戦争国会粉砕へ

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週刊『前進』04頁(3295号02面01)(2023/05/22)


戦争国会粉砕へ

(写真 改憲・戦争阻止!大行進東京は戦争のための諸反動法案粉砕へ、国会前での闘争に立った【5月12日】)


 「岸田文雄首相は、何十年も続いた平和主義を放棄し、日本を真の軍事大国に変えようと望んでいる」----米タイム誌の見出しでそのように書かれた通り、岸田は今国会で「真の軍事大国」化に向けた数々の反動法案を成立させようとしている。防衛産業強化法案は9日に衆院を通過し、財源確保法案も近く衆院通過が狙われている。入管法改悪案は12日に参院で審議入りした。さらに核武装に向けた原子力政策の大転換のためのGX脱炭素電源法案、健康保険証の廃止を含むマイナンバー法改悪案も攻防局面を迎えている。戦争国会を包囲・粉砕する5〜6月国会闘争に立とう。

核武装のためのGX法案
 戦時下で原発推進する岸田倒せ

(写真 汚染水流すな これ以上海を汚すな!市民会議とさようなら原発1000万人アクション実行委が5月16日、日比谷野音で「汚染水を海に流すな!東京集会」を開き500人が参加。福島の椎名千恵子さんが駆けつけNAZENも共闘)

 広島での主要7カ国首脳会議(G7サミット)で核戦争会議の議長役を担った日本帝国主義・岸田は、ウクライナ戦争・中国侵略戦争―世界戦争の参戦国として「命がけの飛躍」、すなわち核戦争をやれる帝国主義への「飛躍」を狙っている。そのために岸田は、原子力政策の抜本的転換に向けた「GX法」を今国会で何としても成立させようとしているのだ。

核と原発のための財源確保狙う

 いわゆるGX法は「GX推進法」と「GX脱炭素電源法」の2本からなり、2月10日に閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」を法案化する形で今国会に提出された。GX推進法は5月12日の衆議院本会議で可決・成立した。
 GXとはグリーン・トランスフォーメーション(緑への移行)の略で、「地球温暖化防止に向けた脱炭素産業構造への転換」などと説明されるが、脱炭素といっても太陽光や風力発電、水素やアンモニアは本命たり得ない。結局は原発を基軸とするための口実だ。「ウクライナ戦争でエネルギー資源をめぐる日本の弱点が明らかになった」「地球温暖化対策に反対するのか」などと言い立て、原発再稼働や汚染水放出を許さない福島の怒りを圧殺し、原子力を日帝の柱にすえる一大イデオロギー攻撃だ。これに連合を始め立憲民主党、日本共産党などが総屈服している。
 12日に成立したGX推進法は、「脱炭素社会」の実現と称して官民挙げて10年間に150兆円もの巨額投資を行い、そのうち20兆円は特別の国債を発行して賄うとしている。原発新増設や核燃料サイクル完成に必要な財源の確保が目的だ。
 福島第一原発事故が全く収束しない中で、原発産業自体も崩壊している。その救済に登場したのが連合だ。芳野友子連合会長は昨年7月から「GX実行会議」に参加し、GX推進の先兵を買って出た。芳野は雇用拡大を強調するが、原発関連産業での被曝労働は増加する。労働者の命を戦争に差し出すことと同じだ。この連合の屈服で、衆議院段階では法案に反対した立憲民主党も参議院段階での修正ならざる修正に応じて賛成に回った。

原子力政策全般を「国の責務」に

 もう一方の「GX脱炭素電源法案」は、①原子力基本法、②電気事業法、③原子炉等規制法、④再生可能エネルギー促進法、⑤使用済み燃料の再処理・廃炉推進法の5法案を束ねて一つにした「束ね法案」だ。個別の法案審議をやりにくくした上で、まとめて成立させるという安倍政権が多用した手口である。しかもその内実は、老朽原発の再稼働や世界でも例を見ない60年超もの運転を可能にするもので、あまりの反動性に原子力規制委員会の中からも反対意見が出て法案提出が遅れた。4月28日に衆議院で可決、5月10日から参議院で審議が始まった。最大の問題は原子力基本法の改悪だ。
 原子力基本法は、日帝の原子力政策の目的を「平和利用に限る」とすることで国内外の反対を抑え込んだものだが、2012年に「安全保障に資する」と書き加えられた。今回の改悪では原子力政策に「国が必要な施策を講じる」として原子力政策全般を「国の責務」とした。
 特に26回も完成が延期され、完成時期すら明示できない六ケ所再処理工場(青森県)での使用済み核燃料の処理を「国の責務」としたことが重大である。事実上の国有化宣言だ。使用済み核燃料の再処理は、核武装に向けた日帝の核政策の根幹をなすものであり、もはや民間での「平和利用」というこれまでの偽装形態をかなぐり捨て、国の政策としてこれを推進するということだ。
 さらに原子炉等規制法の運転期間の上限を削除、電気事業法に「発電用原子炉の運転期間」条項を新設し事実上60年超の運転も可能にする。これは原発事故を再来させるものだ。

