米帝がパイプライン爆破 ウクライナ戦争に乗じ破壊工作 米の著名ジャーナリストが暴露

週刊『前進』04頁(3290号03面03)(2023/04/17)


米帝がパイプライン爆破
 ウクライナ戦争に乗じ破壊工作
 米の著名ジャーナリストが暴露

経済インフラの破壊は戦争行為

 昨年9月26日、ロシアからバルト海を経てドイツに至る天然ガスの海底パイプライン、ノルドストリームとノルドストリーム2のガス管4本が損傷し、海上にガスが噴出した。これが人為的な爆破・破壊活動であることは明らかになっているが、誰が実行したのかは公式には不明のままだ。いずれにせよ生活に大きく影響する経済インフラを破壊することは犯罪である。欧州連合(EU)もこの破壊行為を厳しく非難した。
 こうしたなかで2月8日、米国のジャーナリスト、シーモア・ハーシュ氏が自身のブログに「アメリカはどのようにしてパイプラインを除去したのか?」という暴露記事を発表して大きな反響を呼んだ。
 その記事によれば、2021年末に米政権中枢がチームを作ってノルドストリーム破壊を決め、計画を練った。22年2月7日の米独首脳会談後の記者会見で、米大統領バイデンは得意げに「ロシアがウクライナに侵攻したらノルドストリーム2は存在しなくなる」とうそぶいた。独ショルツ首相はこの発言に抗議せず、独米関係の強化を確認した。そして6月の北大西洋条約機構(NATO)のバルト海共同演習「バルトップス23」の一環を装い、米海軍の潜水士が水深80㍍の海底にあるガスパイプに時限装置の付いたC4爆弾をとりつけ、遠隔操作で9月26日に爆発させた。破壊箇所はノルウェー海軍が潜水調査して選定した。
 情報源は、米政権の違法行為や汚い行為に批判的な当局者であるとハーシュ氏は言っている。政権の違法行為や戦争犯罪を見過ごすことができない内部者が幾人もいるのだ。
 ハーシュ氏は、ベトナム戦争におけるソンミ村虐殺事件やイラク戦争におけるアブグレイブ刑務所での拷問を暴露したことで有名だ。両事件とも今日では米政府・軍の犯罪行為であることが確定している。今回の暴露報道についてバイデン政権は「フィクションだ」と否定しているが、なんら具体的な反論も反証もできていない。アメリカ帝国主義による破壊工作であり、犯罪行為・戦争行為であることはもはや明白だ。
 帝国主義の盟主としての地位を失いつつある米帝は、ウクライナ戦争でロシアを弱体化させると同時に、独ロ融和策を修復不可能なまでに粉砕することで、ドイツ帝国主義の台頭を抑え込もうと必死になっている。対ソ対決・帝国主義間争闘戦の現代版だ。その暗黒で凶悪な性格があらわになったのがノルドストリーム爆破である。

米帝の対ロ対決対独争闘戦政策

 米帝はノルドストリームに強く反対してきた。ノルドストリームによる相対的に安価な天然ガスが独帝とロシアに利益をもたらし、米帝に対抗するものになるからである。石油や天然ガスのパイプラインによる独ソ(独ロ)の結びつきは、独帝のソ連東欧経済進出(オストポリティーク)以来続いてきたことだが、2005年に独ロが建設に合意し、11年に稼働を開始したノルドストリームは、東西統一の財政負担にあえぐ独帝を救い、独帝が欧州の盟主の地位を占める経済成長を遂げるにあたり決定的だった。
 ロシアは、ウクライナ戦争に伴う欧米の対ロシア経済制裁への対抗措置として、ノルドストリームを22年8月末に停止した。独帝もノルドストリーム2の稼働を延期することで米帝の制裁をかわしていた。しかし、ノルドストリームが物理的に破壊され、少なくとも数カ月は天然ガスの大量輸入ができなくなることは独帝にとって大打撃だ。
 独帝はこの米帝の破壊工作を容認し、3月7日には米独でそれぞれ偽報道をした。また、ロシアの数倍も高い米国産液化天然ガス(LNG)をターミナル港に浮体基地を急造して輸入・貯蔵している。独企業は原料やエネルギー源としてのガスの価格高騰で次々と倒産や生産縮小に追い込まれている。インフレ・物価高騰が人民大衆の生活を脅かしている。独ショルツ政権は、それを承知で米帝のノルドストリーム爆破を不問に付し、独ロ関係を断絶し、米帝・NATOのウクライナ戦争に加わって武器を送り続け、軍事費倍増など自らの軍事大国化・戦争国家化を図っている。
 このようなショルツ政権にドイツの労働者階級人民の怒りが爆発している。ウクライナ反戦闘争は広範な規模で実力闘争として闘われ、ショルツは危機に立たされている。独帝の動員なくして米帝のウクライナ戦争―中国侵略戦争もありえない。自国政府の戦争を内乱に転化する、労働者国際連帯の闘いに立ち上がろう。
(藤沢明彦)

このエントリーをはてなブックマークに追加