ひろしま平和ノート 『はだしのゲン』削除するな 平和教育を破壊し国防教育に転換
週刊『前進』04頁(3303号02面03)(2023/07/17)
ひろしま平和ノート
『はだしのゲン』削除するな
平和教育を破壊し国防教育に転換
(写真 『はだしのゲン』が使われていたこれまでの平和ノート)
広島市教育委員会は、平和教育教材「ひろしま平和ノート」から漫画『はだしのゲン』、「マグロ漁船第五福竜丸の被爆」の記述を削除する一方、米在住の被爆2世・美甘章子氏の記述を新しく採用した。
美甘氏は、広島で被爆した父親の体験を書いた『8時15分 ヒロシマで生きぬいて許す心』の「あとがき」で、怒りや憤りではなく「共感」と「許す心」こそが必要と説く。『はだしのゲン』や被爆者の原爆、戦争、天皇制、弾圧への真っすぐな怒りを真っ向から否定し、「許す心」を持つべきと主張しているのだ。さらには、「『あの戦争で敵同士であった二つの国が、今は最強のパートナーとなり協力体制にあることで、平和と調和が確立されている』という史実をお手本に、平和について世界の人々に語りかけること」が自分の使命だと明言する。日米安保体制こそが平和のお手本だというのだ。
また、「第五福竜丸」削除も重大である。69年前のアメリカのビキニ水爆実験は、戦後の核兵器開発競争と被ばくの非道を示すものだ。また、これを契機に始まった杉並の母親たちの署名運動は、全世界に広がり原水禁運動につながった。被爆者や世界の労働者民衆の連帯した闘いこそが戦争を止める真の力だと学ぶ重要な教材である。
『はだしのゲン』「第五福竜丸」削除で平和教育を破壊し、美甘氏の登用で日米安保体制(核戦争体制!)こそ平和の道だと誘導する。これは平和教育の変質=国防教育へとかじを切るものであり、防衛省の子ども向け『はじめての防衛白書』の発行と一体の大攻撃である。まさに「G7広島ビジョン」の実行だ。絶対に許せない。
広島市は6月29日、「平和公園と真珠湾公園の姉妹公園協定」を結んだ。日米の「和解」を演出して、日米安保同盟の強化・拡大、核抑止の深化にお墨付きを与えることは明らかだ。
「広島ビジョンの実現を」と主張する松井広島市長が「平和宣言」を読み、岸田首相らが次々とG7広島サミット賛美発言をする「平和式典」とは何か! 核兵器廃絶や亡くなった被爆者の追悼とは無縁であり、次の核戦争への転換点になる大変な事態だ。
8月6日午前7時、原爆ドーム前に集まり、「広島ビジョン」粉砕!岸田首相の式典出席弾劾の大きなデモを実現しよう。(8・6ヒロシマ大行動実行委員会 伊豆ハルミ)
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ひろしま平和ノートの主な改悪内容
▼3年生
・「はだしのゲン」を全5㌻削除
▼2年生
・「国境を越える平和へのメッセージ」を新設し、原爆投下を居直った「オバマ元アメリカ大統領」の2016年平和記念公園での演説や「日本政府の考え」を新規採用
▼3年生
・「核兵器廃絶に向けた世界の動き」から「核兵器廃絶」を削除し、「核軍縮に向けた世界の動き」に変更
・「第五福竜丸の被爆」を全削除
・「核軍縮への動き」として、原発推進の「国際原子力機関(IAEA)」を新規採用
・美甘章子を1㌻分、新規採用
・「世界が抱える課題―難民について」「地雷について」全3㌻削除
▼1年生
・「はだしのゲン」作者・中沢啓治さんの講演記録から被爆体験を全削除、2㌻から1㌻分に半減。
・美甘を7㌻超分、新規採用
▼高校学習指導案(教員の授業計画書)/「本時の目的」で【平和教育】を削除し【特別活動等】に変更