マイナンバーと戦争国家化 徴兵と戦費強要―戦時体制のためのマイナ制度廃止を

週刊『前進』04頁(3310号02面03)(2023/09/11)


マイナンバーと戦争国家化
 徴兵と戦費強要―戦時体制のためのマイナ制度廃止を


 連日、マイナンバー(個人番号)・マイナ保険証が大問題となっている。しかし岸田政権はどんなに反対の声があふれ支持率が下がろうと方針を変えようとはしない。マイナンバーを日本帝国主義の存亡にかかわる戦争国家化の土台に位置付けているからだ。絶対反戦の怒りでマイナ制度廃止・岸田打倒へ闘おう。

核心は全情報のひも付け

 岸田は8月8日、マイナンバーにひも付けられた個人情報29項目総点検の中間報告で「デジタル敗戦を繰り返さないために(デジタル化とマイナンバーの)歩みを止めてはならない」とマイナンバー政策断行の意思を表明。翌9日、河野太郎デジタル相は健康保険証の廃止は「法律で決まっている」として、多くの医療関係者が反対していることに対し「お医者さんがどう思うかではなく、きちんとやるべきことはやっていただかなければならない」と言い放った。
 日帝政府の強硬姿勢の背景にあるのは、単なるデジタル化をめぐる自公政権・資本の巨大利権(それも重大だが)ではない。何よりそれは戦争国家化の問題であり、キーワードは「国家による全住民情報のひも付け=掌握」だ。
 その重大性は、①かつて戦時下の徴兵・徴用(戦争動員)を担った全国の市町村役場の兵事係が(敗戦後の軍の焼却処分命令に逆らって)残した資料と証言、②日帝の戦争財政の歴史から知ることができる。今日のマイナンバーに基づく住民情報の国家掌握が、戦時体制の土台として準備されていることが明確になる。

兵事係が集めた徴兵情報

 兵事係は召集令状(赤紙)を配ったが、その業務の全体像は『赤紙 男たちはこうして戦場へ送られた』(小澤眞人+NHK取材班/創元社1997年刊)、『赤紙と徴兵 105歳 最後の兵事係の証言から』(吉田敏浩/彩流社2011年刊)に詳しい。
 兵事係は20歳になる徴兵適齢者名簿を軍に送り徴兵検査に立ち会った。「甲種合格者」は直ちに入隊。それ以外は召集まで「在郷軍人」とされた。兵事係は健康状態、家族関係、資産・納税額、就学程度、血族も含む思想・運動・犯罪歴と職業・技能・資格・免許などの身上調査書を軍に提出した。軍隊には技術者が重要だ。医師・看護師、鉄道・自動車・船舶の操縦、通信、測量、ラッパ手から軍馬の蹄鉄(ていてつ)工、木工、縫製、簿記係など多くの技術職が必要とされ、軍はその情報を得ることで召集名簿を決めた。
 さらに兵事係は軍需生産要員などの召集延期、14歳以上の志願兵の勧誘や徴兵逃亡者の指名手配、徴兵後の家族の動向監視、「スパイ」の摘発、国防献金集めまで行った。

ぴったりと重なるマイナンバー情報

 こうした兵事係が集めた詳細な徴兵情報とぴったり重なるのが、今日急速に拡大するマイナンバーのひも付け情報だ。たび重なる法改悪の上に6月の大改悪で保険証廃止・マイナ保険証への一本化と共に、様々な国家資格・免許所持者と在留外国人、公金振込口座の登録が決まった。
 さらに学校の成績や健診情報のひも付けが画策され、政府はマイナ保険証を前提に電子カルテを一括活用する法案の25年国会提出を準備。今秋国会提出の子どもへの性犯罪歴のデータベース化法案を水路に、条例違反を含む全犯罪歴の登録と雇用時の排除に使うことまで言い出した。現代版のレッドパージだ。
 まさにマイナンバー制度が、兵事係に代わるデジタル情報の集積による戦時体制、徴兵・徴用と「スパイ摘発」・監視国家化の土台となるのは明白だ。絶対に許してはならない。

戦時増税と国債購入強制

 中央大学・関野満夫教授(財政学)の『日本の戦争財政 日中戦争・アジア太平洋戦争の財政分析』(中央大学出版部21年刊)は、大蔵省発行の『昭和財政史』などを分析している。日帝が膨大な戦費をいかに調達し、極限的な国民負担と「生活の戦時化」、戦後の破滅的結果をもたらしたかを描き出す。
 政府の純歳出額は際限なく膨張。1931年中国東北部(満州)への侵略戦争開始から37年日中戦争開戦までは国民総生産(GNP)の12~13%、その後40年度までは20~30%弱。アジア太平洋戦争に突入し41~43年度の40~60%から44年度には116%に達し、日帝経済の限界をはるかに超えていった。
 日帝は様々な形を取った戦時増税、特に所得税と物品・酒・砂糖・織物税、新設の遊興飲食・通行・入場税などのすさまじい引き上げを毎年断行。所得税課税額は39年度からの5年間で26・1倍に膨れ上がった。
 戦費調達の7割超は借金が占めた。巨額の国債日銀引き受けは大インフレとなり、戦時下の物不足と節約・貯蓄、官庁・会社・隣組に国債の購入が強制された。大蔵省は「大東亜共栄圏」(占領地からの略奪)と「皇国国民精神」に基づく耐乏生活での戦争必勝を叫んだ。「欲しがりません勝つまでは」を強要して破滅へ突進し、戦後に国債は紙くずと化した。
 今日のマイナンバーの全口座ひも付けの恐るべき意図は明白である。国家による戦費強制徴収のための所得・資産の全面掌握と監視が準備されているのだ。

最後の歯止め外す改憲絶対阻止を!

 日帝・岸田の大軍拡と戦争への突進は徴兵と戦費調達の問題を必然化する。すでに戦争国債が始まった。最後の歯止めを外す改憲・非常事態条項制定の動きが今秋の翼賛国会で現実のものとなろうとしている。
 「マイナ保険証はシステムを整備してから」「義務化には反対」にとどまるのは戦時体制の後押しでしかない。保険証廃止と大軍拡・戦争のための大増税・社会保障破壊への怒りを爆発させよう。自治体の募兵協力を許さず、改憲・戦争阻止、マイナ制度廃止・日帝打倒へ、9・23反戦デモに総決起し11月労働者集会の大結集をかちとろう。

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戦時徴兵・徴用、戦費調達の記録から
役場の兵事係が集めた住民情報と他の業務
・壮丁名簿=徴兵対象の住所・氏名・生年月日
・身上調査書=健康状態、家族関係、納税額・資 産、就学程度、血族も含む思想・運動・犯罪歴、 職業と特有の技能・資格・免許(医師・看護師、 鉄道・自動車・船舶の運転、通信、測量、ラッパ 手、馬の蹄鉄工、木工・縫製、簿記係など)
・志願兵勧誘、留守家族監視、逃亡者・スパイ摘発
戦費調達のための極限的増税・国債発行
・戦費は1944年度にはGNP(国民総生産)の 116%に達し、7割以上を借金に依存
・あらゆる形を取った租税負担の拡大(所得課 税額は1939年度から5年間で26.1倍に)
・際限ない戦争国債と大インフレに対し、貯蓄と 国債購入を強制「欲しがりません、勝つまでは」
→今日のマイナンバー制度が土台となる

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