技能実習生リンさんは無罪だ 「死体遺棄罪」めぐり最高裁弁論へ

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週刊『前進』04頁(3279号04面03)(2023/01/30)


技能実習生リンさんは無罪だ
 「死体遺棄罪」めぐり最高裁弁論へ


 2020年に孤立出産で双子を死産し死体遺棄罪で起訴されたベトナム人技能実習生レー・ティ・トゥイ・リンさんの上告審で、最高裁第二小法廷が2月24日に弁論を開く。
 リンさんは18年8月に技能実習生として来日し、熊本県内のミカン農家で働いていた。妊娠がわかったが、「妊娠したことが雇用主や監理団体に知られたら、強制的にベトナムに送り返される」と思い、誰にも打ち明けられなかった。来日前に送り出し機関やブローカーに請求された出国費用の分の借金が150万円もあった。
 妊娠8カ月の20年11月15日、自室で孤立出産。男の子の双子は死産だった。当時リンさんは21歳、「動揺して頭が真っ白になった」という。それでも遺体をタオルで包み、2人に名前をつけて「ごめんね」「安らかに」などと記した便せんを添えて段ボール箱に二重に入れ、テープで封をして棚の上に安置した。
 そして翌日、連れていかれた病院で通報され、入院後の19日に逮捕された。
 罪名は刑法190条「死体遺棄罪」。「死者に対する国民の敬虔(けいけん)感情」を害する行為を罰するというものだ。リンさんの精いっぱいの弔いが罪に問われ、日本の「社会秩序を乱した」というのだ。
 一審熊本地裁は、死産直後の厳しい状態にあったことは認めながら、「まわりの人に助力を求めることはできたはず」だとして懲役8カ月(執行猶予3年)の有罪判決。続く福岡高裁は「放置したわけではない」と一審判決を破棄したが、箱に納めた行為が「隠匿」に当たるとして懲役3カ月(執行猶予2年)の有罪判決を下し、無罪を主張するリンさんは上告した。
 技能実習生が「恋愛禁止条項」が盛り込まれた雇用契約書に何の説明もなくサインさせられるなど、まさに「現代の奴隷制度」としての技能実習制度は、すでに国際社会からも弾劾されている。技能実習生をはじめとした外国人労働者は、恋愛も妊娠もする人間ではないとでも言うのか! 期間を定めた安価な労働力として、人権侵害の限りを尽くす外国人技能実習制度など廃止あるのみだ。
 同時に、日本社会で孤立出産に追い込まれた10代、20代の女性たちが「死体遺棄罪」に問われる刑事事件も後を絶たない。「私は絶対に双子の遺体を捨てたり、隠したりしていません。無罪です」と立ち上がったリンさんの勇気ある闘いは、技能実習制度とともに、女性の妊娠・出産をめぐる日本社会の現実を告発している。リンさんの無罪判決をかちとろう!
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