杉並 「性の多様性」条例反対 洞口区議の訴えに熱烈な支持
杉並
「性の多様性」条例反対
洞口区議の訴えに熱烈な支持
3月14日の杉並区議会予算特別委員会で、洞口朋子区議が意見開陳を行った。
洞口区議は、自衛官募集業務をはじめ自治体の戦争協力の一切を区として拒否するよう求め、特に対象者を抽出した名簿(21歳及び18歳の男女、15歳の男性)を自衛隊に閲覧させていることに抗議、ただちにやめるべきと訴えた。また、福島第一原発汚染水について「飲んでも大丈夫」などと教え込む復興庁のチラシに抗議し、区立学校での配布中止と回収を求めた。
さらに洞口区議は、岸本聡子区長が提案し、日本共産党などが賛成する「性の多様性が尊重される地域社会を実現するための取組の推進に関する条例案」に反対意見を述べた。同条例案は区の掲げる「性の多様性が尊重される地域社会」の実現への協力を事業者に義務付けることを含み、現実には更衣室やトイレなど男女別が原則であった空間や女性専用スペースを「共用化」という形で破壊し、歴史的にかちとってきた女性の権利を奪うことに直結する。洞口区議がそうした問題性を鋭く指摘し、条例制定を中止するよう求めたことに、女性をはじめ多くの区民から「よく言ってくれた」と熱烈な支持・共感の声が続々と寄せられている。意見開陳のうち同条例案に関する部分を一部抜粋して紹介します。(編集局)
条例は女性の権利を破壊
反対は「トランス差別」ではない
私は予算特別委員会で条例に反対の立場から質問を行いましたが、区からは明確な回答は得られませんでした。条例への不安がさらに高まったという区民、とりわけ女性からの声が多く寄せられています。
歴史的には男女雇用機会均等法、男女共同参画社会基本法などが、「男女平等」をうたいながら、実際には女性がかちとってきた保護規定を取り払い、女性を無権利の非正規雇用労働者とし、結局は女性に賃労働と家内ケア労働の両方を押し付ける結果となりました。女性の権利を守る明確な施策と運動がなければ、「性の多様性」「ジェンダー平等」は必ず同じ方向に作用します。つまり女性の権利破壊を軸に、性的マイノリティと男性も含めた権利破壊につながります。
戦争突入情勢の中、米軍は黒人、女性、同性愛者、トランスジェンダーの差別撤廃を掲げながら徴兵を強化し、イスラエルの「ピンクウォッシュ」も「性の多様性」をパレスチナ攻撃に悪用しています。性的マイノリティの差別・抑圧からの解放も、戦争反対を決定的要素として貫かなくては実現しえないテーマです。
性差別の現実見よ
条例の具体的問題点は、「トランスジェンダーの権利」と「女性の権利」の衝突が起きた場合、区がどう対処するのかまったく明らかにしない・できない点です。これは現実には女性スペースをはじめ女性の性的保護を破壊し、女性をより容易に性被害にさらしていくものです。
私が条例反対の姿勢を示して以降、予想通り、私のみならず私の意見に賛同する区民や女性に対してまで、SNS上で「トランス差別者」などの罵声(ばせい)が浴びせられ、女性があたかも特権にあぐらをかく抑圧者・加害者・強者であるかのように描く転倒した論調が横行しています。条例は可決前から〝条例案を批判する者は差別者〟という対立・抑圧を生み出す原因となっているのです。
女性が差別や性暴力から身を守るために歴史的にかちとってきた女性スペースをはじめとする諸権利は、女性がもともと持っている「特権」では断じてなく、むしろそれは性差別・性暴力が今なお厳然と存在している現実の証明です。それを前提としない「性の多様性の尊重」は欺瞞(ぎまん)です。また、条例への区民とりわけ女性の不安や恐怖心は、個人の差別心や無知ではなく女性差別の現実に基づくものです。条例への不安・不満は「トランス差別」ではありません。
階級社会の変革を
条例の核心的問題点は、私有財産制度を経済的基礎とする家族制度の中で、女性が「産む性」であるがゆえに「子産み道具」「家内奴隷」として抑圧され、性暴力や差別にさらされてきた歴史と現実を踏まえていないことです。また、女性差別と同じ物質的基礎を持って、家族制度・イデオロギーにそぐわない人々への差別・抑圧・排除と性的マイノリティへの差別は生み出されてきました。トランスジェンダーの人々も、家族制度の中で「女性、男性に要求される生殖機能」を果たさず、「資本の求める性規範」に適合しないがゆえに差別の対象とされています。
条例は、表層的「改善」や啓発運動で社会的差別がなくなるかのような幻想を描いていますが、性的差別・抑圧からの解放のためには、人間が人間を搾取するこの階級社会をラジカルに変革することが必要です。そこへの具体的変革の方策として、私は権利の拡大としてのパートナーシップ制度、同性婚、夫婦別姓に賛成であり、家父長的家族制度・イデオロギー、戸籍制度、天皇制を廃止するために闘います。
区は、区民とりわけ女性からの不安の声に真摯(しんし)に耳を傾けて条例制定を中止するよう訴え、私の意見開陳を終わります。
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▼ピンクウォッシュ イスラエル政府は、ピンクをシンボルカラーに「同性愛に寛容なイスラエル」を宣伝し、パレスチナ人民への暴力・抑圧・虐殺を覆い隠して、あたかもイスラエルが「同性愛に非寛容なイスラム圏」よりも「人権先進国」であるかのように描くペテン的なイメージ戦略を展開。これを「ピンクウォッシュ」と呼び弾劾する声が世界中で上がっている。