中国侵略戦争阻止を 実戦に踏み込む防衛白書

週刊『前進』04頁(3308号02面01)(2023/08/28)


中国侵略戦争阻止を
 実戦に踏み込む防衛白書


 7月28日、防衛省は「2023年版防衛白書」を発表した。昨年末に「国家安全保障戦略」など安保3文書が策定されてから初の防衛白書だ。「反撃能力」=敵基地攻撃能力の意義を強調し、「国力を総合した国全体の防衛体制の強化を一体として実施」するとして軍事費2倍化を要求、さらに南西諸島の戦場化を前提とした軍備増強や民間の空港・港湾など公共インフラの軍事利用の拡大を盛り込み、日米共同演習を写真入りで紹介するなど、これまでとは画然と異なる中身となっている。絶対に許すわけにはいかない。

日帝が戦争主体だと強調

 今回の防衛白書では、中国を「これまでにない最大の戦略的挑戦」、ロシアを「中国との戦略的な連携とあいまって安全保障上の強い懸念」、北朝鮮を「一層重大かつ差し迫った脅威」と規定した。特に中国については、これまでの「安全保障上の強い懸念」という位置づけから格段に踏み込んだ規定となっている。
 また、日帝自身が主体となって戦争を構えること、そのために「国民の御理解と御協力」(浜田靖一防衛相の巻頭言)なるものを得ることに今まで以上に力点が置かれている。昨年末に安保3文書の一つとして改定された国家安保戦略では、それまで「脅威が及ぶ場合には同盟国と連携してこれを排除」としていた部分を、「わが国が主たる責任をもって対処し、同盟国などの支援を受けつつ排除」と書き換えた。今回の防衛白書はそれを反映し、日帝自身を戦争主体として位置づけることが前面に押し出されているのだ。自民党副総裁・麻生太郎の台湾での「戦う覚悟」発言はこれとリンクしており、米戦略国際問題研究所(CSIS)などが中国侵略戦争の遂行に当たって「日本が群を抜いて最も重要」と繰り返し述べてきたことともつながっている。
 さらに防衛白書は、ウクライナ戦争が起きたのは「ウクライナがロシアによる侵略を抑止するための十分な能力を保有していなかった」からだと記述。実際には北大西洋条約機構(NATO)の拡大と米帝の挑発が引き起こしたウクライナ戦争を格好の口実に、「反撃能力」保有も含めた中国侵略戦争準備を正当化しようとしているのだ。

全人民の総動員狙う計画

 岸田政権は8月18日のキャンプ・デービッド会談で日米韓3国軍事同盟の形成に踏み込んだ。そのもとで防衛省は来年度予算の概算で過去最大の7兆7385億円を要求、軍事費2倍化へ突進している。防衛白書では安保3文書と同様、「防衛力の抜本的強化」を求める七つの分野を挙げているが、特筆すべきは、巡航ミサイルなどによる「反撃能力」=「スタンド・オフ防衛能力」に加え、「機動展開能力・国民保護」と「持続性・強靭(きょうじん)性」の項目だ。
 「機動展開能力」とは、「有事」の際に自衛隊の部隊と物資を戦場となる南西諸島に集中させる能力のことだ。すでに防衛省は沖縄を除く全国14の陸自師団・旅団のうち半数を「機動師団・機動旅団」とし、その下に六つの即応機動連隊を新編成してきた。防衛省は来年度予算の概算要求に、装備の陸揚げに使う「機動舟艇」3隻、輸送用ヘリコプター30機導入などを盛り込んでおり、さらに増加させていく方向だ。
 加えて防衛白書は、自衛隊が利用できる拠点を増やすために民間の空港・港湾の利用や米軍との施設共用の拡大を明記。南西諸島での戦闘を官民挙げて遂行する体制を構築しようとしているのだ。
 そして軍備強化と一体となった機動力の強化が民間人を避難させる能力にもなるとして、「機動展開能力」に「国民保護」を加えているが、これはまったくのペテンだ。南西諸島には150万人以上の住民が暮らしており、海も空も封鎖される「有事」に避難させるなど不可能だ。実際、自衛隊が宮古島で提案している避難計画は机上の空論そのものである。
 「持続性・強靭性」では弾薬の補充・装備の修理など後方支援の充実および自衛隊施設の改良・司令部の地下化などの軍備強化に加え、シェルターの整備、人材募集のための地方自治体との協力、戦傷医療体制の整備が明記されている。
 この後半部分は、「防衛力そのもの」として軍事産業を位置づけており、大学など研究機関での軍事研究を推進することと併せて国民総動員計画そのものだ。すでに先島諸島ではシェルター整備計画が現実に動き出し、防衛白書の発表直後の7月30日には負傷兵を治療するための血液製剤の確保へ防衛省が研究を進めていることが判明した。
 また、ここでは「自衛隊員の生活・勤務環境の改善」を重点事項の一つとしている。特に、激発する隊内のパワハラ・セクハラは社会的な大問題となっている。昨年9月から特別調査が行われ8月18日に結果が発表された。1325件の申し出があり、そのうち6割超は「期待できない」と相談窓口を利用すらせず、相談したとしても消極的だった例が非常に多かったという。自衛隊の侵略軍隊化はパワハラ・セクハラを今後ますます激増させ、隊内の矛盾はさらに深まる。

侵略戦争を日帝打倒の内乱へ!

 中国侵略戦争は、日帝が前面に立って長期にわたる激烈な戦争を構え、自衛隊兵士をはじめおびただしい数の労働者階級人民を犠牲にすることによってしか遂行できない。このような矛盾に満ちた中国侵略戦争への突進は、それを帝国主義打倒の内乱に転じる条件を無数に生み出している。反戦闘争の大衆的爆発をつくりだし、戦争を日帝打倒の内乱へ転化しよう。

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【新「防衛白書」のポイント】
・昨年末に決定した安保3文書の内容を反映し、3文書の内容と策定の経緯を詳述
・軍事費2倍化や南西諸島の軍備強化など自衛隊の能力強化、活動への「理解」求める
・中国を「これまでにない最大 の戦略的挑戦」と規定
・旧国家安全保障戦略(2013)で「脅威が及ぶ場合には同盟国と連携して排除」としていた部分を、新国家安全保障戦略を反映して「わが国が主たる責任をもって対処」と書き換え
・「抑止力」として「反撃能力」を保有する意義を強調
・「防衛力の抜本的強化」を求める七つの分野として①スタンド・オフ防衛能力②統合防空ミサイル防衛能力③無人アセット防衛能力④領域横断作戦能力⑤指揮統制・情報関連機能⑥機動展開能力・国民保護⑦持続性・強靭性を列挙し、詳述

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