JR東海道線事故が示したもの 金融と不動産業で延命狙い、鉄道業務と安全を徹底破壊
JR東海道線事故が示したもの
金融と不動産業で延命狙い、鉄道業務と安全を徹底破壊
国鉄分割・民営化でつくられたJR体制は大破産しつつある。新自由主義が崩壊する中、JR資本は「鉄道事業からの脱却」に生き残りの道を求めている。これと表裏一体の関係にあるのが、ローカル線の大規模な廃止と、軍事輸送への特化を図る動きだ。だがそれは、JRでの大事故の続発をもたらしている。深刻なのは、相次ぐ事故がこれまでには考えられないような形で起きていることだ。
倒れた電柱に激突し先頭車両は大破
8月5日午後9時25分ころ、JR東日本の東海道線・藤沢―大船間(神奈川県鎌倉市内)で、小田原発横浜行きの上り電車が傾いた電柱と衝突し、先頭車両の前面や屋根は大きく破損した。客室の天井板なども落下し、運転士1人と乗客3人が負傷した。乗客は停車した車内に2時間近くも閉じ込められた上、線路上を歩いて大船駅まで退避した。東海道線と並走する京浜東北線や横須賀線、湘南新宿ラインの列車もストップし、それらの列車の乗客も猛暑の中、冷房の利かない車内に長時間、留め置かれた。体調不良となり病院に緊急搬送された乗客もいる。すべての乗客が徒歩で避難を終えるのに、翌6日の午前2時45分ころまでかかった。大変な事故だ。
JR東日本は、傾いた電柱は43年前に設置され、取り換え周期まであと17年を残していて、8月2日に列車内から目視で点検した際には異常が見られなかったと発表した。だが、この電柱は7月末時点ですでに傾いていたという鉄道ファンの指摘もある。
JR東日本は2015年4月にも、山手線の秋葉原―神田間で電柱が倒壊する事故を起こしている。この時は電車の運転士が電柱の傾きを発見して付近の電車を緊急停止させる手配をとったので、衝突には至らなかった。だが、電柱倒壊の原因は不適切な電柱建て替え工事にあった。
この時と比べても、JRの安全はさらに損なわれている。この間、JR東日本では重大事故が続いている。3月2日には川越線の単線区間に上下双方の電車が進入し、正面衝突しかねない事態になった。5月23日には東海道線の上り電車が貨物線に誤進入した。6月16日には、内房線でJRの孫請け会社の青年労働者が作業中に感電死した。
こうした安全の崩壊を促しているのは、「鉄道事業からの脱却」を図るJRの方針だ。4月26日付日経新聞は「JR東、鉄道を持つIT企業に」という見出しの記事を出した。同紙は、JR東日本が銀行代理業の「JRE BANK」を立ち上げ、Suicaを軸に広域デジタル経済圏の形成を構想し、現在は売上高の4割程度の非鉄道部門の比率を不動産事業を中心に5割に高める方針だと報じている。また、JR東日本は米IT企業のグーグルにならい、22年1月から業務時間の2割を通常とは別の仕事に充てる「20%ルール」を導入したという。
JRは鉄道会社でありながら鉄道部門を徹底的に軽視し始めたのだ。現にJR東日本は3万4千人の鉄道事業の人員を4千人削減する大合理化を進めている。だが、鉄道の安全な運行は運転、車掌、検査修繕、設備、駅など多岐にわたる職種が、緊密かつ体系的に組み合わされて初めて成り立つ。そのためには各職種の労働者がその職務に専念することが必要だ。だが「IT企業化」を叫ぶJRは、それを意識的に壊しつつある。全ての職名を廃止し、「業務融合化」の名で労働者にあらゆる仕事を担わせる。さらに、金もうけの施策を案出する「企画業務」を現場労働者に強制する。それが鉄道の運行に必要な業務への集中を妨げ、労働者から誇りを奪い、鉄道の安全を破壊しているのだ。
これは新自由主義の破産をさらに破滅的な新自由主義的手法で突破しようとする方策だ。だから、どんなに不合理でも、そこにひとたび踏み込んだ以上、暴走は止まらない。これは戦争へと突進する帝国主義のあり方とも相通じるものだ。
戦争国家化の先兵=JR体制倒そう
「鉄道からの脱却」を図るJRは、ローカル線の大規模な廃線に乗り出している。これは、社会のすべてを戦争に動員する一方、戦争に役立たないものは徹底的に切り捨てる戦時国家改造の一環だ。
国鉄分割・民営化は改憲と戦争国家化に向けて、その妨害物になる闘う労働運動を解体するために強行された。動労千葉を先頭にした国鉄闘争は、これと三十数年にわたり立ち向かい続けてきた。戦争が現に始まったこの時こそ、本当の勝負だ。今秋反戦闘争を全力で闘い、戦争を止めて社会を変革する11・19労働者集会に攻め上ろう。鉄道の安全を破壊しながら戦時国家改造を進めるJR体制を打ち倒そう。