反戦闘争に追い詰められた日帝

 大軍拡のための財源確保法案と一体で、現在国会で審議中の防衛産業強化法案は、軍需企業への経営支援のための助成金や政府系金融機関による融資の優遇、さらには企業経営が行き詰まった際には「国有化」することまで盛り込んでいる。財源確保と国による基盤整備のセットは、GX法案とうり二つだ。
 軍需産業と原子力産業を「国の責務」にするという内容は、昨年12月16日に閣議決定された安保3文書の一つ「国家安全保障戦略」中の「我が国を守る一義的な責任は我が国にある」の具体化だ。だがそれは、巨額の税金を投じて必死にテコ入れしなければ軍需産業も核・原発政策も成り立たず、敗戦帝国主義からの脱却・転換もできないということだ。
 そこには反戦・反核・反原発の闘いに追い詰められた日帝の体制的危機と破綻、そして帝国主義戦争を内乱に転化する闘いの展望が示されている。
 広島サミット決戦の大爆発を引き継ぎ、GX法案と防衛産業強化法案を粉砕しよう。福島第一原発の放射能汚染水の海洋放出を絶対に阻止しよう。

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マイナ保険証の義務化許すな
 「等しく医療を受けられる」皆保険制度を解体する攻撃

 岸田政権によるマイナンバー(個人番号)関連法の大改悪に怒りが噴出している。とりわけ来年秋からの〈健康保険証廃止・マイナンバーカードへの一本化〉によるマイナ保険証の実質義務化は、「等しく必要とされる医療を受けられる」憲法と皆保険制度を突き崩す重大な攻撃だ。戦争国家化と一体で全ての人が健康に生きる権利を奪う、マイナ保険証廃止へ闘おう。

医師1千人が訴訟

 4月から病院や診療所にはマイナ保険証に対応した資格確認システムの導入が原則義務化された。対応を怠れば保険医療機関としての指定が取り消され廃院に追い込まれうる。これに対し1千人を超える医師・歯科医師が国家賠償請求訴訟に立ち、訴訟団はさらに拡大しようとしている。
 マイナカードの取得、マイナ保険証の登録はあくまで任意であり、義務ではない。〈保険証廃止・マイナ保険証への一本化〉のための資格確認システムの義務化は、医療崩壊と皆保険制度解体に行き着く暴挙であり、これに絶対反対する闘いが始まっているのだ。
 日本弁護士連合会(日弁連)は3月29日、マイナンバー法改悪反対の会長声明を発表。開業医の全国保険医団体連合会(保団連)は国会で4月27日、大集会を開催した。東京や大阪など各地の保険医協会も声明で「多くの無保険者をうむ保険証とマイナカードの一本化は撤回を/国民皆保険の基盤である保険証は存続を」と訴えている。
 現行の制度は期限切れ前に被保険者に新たな保険証が必ず届くが、マイナ保険証は5年ごとに暗証番号を使う手続きをしなければ更新されない。マイナ保険証がないと資格確認されず、いったん医療機関の窓口で医療費の全額支払いを求められる。「やむを得ない理由がある場合」のみ発行される「資格確認書」の期限は1年間。保団連が4月に公表した調査では、利用者や入所者の保険証を管理している高齢者施設は83・6%だが、暗証番号を含むマイナカードの管理ができるという回答はわずか6・0%だった。無保険になる人が多数出ることは必至だ。

命守り戦争拒否を

 厚生労働省によれば、マイナカード申請数は5月7日時点で9671万件、人口比で約76・8%に達したという。しかし今も約2割超が申請せず、マイナ保険証の登録は4月23日時点で5889万8024件と、5割にも及ばない。
 さらに、マイナカード・マイナ保険証などに別人の情報が大量に誤登録されていたことが発覚し、医療事故を招きかねない重大事態が続発。国の責任を問い、マイナ保険証の返納、さらに廃止を求める声が上がっている。大阪府保険医協会の調査ではマイナ保険証のトラブルを54・5%が報告。各医療機関ではマイナ保険証以外にこれまでの保険証も持参することを推奨しているありさまだ。
 厚労省は省令を改悪し、社会保険の資格取得届に被雇用者のマイナンバーの記載を義務化するという。しかしマイナ保険証はあくまで任意であり強制はできない。これ自体が医療・介護・福祉、自治体をはじめ全職場の攻防の焦点となる。
 4月杉並区議選と一体で闘われた大阪・高槻市議選では、高槻医療福祉労組・村山裕子委員長を押し立て「いのち守り、戦争を拒否する」闘いが繰り広げられた。5月1日、東京労組交流センター医療福祉部会を中心に5・1メーデー闘争実行委員会が厚労省を激しく追及した。マイナンバーと原発・核政策推進を重点政策に掲げる連合本部をぶっ飛ばし、戦時下で絶対反対で闘う階級的労働運動をよみがえらせよう。

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入管法改悪絶対阻止を

(写真 毎週水曜日の入管法反対シットイン。仮放免者たちが「入管法が私たちを殺そうしている」とアピール【5月17日 参院議員会館前】)

 入管法改悪案は5月12日、参議院で審議入りしたが、日本維新の会の梅村みずほが「良かれと思った支援者の一言がウィシュマさんに『病気になれば仮釈放してもらえる』という淡い期待を抱かせ」たなどと、ウィシュマさんを「詐病」扱いする暴言を吐いた。その後も梅村は開き直り、同党の鈴木宗男は、刑務所と入管収容所を同列に論じ面会制限の必要性に言及した。
 12日夕、国会正門前には4千人が駆けつけ「廃案一択だ!」と気勢を上げ、17日には仮放免者やその家族らが「私たちは犯罪者じゃない」と怒りの声を上げた。毎日が闘いだ。
 東京労組交流センターと全国実が呼びかける5・25デモを闘い入管法改悪を阻止しよう!

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