「G7広島ビジョン」を弾劾する 被爆者踏みにじり核兵器を正当化
週刊『前進』04頁(3296号03面02)(2023/05/29)
「G7広島ビジョン」を弾劾する
被爆者踏みにじり核兵器を正当化
今回のG7広島サミットが、過去のサミットとは比較にならないほど凶暴かつ醜悪な核戦争会議だったことは、採択された「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」に最も鮮明に示されている。広島・長崎への原爆投下を今日に至るも「正義」と居直って恥じないアメリカ帝国主義を筆頭に、G7頭目らは、自らの保有する核兵器・核戦力を正当化し、その「有用性」を確認する宣言文を、あろうことか被爆地・広島で採択したのである。しかもそれは、従来の核抑止力論の単なる繰り返しではない。今まさにロシア・中国を相手に史上3度目の世界戦争へと突き進むG7帝国主義による、新たな「核戦争宣言」にほかならない。
「防衛」「侵略抑止」に役立つと賛美
「我々の安全保障政策は、核兵器は、それが存在する限りにおいて、防衛目的のために役割を果たし、侵略を抑止し、並びに戦争及び威圧を防止すべきとの理解に基づいている」——「広島ビジョン」に明記されたこの一文こそ、今回のG7広島サミットの核戦争会議としての正体をあらわにしたものだ。核兵器それ自体について「防衛目的のための役割を果たすもの」「侵略を抑止し戦争・威圧を防止するもの」と賛辞を捧げ、有用かつ必要不可欠な手段として全面的に肯定したのである。その一方で、ロシアには「核兵器の使用の威嚇、ましてや……核兵器のいかなる使用も許されない」と突きつけ、中国の「核戦力の増強」をやり玉にあげ、北朝鮮とイランを名指しで非難した。広島・長崎への原爆投下については、文書の冒頭で「かつてない壊滅と極めて甚大な非人間的な苦難」などととって付けたように触れながら、それをもたらした米帝の責任には一切言及せず、当然のように謝罪も否定もせず、被爆者についての記述すら一言もなかった。そして、「核兵器のない世界の実現」は「全ての者にとっての安全が損なわれない形で、現実的で、実践的な、責任あるアプローチを通じて達成される」などと強調した。戦後78年にわたり、想像を絶する原爆症の苦しみと闘いながら、「核と人類は相いれない」「核兵器廃絶を」と命がけで訴えてきた被爆者に向かって、G7の頭目どもは「そんな主張は無責任で安全保障を害するものだ」と罵倒し一蹴したのである。
加えて「原子力エネルギー、原子力科学及び原子力技術の利用が、低廉な低炭素のエネルギーを提供することに貢献することを認識する」として、「脱炭素」を口実に核戦略の一環としての原発政策の推進をも同時に確認した。
噴出する怒りの声結集し核戦争阻め
カナダ在住の被爆者・サーロー節子氏が直後の中国新聞の取材に答え、「自国の核兵器は肯定し、対立する国の核兵器を非難するばかりの発信を被爆地からするのは許されない」と強く弾劾したように、被爆地・広島を冒涜(ぼうとく)し踏みにじる「広島ビジョン」に対して、多くの被爆者・被爆者団体から続々と抗議の声が上がっている。「サミット歓迎」を大宣伝してきた中国新聞すらも、21日朝刊の1面に「『広島ビジョン』と言えるのか」と批判する論説を掲載せざるを得なくなった。だが、実は「広島ビジョン」の文言は、4月のG7外相会合で採択された共同声明をほとんどそっくり流用したものであり、今次サミットが犯罪的な核戦争会議になることは当初から明白だったのだ。それにもかかわらず、政府・マスコミ・広島市ばかりか日本共産党などの野党勢力までもが、サミットを「平和会議」であるかのように大歓迎し、被爆者・広島市民の怒りと疑問を抑えつけてきた。原水爆禁止日本協議会(原水協=共産党系)は、サミット終了後になって「核抑止力論を公然と宣言するサミットとなったことは極めて遺憾」などとする事務局長談話を発表したが、サミット期間中の20日には「市民行進」なるサミット翼賛行事すら行っていたのだ。もはやこうした勢力に「ヒロシマの怒り」を代表し体現する力も資格もないことは明らかである。
かつて帝国主義諸国の間で「軍縮」が声高に叫ばれた1920〜30年代において、実際に進められたのは、老朽化した大型艦船などに代わるより近代的・効率的な兵器の開発と配備であり、より残虐かつ破壊的な大量殺戮(さつりく)戦争の準備だった。「核軍縮に焦点を当てた初のG7首脳宣言」と称する「広島ビジョン」もまた、「30年間で1兆㌦」を投じる核兵器近代化・高性能化(=「使える核」への転換)を進める米帝バイデンを頭目とする、G7の新たな世界戦争・核戦争の準備を正当化するものにほかならない。
この核戦争会議への被爆者・2世・3世の根底的怒りが爆発するのはまさにこれからだ。サミット粉砕現地闘争の地平を引き継ぎ、軍拡・戦争国会粉砕の国会闘争を闘い、今夏8・6広島―8・9長崎闘争の歴史的な大高揚をつくりだそう。核戦争絶対阻止の叫びを世界にとどろかせよう。