透けに述べている。また琉球新報は10月29日、「戦死した自衛隊員の遺体取り扱い訓練」が今回の演習に含まれると報道。このことを2日の記者会見で追及されると、吉田は「大きな演習ですべての訓練を公表しているわけではない」と明言を避けつつ、報道を否定しなかった。戦闘による負傷を想定して血液製剤の備蓄を防衛省が進めていることとも合わせ、沖縄を血みどろの戦場にたたきこむことをリアルに想定していることは明らかだ。
 鹿児島県の徳之島空港、奄美空港ではF15戦闘機が着陸直後に再離陸する「タッチ・アンド・ゴー」の訓練が行われ、岡山空港と大分空港ではF2戦闘機が着陸後に給油し、再び飛び立つ訓練が行われた。岡山、大分両空港の自衛隊による訓練での使用は初めてのことである。
 徳之島ではまた、陸上自衛隊オスプレイの着陸訓練に加え、輸送艦や護衛艦、水陸両用車などを用いた上陸訓練が行われた。「日本版海兵隊」といわれ、米海兵隊の対中国作戦「遠征前進基地作戦」(EABO)と連携する陸自水陸機動団をはじめ約600人が参加し、自衛隊機と米軍機からのパラシュート降下訓練なども実施。陸自の電子戦部隊が徳之島と奄美大島、佐多射撃場(鹿児島県南大隅町)にそれぞれ展開して電波状況を確認することも行われた。
 民間港湾については、北海道から沖縄まで10カ所の民間の港や船舶も部隊や装備品の海上輸送のために動員され、沖縄県では沖縄市の中城湾港が利用された。10日朝には中城湾港に接岸した自衛隊艦船から陸自の部隊などを乗せた約50台の車両が県内の自衛隊施設へ展開。港のゲート前に座り込むなどして訓練に抗議した市民らをしり目に、陸自那覇駐屯地、勝連分屯地、海自沖縄基地などへ公道を使って移動した。
 さらに、那覇空港に空輸された陸自の16式機動戦闘車(MCV)が公道を走行して那覇駐屯地へ移動。MCVが沖縄本島で自衛隊施設外に出るのは初めてだ。

国家総動員体制の構築と闘おう

 玉城デニー沖縄県知事は10日、今回の統合演習の必要性について「県として認めている」との見解を示した。激化する中国侵略戦争へ向けた攻撃と対決できない「オール沖縄」勢力の限界もこの中で示されたのである。
 民間の港湾・空港を自衛隊・米軍が使用することが相次ぐ中で、日常のあらゆる場面を軍事に近づけることも狙われている。
 11月5日、「石垣島まつり2023」の市民大パレードに沖縄県内では初めて、陸自石垣駐屯地の隊員が背嚢(はいのう)を背負って迷彩服姿で参加、行進した。11月3日には長崎県佐世保市で自衛隊の市中パレードが行われ、水陸機動団の隊員が最新式の小銃を携帯してアーケード街を行進した。佐世保市での自衛隊の市中パレードは02年から始まったが、小銃を携行するのは初となる。
 教育や自治体の現場でも戦争動員への地ならしが激しく進んでいる。改憲・戦争阻止!大行進の拡大と一体で、戦争絶対反対を貫く階級的労働運動をよみがえらせ、中国侵略戦争―世界核戦争を阻む反戦闘争の爆発をかちとろう!

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