戦争とめる国際連帯を 入管法改悪案を廃案へ 革共同入管闘争組織委員会
戦争とめる国際連帯を
入管法改悪案を廃案へ
革共同入管闘争組織委員会
4月13日、入管法改悪案が衆議院本会議で審議入りした。2年前に国会を包囲する労働者人民の怒りの的となり廃案となった改悪案の再提出だ。絶対に許せない! すでに多くの人々が改悪案を絶対に阻止しようと動き始めている。岸田政権の暴挙に怒りを燃やし入管法改悪を阻止しよう。
入管に人が殺される
この日、斎藤健法務大臣は「保護すべき者を保護し、退去強制手続きを一層適切かつ実効的なものとする」と趣旨説明を行い、強制送還を拒む入管収容施設の被収容者、仮放免者らおよそ3千人を追放すると言い放った。
2021年3月6日、収容中の名古屋入管でスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん(当時33)が亡くなった。亡くなるまでの295時間(2月22日〜3月6日)を撮影した監視カメラ映像(ビデオ)が存在する。国はビデオの公開を拒み続けていたが昨年12月、およそ5時間分を名古屋地裁に証拠提出、2月には閲覧手続きをして視聴できるようになった。しかし、全面開示しない理由について、斎藤法相は「ウィシュマさんの名誉・尊厳を守るため」と繰り返した。この答弁にウィシュマさんの妹で国賠訴訟原告のワヨミさんは、「姉の尊厳を入管が考えてくれたら、姉が死ぬことはなかった」と怒りを語った。
原告弁護団は4月6日、ウィシュマさんのビデオの一部およそ5分間を報道機関に公開し、改悪案審議の前に見てほしいと訴えた。
そこには衰弱していくウィシュマさんの姿と、その病状をひたすら詐病と決めつけているのか、やけに張り切っている職員の姿が記録されている。バケツに吐き、「大丈夫じゃない、しんどい」「死ぬ」と訴えるウィシュマさんに「大丈夫死なないよ。あなたが死んだら困るもん。死ぬは絶対ない」と職員。ウィシュマさんは「早く救急車呼んで」「ゼッタイ死ぬ」「セーライン(点滴)を」と力をふり絞って訴える。
すでに2月15日の尿検査で「ケトン体+3」という結果が出ていた。ケトン体は、脂肪酸の分解産物で飢餓状態など糖質の利用障害が生じた場合に尿中に出てくる。体重は12㌔減少、飢餓状態という生死に関わる危機的な状態だったのだ。
このビデオ公開を斎藤法相は、訴訟進行中に「証拠を勝手に編集し公開した」と非難したが、「ビデオの編集よりも、姉が死に至るまで、どれだけ苦しんだか。死に至った原因を究明して対策するべきだ」とワヨミさんが指摘しているとおりだ。
斎藤法相が強調する「適正な出入国管理」とは何か。そのためなら在留資格がないというだけで司法手続きもなく身体を拘束・拘留するなど、法務省・出入国在留管理庁という行政機関が意のままに人間を扱っていいのか。絶対ノーだ。
難民を排除する日本
3月24日に入管庁が公表した2022年の難民認定者数は202人(難民認定者数は20年47人、21年74人)で過去最高となったが、難民不認定とされた人は1万人を超えている(1次審査・審査請求の合計)。昨年の難民申請者、3772人のうち約32%に当たる1202人が複数回申請者であり、うち3回以上は最多8回目を含む370人だった。難民認定率が極端に低い日本で粘り強く難民申請を繰り返すしかない実態がここにある。
現行法では難民申請中は強制送還できない(送還停止効)とされているが、改悪案では申請3回目からは、強制送還を可能にするというのだ。
難民認定者202人のうち147人(7割以上)がアフガニスタン出身者であり、100人以上が日本大使館の現地職員とその家族、JICA関係者とその家族だ。実は21年8月、タリバンによるカブール制圧に対し日本の大使館員らは大使館を閉鎖し軍用機で退去したが、大使館の現地職員とその家族などを置き去りにした。非常識な日本の対応に非難が集中した。
その後、来日した現地職員や家族に対し日本政府は中長期的滞在を前提とする支援も行わなかった。難民申請は、日本で生活するための最後の手段だった。
また、ミャンマー出身者は、昨年26人が難民認定されたが、同時に延べ2千人近くが不認定となっている。また「人道的配慮による在留許可」数は1682人だが、在留許可と引き換えに難民申請の取り下げを強要された人、就労時間が制限された人もいるなど、入管による恣意的な運用に批判が起きている。
そのミャンマーで4月11日、国軍が北西部ザガイン地域カンバル郡区の村を空爆し少なくとも174人が殺された。これは国軍クーデター以降、最大の虐殺事件だ。難民条約上の難民を「自国にいると迫害を受ける恐れがあるために他国に逃れる人々」だという日本政府の限定的解釈を適用すれば、在日ミャンマー人はすべて難民として受け入れるべきなのだ。しかも国際基準は、難民条約上の難民から「戦争や武力紛争から逃れてきた人」を排除していない。
入管庁は3月24日に「難民該当性判断の手引」なる文書を公表し「難民保護状況の改善に向けた施策」を示したが、入管法改悪案を押し通すため「難民鎖国=日本」という批判を交わそうという意図が透けて見えるものだ。入管庁は「認定範囲を広げるものではない」と断言している。
こんな国はいらない
なぜ今、入管法改悪なのか。岸田政権の大軍拡と戦争への突進と一体の攻撃だということだ。
1945年8月15日の日帝敗戦時、日本国内には約230万人の朝鮮人・中国人が存在した。彼らは日本帝国主義の侵略戦争と植民地支配、戦時下の強制連行・強制労働の当事者であり、日帝の戦争犯罪の被害者、目撃者だった。戦争被害者として謝罪・賠償を行い、国籍選択を含む戦後処理を行うべきだったが、日本政府は一方的に日本国籍をはく奪し治安管理に当たった。それが外国人登録法と出入国管理令(法律ではない!)による戦後入管体制だった。入管職員の多くが戦前の内務省、特高警察からの人事だ。「外国人は煮て食おうと焼いて食おうと自由」(1965年、法務官僚・池上勉)という植民地支配を引き継いだ差別・抑圧が今日も続いているのである。
そして今、安保3文書に基づき大軍拡・中国侵略戦争へひた走る岸田政権も、戦時下の治安管理、日本国内での反戦闘争、その主体としての日本人労働者と在日外国人労働者の分断を図ろうと入管法改悪の攻撃を仕掛けているのだ。
人を人として扱わない、在留資格を失っただけで殺されてしまう、こんな国はいらない。入管法改悪を許さない闘いは、入管を解体し、この国を変える闘いだ。私たち労働者階級を分断し、戦争へと動員しようとする攻撃を覆す闘いだ。世界の労働者と共に共通の敵を見据え、世界を変えるために闘おう! 2年前に廃案をかちとった地平から、入管法改悪案を再び廃案にするまで闘おう。