5年で43兆円の大軍拡許すな 戦時財政へ歯止め外した岸田 大増税と大インフレの破局へ
週刊『前進』04頁(3312号02面03)(2023/09/25)
5年で43兆円の大軍拡許すな
戦時財政へ歯止め外した岸田
大増税と大インフレの破局へ
日本帝国主義はウクライナ戦争に実質的に参戦し、アメリカ帝国主義とともに中国侵略戦争に突進している。戦時体制への転換を狙う岸田政権の攻撃は、5年で43兆円の大軍拡計画のもと、財政面でも一線を越えた。それは大増税と大インフレをもたらし、社会を破滅にたたき込む。
際限のない軍事費膨張
昨年末の安保3文書の改定で岸田政権は、2022年度当初予算で5兆1788億円だった防衛費を27年度には国内総生産(GDP)比2%に当たる8兆9千億円に増額し、23年度から27年度まで5年間の防衛費の総額を43兆円にすると決定した。まさに軍事費の2倍化だ。政府はそのために必要な財源を、①歳出削減、②決算余剰金の活用、③防衛力強化資金、④増税、⑤建設国債の発行で新たに捻出するという。このうち③の防衛力強化資金には、23年度予算で3兆3806億円が充てられた。6兆7880億円の防衛省予算と合わせて防衛費は10兆円を超えた。防衛力強化資金には外国為替特別会計の余剰金や財政投融資特別会計からの移管分、国有財産の売却収入に加え、国立病院機構などからコロナ対策の積立金を返納させて得た資金が繰り入れられた。
防衛力強化資金は会計年度に縛られずに防衛財源を確保しプールするために作られた。今後どれだけ軍事費が膨らんでも、それに応じて財源をひねり出す仕組みだ。かつて日帝は、日清戦争時の1894年6月〜96年3月、日露戦争時の1903年10月〜07年3月、第1次世界大戦とシベリア出兵時の14年8月〜25年4月、日中戦争とアジア太平洋戦争時の37年9月〜46年2月、一般会計とは別に年度を超えた臨時軍事費特別会計を設けて軍事費を支出した。それと同じプロセスが始まったのだ。
2024年度予算の防衛省の概算要求は7兆7050億円で、23年度予算を9170億円上回った。中身も、スタンド・オフ・ミサイルの量産や高速滑空弾の開発、イージス・システム搭載艦の建造など、敵基地攻撃能力の確保に踏み込むものだ。
自衛隊の武器や装備は、その年度の予算を超えて購入契約が結ばれる。翌年度以降の予算にツケを回す後年度負担だ。23年度に新たに発生する後年度負担は7兆6049億円で22年度の2・6倍にもなった。
核武装に向けて原発新増設を狙うグリーントランスフォーメーション(GX)対策費も大軍拡と一体だ。
現実に戦争が始まれば、軍事費は際限なく膨張する。日帝の敗戦直前の1944年度の軍事費などの財政支出は国民総生産(GNP)を上回った。現実にはこんなことはありえないが、ひとたび始まればどこまでも破滅へと暴走するのが戦争だ。
所得税も消費税も増額
政府は防衛費調達のため24〜27年度の間に3兆6千億円の増税をたくらんでいる。昨年末の政府税制改革大綱は所得税などの増税とともに、東日本大震災の復興特別所得税を防衛財源に転用する方針を打ち出した。今年6月の政府税制調査会の答申は、給与所得控除や配偶者控除、扶養控除の縮減と退職金への増税、通勤手当への課税を唱えた。これは「新しい資本主義」の柱に「円滑な労働移動」を据えて、不安定雇用化を進める攻撃の一環でもある。これへの怒りが噴出し、政府は「サラリーマンを狙い撃ちにした増税はしない」とうそぶいた。だがそれは、サラリーマンだけでなくフリーランス、農漁民や個人商店主も対象に大増税を強行するという意味だ。10月からの消費税のインボイス制度導入で、フリーランスには納税義務を負うか廃業かが迫られる。
本命は消費税の増税だ。経団連は9月11日、社会保障の財源として消費税アップを求めた。社会保障は口実だ。資本の延命のための戦争を労働者人民から収奪した財源で賄うということだ。昨年10月には後期高齢者の医療費自己負担分が増額され、社会保障の解体が進んでいる。
敗戦時超える国家債務
日帝は世界最大の財政破綻国家だ。23年度末の国と地方の長期債務残高は1279兆円、その対GDP比は224%だ。コロナ対策費が膨らんだ20年度は、3次にわたる補正予算が組まれ、国債発行額は108兆6千億円に上昇した。1944年度の国の借金残高の対GDP比は204%だったと言われる。今の財政はそれより悪い。開戦前に財政面ではすでに敗戦状態にあるのが日帝だ。
膨大な国債発行を支えているのは日本銀行だ。23年3月末の国債発行残高は1079兆9593億円、その53・3%を日銀が保有する。第2次安倍政権が登場した12年12月の日銀の国債保有割合は11・48%で、70%は民間金融機関が持っていた。アベノミクスでこの比率は逆転した。
通常なら、こんなことを続ければ大インフレが引き起こされる。しかし日本ではウクライナ戦争勃発まではそうならなかった。その要因は一つに、新自由主義攻撃が労働者に低賃金を強い続けたことにある。もう一つは、過剰資本・過剰生産力状態のもと、膨大な資金が資本にばらまかれても、それは設備投資などの実体経済には回らなかったからだ。
だが、ウクライナ戦争で世界経済は分断され、石油などの資源の供給は滞り、物価騰貴が世界を覆った。そこに大軍拡が行われれば、どうなるのか。武器という人間の命を奪うだけの非生産的な商品であれ、商品生産に膨大な財政資金がぶちこまれれば、必ずインフレになる。それは財政支出と財政赤字を膨らませ、その穴埋めのためにさらに大量の国債が発行されて、インフレを一層加速させる。その悪循環が始まるのだ。
戦争は戦場で労働者同士を殺し合わせる。「銃後」でも人間の生存は奪われる。こんなことは断じて拒否だ。11・19労働者集会に結集し、岸田を打倒して戦争を絶対に阻もう。