マイナ保険証廃止へ 戦時医療化・皆保険制度解体阻もう

週刊『前進』04頁(3298号03面03)(2023/06/12)


マイナ保険証廃止へ
 戦時医療化・皆保険制度解体阻もう

(写真 新宿反戦メーデーで、同日午前中の厚生労働省への申し入れ行動を報告【5月1日】)

 G7広島サミットをもって本格的な戦時体制構築に乗り出した岸田政権は、軍事費2倍化と一体で社会保障の全面解体に道を開こうとしている。こうした戦時体制構築の重要な柱が、2024年秋の保険証廃止・マイナ保険証への一本化だ。関連法の改悪は強行されたが勝負はここからだ。医療・介護・福祉職場の労働組合が絶対反対を貫いて闘えば粉砕できる。戦争協力拒否の闘いそのものとして、医療・自治体労働者を先頭にマイナ保険証廃止の大運動を巻き起こそう。

医療・介護現場ですでに矛盾が噴出

 マイナンバー関連改悪法が6月2日に参院本会議で成立した。その柱は来年秋の健康保険証廃止・マイナ保険証への一本化、マイナンバーと預貯金口座の自動ひも付け、利用範囲の大幅拡大だ。しかし7日には、金融機関の口座ひも付けをめぐり約13万件の誤登録が判明した。相次ぐ医療情報の誤登録も、命にかかわる重大事態だ。「こんな大混乱の中で法を改悪するのか」という怒りが噴出し、マイナ保険証返納の動きも広がっている。
 そもそもマイナンバー制度は「利便性向上」のためのものでも何でもない。「マイナンバーを導入した本来の目的は、政府や自治体が個々人の収入・資産を的確に把握し、社会保障・税の負担と給付を公正にすること」(22年10月5日付日経新聞)だ。社会保障や医療給付を保険料負担に見合った額に抑える「社会保障個人会計」制度を提唱してきた政府は、マイナ保険証を利用して公的医療破壊・社会保障解体を加速させようとしているのだ。
 保険証廃止・マイナ保険証の実質義務化は、マイナ保険証を利用しない・できない人を切り捨て、公的医療の枠組みからはじき出す皆保険制度解体攻撃だ。マイナ保険証を取得しない人は自ら申請して有効期限1年の「資格確認書」を取得する必要があり、これがなければ無保険状態となる。障害者や高齢者に矛盾が集中することは明らかだ。
 医療・介護現場では、すでに矛盾が爆発している。全国保険医団体連合会によれば、オンライン資格確認でトラブルが発生した医療機関は6割にも上り、エラー表示で10割負担となった患者が診察をあきらめる事態まで起こっている。
 介護現場では緊急時の受診などに備えて入居者から保険証を預かるケースが多いが、マイナ保険証の場合はパスワードもあわせて把握・管理する必要が生じる。パスワードがあれば政府が運営するウェブサイト「マイナポータル」から納税や年金、医療に関する情報へのアクセスが可能となるため、現場労働者に課される責任は極めて重い。
 そもそも、マイナカード取得・マイナ保険証の登録はあくまで任意であり義務ではない。誰もがその危険性ゆえに義務化に反対しているのだ。労働者と患者・利用者に矛盾を押し付け命を脅かす制度など廃止以外にありえない。

労働組合の闘いで攻撃は粉砕できる

 医療情報をはじめあらゆる個人情報を国家が掌握し管理するマイナンバー制度は、徴税・徴用(戦時動員)・徴兵に直結する。
 歴史的にも、個人番号制度は戦争や「治安維持」と切っても切れない関係にある。かつてナチスは人々に番号をつけ、生年月日や身体的特徴、職業上の技能などの個人情報をカードに入力して一元的に掌握した。これに基づいてユダヤ人や障害者、同性愛者らを選別し、大量虐殺したのだ。これへの反省からドイツでは共通番号の使用が違憲とされ、行政分野ごとに異なる個人番号が使われている。
 日本でも多くの自治体が自衛官募集業務に協力している中、あらゆる情報がひも付けられたマイナカードは現代の「赤紙」(召集令状)そのものとなりうる。
 歴史の教訓はもう一つある。国家による個人情報一元化は、労働組合の闘いで粉砕できるということだ。
 イギリスでは06年に生体情報を含む個人情報を登録する国民IDカード制度が導入されたが、「恒常的な人権侵害装置」であるとして5年後に廃止に。ドイツでも09年、行政効率化のためとして税と社会保障の情報を連携するシステムが導入されたが、労働組合や市民団体が抗議の声を上げたことで2年後に稼働を停止した。現場で巻き起こる大混乱と怒りの爆発の中で、戦争攻撃としての制度の本質を暴露し矛盾をついて絶対反対で闘えば、マイナ保険証とマイナンバー制度そのものの廃止をかちとることは必ずできる。
 大阪の高槻医療福祉労組・八尾北医療センター労組を柱とする地域医療交流会は、マイナ保険証は皆保険制度を解体し「医療が必要な者」と「そうでない者」を選別するものだと訴え、地域で運動を拡大してきた。また、全国で1千人を超える医師・歯科医師がオンライン資格確認をめぐる訴訟を提起している。
 一方で連合は4月に発表した重点政策で「マイナンバーカードは普及・促進を図る立場で、全ての預貯金口座とのひも付けを行うべき」とし、積極的に推進することを宣言している。しかし、マイナ保険証義務化への怒りは必ず噴出する。組合の枠組みを超え、階級的労働運動派が現場に渦巻く怒りを組織するときだ。
 政府はマイナンバーを利用して医師や看護師など約30の国家資格者を掌握・管理する計画も打ち出している。労働者の戦時動員と戦時医療への転換=命の選別を許さず、公的医療を労働者民衆のもとに奪い返そう。マイナ保険証廃止へ、闘いをさらに広げよう。
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