日米韓軍事同盟許すな 「対中国」想定し核戦争準備 今こそ戦争阻む労働者国際連帯を

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週刊『前進』04頁(3294号03面01)(2023/05/15)


日米韓軍事同盟許すな
 「対中国」想定し核戦争準備
 今こそ戦争阻む労働者国際連帯を


 広島で開催される主要7カ国首脳会議(G7サミット)は、「対ロシア戦争」としてのウクライナ戦争を徹底的に推進し、これと一体で中国侵略戦争の準備を加速させ、さらには「被爆地・ヒロシマ」の名で帝国主義の核戦略を正当化することを目的とした戦争会議(核戦争会議)にほかならない。このサミット開催を前に、4月26日にワシントンで米韓首脳会談、5月7日にソウルで日韓首脳会談が行われ、対北朝鮮のみならず中国との核戦争をも想定した日米韓3国軍事同盟の構築が急ピッチで進められている。広島サミット粉砕の実力闘争を爆発させ、戦争と軍事同盟を阻む日米韓労働者の壮大な国際連帯を今こそつくりあげよう。

米原潜40年ぶりに韓国へ

 4月26日にワシントンで行われた米・バイデンと韓国・ユンソンニョルとの首脳会談後、両首脳は米韓の核軍事協力の強化を盛り込んだ「ワシントン宣言」を共同声明とは別の文書として採択した。会談後の記者会見で、バイデンは「北朝鮮が核を使えば、強力な核戦略を含む圧倒的な対応で迅速に対処する」と主張し、朝鮮半島が核戦争の戦場になることをなんら辞さない姿勢をあらわにした。
 重要なことは、採択されたワシントン宣言に、核ミサイルを搭載できる米軍戦略原子力潜水艦の韓国への派遣が明記されたことだ。米軍戦略原潜の朝鮮半島への展開は、1980年代初頭以来約40年ぶりの措置となる。さらに「朝鮮半島の戦略資産を定期的に目にする機会を増やし、米韓両軍の協力を拡大・深化させる」とも明記した。
 「戦略資産」とは、米軍の核戦略を実行するための各種兵器のことである。原潜だけでなく、地上配備型のミサイル発射装置や戦略爆撃機、迎撃用兵器なども含まれる。そして、この間の米韓あるいは米日の会談でしきりに使われる「拡大抑止」という言葉は、具体的には、米軍の保有するあらゆる戦略資産を韓国や日本などの同盟国に配備・展開することを意味する。
 実際、早くも米韓会談の翌日には、原潜に加えて核兵器搭載可能な戦略爆撃機B52や同B2を韓国に着陸させる計画をもっていることを、米太平洋空軍のウィルズバック司令官が明らかにしている。米軍戦略爆撃機はこれまでも米韓共同訓練などの際に朝鮮半島上空に飛来しているが、韓国への着陸は北朝鮮が核実験を行った2016年以外に実績はない。だが、今後は朝鮮半島への着陸や展開が定例化する見通しだ。
 またワシントン宣言では、核兵器の運用に関する新たな協議体「米韓核協議グループ(NCG)」の創設も明記された。米軍の核運用について韓国側にも「発言権」を保証するためのものであると報道されているが、実際には、北大西洋条約機構(NATO)が1966年に創設した協議体=核計画グループ(NPG)をモデルにしたもので、米軍の核戦略に同盟国を動員するための機関である。かつて80年代初頭に欧州諸国の人民の圧倒的多数の意思に反して強行された米軍中距離ミサイルの欧州配備計画を想起すれば、その狙いは明らかだ。
 米軍のこうした朝鮮半島での核戦略は、「北朝鮮の抑止」を口実としながら、実際にはそれ以上に中国との戦争(核戦争)を準備する動きにほかならない。実際、昨年9月には、2カ月前に退任したばかりのエイブラムス在韓米軍前司令官が「台湾有事」の際には「在韓米軍の投入が可能だ」と発言。他の米軍の元将校や専門家も同様の発言を連発しており、そうなれば「在韓米軍基地は中国をけん制・攻撃する発進基地の役割を果たすことになる。……韓国軍が中国軍と戦う状況になりかねない」(昨年9月22日付ハンギョレ新聞)と報じられている。日韓を引き込んだ核軍事同盟の構築こそ、米バイデンが狙う中国侵略戦争の鍵をなすということだ。

サミットを前に日韓会談

 ユンソンニョルは、米韓会談とワシントン宣言について「米韓同盟が核を基盤とするものへアップグレードされた」などと誇示したが、政権支持率は各種世論調査で軒並み2〜3割台に低迷している。国家保安法弾圧にも屈せず闘い抜く民主労総を先頭に韓国労働者階級のユン政権打倒の闘いも不屈に続いている。5月7日の岸田の訪韓と日韓首脳会談は、この怒りと闘いの炎に油を注いだ。
 会談で最も強力に確認されたことは、日韓・日米韓での軍事協力関係の強化である。会談後の記者会見で、岸田は「日米同盟、韓米同盟、そして日韓米安保協力を通じて抑止力と対処力の強化の重要性について意見が一致した」と語り、ユンは先の米韓ワシントン宣言が日米韓の協力に発展するかとの質問に「日本の参加を排除しない」「準備が整えばいつでも協力できる」と答えた。また会談では、韓国国内で広範な反対の声が上がる福島第一原発汚染水の海洋放出について、韓国側からの「専門家視察団の現地派遣」を行うことにも合意した。
 その一方で、日韓・日米韓軍事同盟の構築にとって決定的な「障壁」となっていた「徴用工問題」について、岸田は共同記者会見で「当時の厳しい環境のもとで多数の方々が苦しい、悲しい思いをされた。心が痛む思いだ」などと、日本帝国主義の戦争責任・加害責任をまったくあいまいにした「個人の見解」を述べて見せた。他方でユンは、韓国政府傘下の財団が韓国資本の寄付金を財源に被害者への賠償金を肩代わりするという、3月6日に発表した「解決策」について、「法的完結性をもつ唯一の解決策だ」とあらためて主張した。戦争と植民地支配を二度と繰り返すなと訴え、謝罪・賠償を要求し不屈に闘ってきた被害者を傲然(ごうぜん)と踏みにじるものであり、断じて許すことはできない。
 ところが、この日韓会談について日本の大手メディアは一斉に絶賛し、リベラル系とされる朝日新聞も「日米韓の結束……それを土台にした安保体制の構築が重要なのは当然」「(徴用工問題に関して)首相自らの言葉で思いを伝えたことは評価できる」(5月8日付社説)などと手放しに持ち上げた。しかも同紙は同じ号で「中国念頭に再編急ぐ米軍」と題する解説を載せ、台湾有事は「日本を巻き込んだ中国との大きな戦いになる可能性がある」というガンジンガー元米国防副次官補のコメントを何の批判もつけずに紹介、「集団的自衛権の行使が視野に入ってくる」などと自衛隊の「台湾有事」への参戦を当然のことのように論じている。戦時下におけるメディアの戦争協力はこうして始まるという典型だ。

実力でサミット打ち砕け

 だが、朝鮮半島や南西諸島を中国侵略戦争・核戦争の戦場とする米日帝国主義の策動に対し、労働者階級人民の反戦決起はこれからますます広がっていく。動労千葉を先頭に11月労働者集会を通じて築き上げてきた日米韓をはじめ全世界の労働者の国際連帯闘争が、いよいよその真価を問われるときがきた。G7広島サミット粉砕決戦を大衆的実力闘争として爆発させ、絶対反戦の叫びをヒロシマから全世界に発信しよう。
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