世界戦争構えNATO激変 軍備大増強、即応部隊も拡大 首脳会議 中・ロへの敵意あらわ

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週刊『前進』04頁(3304号03面01)(2023/07/24)


世界戦争構えNATO激変
 軍備大増強、即応部隊も拡大
 首脳会議 中・ロへの敵意あらわ


 7月11、12日にリトアニアの首都ビリニュスで行われた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は、ロシア・中国を相手に世界戦争を構える米欧日帝国主義が、ウクライナ戦争の長期化とNATOの飛躍的な強化・拡大を確認する場となった。共同声明では昨年以上に中国への敵意をあらわにした。日本帝国主義・岸田は昨年に引き続きこの会議に参加し、ウクライナ戦争参戦国化と日・NATO一体化を確認、さらに中国侵略戦争に欧州諸国を引き込むために必死の働きかけを行い、世界戦争の旗振り役として立ち回った。断じて許すことはできない。

ウクライナ戦争の長期化狙う米欧日

 NATO首脳会議が採択した共同声明は、「条件が満たされた場合」にはウクライナの加盟手続きを進めると明記した。これとは別に、主要7カ国(G7)は「共同宣言」を発し、ウクライナに「持続可能な軍事力」を確保させるべく、引き続き兵器の供与、防衛産業基盤強化、兵員の訓練、軍事情報の共有などを行うことを打ち出した。
 昨年来協議されてきた、ウクライナ軍の兵器や装備を旧ソ連製のものからNATO基準に置き換える「複数年支援計画」も、今回合意に至った。また対ウクライナ政策を協議する「ウクライナ委員会」を「理事会」に格上げし、ここにNATO加盟国と同等の立場でウクライナが参加できるよう再編。NATO加盟を希望する国に軍組織と政府の改革を義務付ける「加盟行動計画(MAP)」を、ウクライナに対しては免除することも決めた。
 この首脳会議に合わせ、NATO諸国は新たなウクライナ軍事支援を相次いで発表した。米バイデン政権は7日、クラスター弾を含む総額8億㌦相当の追加軍事支援を発表。サリバン大統領補佐官は、「(クラスター弾の)不発弾による民間人被害のリスクは認識しているが、ロシアが更に領土を奪えば、民間人に被害が及ぶ大きなリスクがある」などと居直った。より大きい被害を避けるためと称して大量殺戮(さつりく)兵器の使用を居直るのは、まさに広島・長崎への原爆投下を正当化するのと全く同じ論理だ。
 さらにイギリスは車両や砲弾を、ドイツは戦車など7億ユーロ相当を、フランスはウクライナが求めていた長射程兵器「ストームシャドー」を供与すると発表。NATO以外にはオーストラリアが早期警戒管制機を派遣しウクライナに情報を提供、韓国は地雷探知機や防護服などを供与する。そして日帝・岸田は首脳会議での演説で、NATO信託基金に拠出した3千万㌦から対無人機検知システムなどの供与を行うと発表した。
 ウクライナ戦争は、本質的にも実体的にも米欧日帝国主義の「対ロシア戦争」という性格をますます色濃くし、その不正義の帝国主義戦争としての正体をあらわにしている。

中国をにらみ日・NATO協力文書

 加えて重大なことは、ロシア・中国との世界戦争を構え、NATOそれ自体の本格的な再編・強化に乗り出したことである。
 これまで加盟国の軍事費は国内総生産(GDP)比2%を「目標」としてきたが、今回の首脳会議で「2%以上」とすることを決定。昨年、加盟30カ国のうち2%目標を達成したのは米英など7カ国だけだったが、今後は全加盟国に最低2%を求めることになる。
 さらにロシアとNATO軍の戦闘を想定した「地域防衛計画」を新たに策定、昨年の首脳会議で合意した多国籍の「即応部隊」30万人化方針を踏まえ、これを北部・中部・南部の3地域に分けて具体的な配置計画を固めることになった。
 4月のフィンランドのNATO加盟に続き、スウェーデンの加盟が固まったことも重大だ。米シンクタンク「大西洋評議会」の研究員で元米国防次官補代理のブレジンスキーは、スウェーデンの加盟で「バルト海がNATOの湖になる」と語った。これによって「バルト海や北極圏を含む北欧全体が一つのブロックとなり、統合された作戦を実施できるようになる」(7月12日付読売新聞)からだ。
 そして何より、米日の強い働きかけを受けて、共同声明に「中国の野心と威圧的政策はNATOの利益、安全、価値観への挑戦だ」との文言が盛り込まれたことは決定的だ。岸田は演説で「欧州大西洋とインド太平洋の同志国の連携をより強固なものにし、国際社会に示す」と発言、「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」との決まり文句を繰り返した。そして、新たに「日・NATO国別適合パートナーシップ計画(ITPP)」なる協力文書が締結され、サイバー・情報・宇宙・新興技術などの16項目にわたる分野での協力が合意された。
 だが、中国をにらんだ米日の動きにはNATO諸国からの懸念や反発も強く、東京事務所の設置は仏マクロンの反対で頓挫した。欧州外交評議会の世論調査によると、台湾問題をめぐる米中対立に対し「中立」であるべきだと答えた人は、欧州11カ国で全体の62%に上る。
 ウクライナ戦争を激化・拡大し、さらに中国侵略戦争―世界戦争へ突き進もうとする米欧日帝国主義に対して、世界各地で労働者階級人民が反戦闘争に立ち上がっている。今夏8・6広島―8・9長崎闘争を、世界にとどろく巨大な反戦反核闘争としてかちとろう。
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