焦点 大川原化工機事件 戦時下での特高復活を許すな
週刊『前進』04頁(3313号03面02)(2023/10/02)
焦点
大川原化工機事件
戦時下での特高復活を許すな
2020年3月、警視庁公安部は、〝生物兵器の製造に転用可能な噴霧乾燥機を中国へ不正に輸出した〟として、横浜市の化学機械メーカー「大川原化工機株式会社」(以下、大川原社)の社長ら3人を「外国為替及び外国貿易法違反」容疑で逮捕・起訴。5、6月には韓国への違法輸出容疑で再逮捕・追起訴した。大川原社が、一定の要件を満たす噴霧乾燥機を輸出する際に求められる経済産業省の許可を得ていないというのが理由だった。大川原社は起訴後、無実を証明するために72回の実験を行って当該の乾燥機が規制対象外であることを実証。東京地検は初公判直前の21年7月30日に起訴を取り消した。異例の事態だ。
警視庁公安部が捏造
その後、社長らは賠償を求めて国と東京都を提訴。証人尋問やNHKによる警察関係者への取材を通して、公安部長や警視総監が動き、経産省もグルになった国家ぐるみのでっち上げであることが暴かれた。捜査を担当した現職の警部補は証人尋問で「(事件は)捏造(ねつぞう)」と証言。警視庁公安部が、研究者から聞き取り作成した報告書は警察に都合のいいよう改変された作文だった。警察側が行った実験でも都合のいい数値のみを採用していた。何から何まで、すべてがでたらめだ。起訴は取り消されたが警視庁は捜査を正当化し、起訴した検察官も「起訴の判断に間違いはないと思っているので謝罪はしない」と語る。反省は一切せず、今後も同じことを繰り返すという宣言だ。
「経済安保」の本質露わ
この事件は単なる捜査員の「出世欲」から生じたものではない。捜査が開始されたのは安倍政権下の16年だ。以降、急ピッチで進められてきた戦争国家化、そのもとで政府中枢と警察権力が一体化し、中国と取引する日本企業への監視と規制を強めるための「見せしめ」としてこの弾圧が仕組まれたのだ。岸田政権は「経済安全保障」を前面に出してこの動きを加速させてきた。22年5月には経済安保推進法が成立し、民間技術者らによる情報漏えいに罰則が設けられた。こうして社会の隅々まで国家が監視・統制し、弾圧する戦時体制がつくられてきたのだ。大川原社の3人は1年近くにわたって東京拘置所に勾留された。逮捕までの間に社長を含む会社関係者に対する延べ300回近い長時間の取り調べ、襲撃的な家宅捜索が行われ、保釈請求は却下され続けた。その間に元顧問の相嶋静夫氏は体調を崩し、20年9月には拘置所内で輸血処置を受けるまでに病状が深刻化していた。しかし検察は、同氏が検査で胃がんと診断された後でも「罪証隠滅のおそれ」を理由に保釈に反対し続けた。ようやく病院に入院できた時には手術もできない状態で、21年2月に死去した。これは国家権力による殺人だ。戦時下で〝国賊〟〝スパイ〟〝非国民〟は殺しても構わないという特高警察が現代によみがえろうとしているのだ。
こうした連中が星野文昭同志を獄中で虐殺し、大坂正明同志、須賀武敏同志を今も拘束し続けている。関西生コン弾圧をはじめ労組破壊のためのでっち上げ弾圧を繰り返している。そして同時に「国民の生命と財産を守る」などと言って軍拡を進めているのだ。断じて許してはならない。「新たな戦前」に広範な怒りと危機感が広がっている。戦時下の弾圧を粉砕し、反戦闘争の爆発で日帝を打倒しよう。