ローカル線全廃狙うJR 戦時体制構築へ最先頭で突進

週刊『前進』04頁(3317号02面04)(2023/10/30)


ローカル線全廃狙うJR
 戦時体制構築へ最先頭で突進

在来線の約6割が廃線協議の対象に

 岸田政権による戦時体制づくりの攻撃の一環に、ローカル線の廃止がある。
 10月1日、改悪された地域公共交通活性化再生法が施行された。この改悪で、JRが国土交通大臣に要請すれば、「再構築協議会」と呼ばれるローカル線廃止に向けた協議の場に、自治体は強制的に引き込まれることになった。協議を拒否するという形での自治体の抵抗手段を、国家が力づくで奪ったのだ。
 これを受けてJR西日本は芸備線の備中神代(こうじろ)―備後庄原間の廃止に向け、10月3日、再構築協議会の設置を国交相に要請した。JR東日本も久留里線の久留里―上総亀山間の廃止を手始めに、全面的な廃線に踏み出す構えだ。
 さらにJR北海道は根室線、JR東日本は津軽線と米坂(よねさか)線、JR西日本は美祢(みね)線、JR九州は肥薩(ひさつ)線の災害復旧を意図的に怠り、廃線に持ち込もうとたくらんでる。
 国交省も地域公共交通活性化再生法の運用に関する基本方針を改定した。そこには、廃線協議の対象は「輸送密度(鉄道営業距離1㌔当たりの1日の平均乗客数)4千人未満の区間」と明記された。これはJRの在来線の総延長の57%にあたる。昨年7月に出された国交省の「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」の提言は、廃線協議の対象を輸送密度1千人未満の区間としていたが、対象は一気に拡大されたのだ。
 これと共に岸田政権は9月3日、「地域の公共交通リ・デザイン実現会議」を発足させた。同会議は「デジタル田園都市国家構想実現会議」の下部機関とされ、JR東日本会長の冨田哲郎と日本郵政(JP)社長の増田寛也がメンバーになった。民営化によって生まれた極悪資本のJRとJPが一体となり、さらなる地域破壊に乗り出してきたのだ。増田は「このままでは896の自治体が消滅する」と叫び、第1次安倍政権と福田政権の総務相として大規模な市町村合併の総仕上げを担った人物だ。

教育・医療・産業のすべてを戦時統制

 鉄道を廃止してバスに転換しても、そのバスも直ちに撤退に追い込まれるのが地方の現実だ。そこで「リ・デザイン実現会議」は、ライドシェアや自動運転で交通を維持すると言う。だが、資本が雇用責任も取らずに労働者を搾取し、安全も破壊するライドシェアが、過疎地で成り立つはずがない。
 さらに同会議は、スクールバスや企業の通勤バス、病院や介護施設に患者・利用者を送迎する自動車さえも、一般の利用に開放するべきだと言う。それを実現するため、自治体にはその地域の人の動き・交通流動を詳細に把握することを求める。これはもはや、交通の確保を口実に、教育や医療、産業の一切を戦時統制下に置くということだ。
 一方、「デジタル田園都市国家構想」は、オンライン診療やオンライン教育による病院や学校の徹底した縮減を唱えてきた。「コンパクトシティ化」の名で、過疎地では公共投資を行わず、事実上、そこから人々を追い出す政策を掲げてきた。これは戦争に役立たないものはすべて切り捨てる攻撃に必ずなる。その強力な手段が鉄道の廃止だ。
 他方で国は、赤字でも軍事輸送に必要な路線は残さなければならない。そのため国鉄分割・民営化に代わる新たな枠組みづくりも模索している。自衛隊は中国侵略戦争に際して武器や部隊を鉄道で輸送する計画を立て、すでに何度もの演習でJR貨物に車両や弾薬を運ばせている。JR資本も軍需に延命の道を求め始めた。
 第2次世界大戦時、不要不急と決めつけられた線路は廃止され、レールは引きはがされて武器・弾薬の材料にされた。久留里線にもその歴史がある。廃線への地域の深い怒りは、戦争への怒りと重なる。新自由主義で破壊された地域から、総反乱が巻き起こりつつある。これをも力に11・19労働者集会への大結集を実現しよう。労働者と住民の闘いで戦争を阻止しよう。
このエントリーをはてなブックマークに追加