米CSISが「中国の台湾侵攻」シミュレート 中国侵略をリアルに想定し日帝の大軍拡と参戦を要求
週刊『前進』04頁(3278号03面02)(2023/01/23)
米CSISが「中国の台湾侵攻」シミュレート
中国侵略をリアルに想定し日帝の大軍拡と参戦を要求
(写真 米CSISが公表した報告書の表紙。タイトルは「次なる戦争の最初の戦闘」)
アメリカのシンクタンクである戦略国際問題研究所(CSIS)が1月9日、中国軍が2026年に上陸作戦で台湾を侵攻したという想定のもと計24パターン実施した机上演習の結果を公表した。165㌻にわたる報告書の狙いは、1月11日の日米2プラス2、そして13日の日米首脳会談を前に公表されたことからも明らかだ。それは、中国侵略戦争遂行の「要」をなす日本のさらなる軍拡と、それを前提とした日米同盟のさらなる強化=むき出しの戦争同盟化である。米日帝国主義の中国侵略戦争を絶対に阻止するために、敵の狙いを鮮明にさせたい。
世界戦争級の戦争を準備
歴代政権に安保政策を提言してきたCSISは、単なる民間のシンクタンクではない。多くの研究員を時の政権の要職へ送り込み、政府からも元高官を迎え入れてきた。とりわけバイデン政権はCSISのメンバーを軸として形成されており、国防副長官のキャスリーン・ヒックスはCSIS副所長として東アジア戦略を担当してきた人物だ。今回結果が公表された演習にも、米軍の退役将軍や海軍士官、元国防総省当局者らが参加した。報告書の概要は序文に凝縮されている。そこでは、演習において「ほとんどのシナリオでは米国・台湾・日本が中国を打ち負かし、台湾の自治を維持する」結果となったが、「米国とその同盟国は、数十隻の船、数百機の航空機、および数万人の兵士を失った。台湾の経済は荒廃し、多大な損失により世界における米国の地位が長年にわたって損なわれた」とする。そして「勝利だけでは不十分であり、米国は直ちに抑止力を強化する必要がある」と結論づける。今回の報告書を通して、米中開戦をめぐる「大衆的な議論を促したい」とする展開もある。
報告書のタイトルは「次なる戦争の最初の戦闘」だ。本文では「中国との戦争は第2次大戦後に米国が経験してきた地域紛争や対ゲリラ戦争とは根本的に異なり、近年にない死傷者が出る」と強調する。米帝はウクライナ戦争をもその一部とする世界戦争として中国に対する戦争を構えているのだ。そのためにさらなる軍拡、とりわけ日本の自衛隊の侵略軍隊化が喫緊の課題であるとして日帝に中国侵略戦争体制の構築を迫り、日米労働者民衆の反戦運動をたたきつぶすことこそが米帝の狙いだ。
作戦拠点は在日米軍基地
「台湾有事」とは、米日帝国主義による中国侵略戦争以外の何ものでもない。報告書を全編にわたって貫く核心問題は、日帝・自衛隊をこの中国侵略戦争に全面的に関与させることだ。冒頭では「成功のための諸条件」として、①台湾軍が戦線を維持すること、②米軍が直接戦闘に参加しない「ウクライナモデル」は通用しないこと、③米国が在日米軍基地を戦闘作戦のために使用すること、④米国が中国の防衛圏の外から迅速かつ大量に中国艦隊を攻撃することを挙げる。
うち②は「戦時には……米軍が実際の戦闘に参加する」よう提言している。米軍が直接に中国と交戦するという重大な確認であり、米帝が世界戦争として対中戦争を構えていることを如実に示すものだ。
③については、日本との外交的・軍事的結びつきの強化を提言。他の同盟国も重要であり一定の役割を果たしうるが、「日本こそが要である。在日米軍基地の使用なしには、米軍の戦闘機・攻撃機がこの戦争に効果的な形で参加することはできない」とする。机上演習では実際に、米軍が嘉手納、岩国、横田、三沢の各基地から作戦を展開し、これらの基地が攻撃されることを想定している。
本文では「主要な戦闘者 中国・台湾・米国・日本」という見出しで、「台湾有事」に際して政府与党が直ちに緊急事態宣言を発し、自衛隊が即座に参戦することを想定。机上演習では、ノルマンディー上陸作戦やフォークランド戦争と並んで沖縄戦も参考とされた。中国侵略戦争に際し、沖縄戦の地獄を繰り返すということだ。
米日帝の中国侵略阻もう
在沖米軍トップで対中戦争の主軸を担う第3海兵遠征軍司令官のジェームズ・ビアマン中将は、「米国とアジアの同盟国は中国の台湾進攻シナリオなどを視野に入れ、西側諸国がウクライナによるロシアへの抵抗を可能にした土台づくりをまねようとしている」(1月9日付英フィナンシャル・タイムズ)と語っている。「2014〜15年のロシアの軍事侵攻後、米欧がウクライナ軍に軍事訓練を施し、補給品を配備し、支援拠点を特定してきたからこそ、あれだけの成功を得られた」のであり、現在日本やフィリピンなどでも同様の「舞台づくり」をしているとも語った。沖縄をはじめとする南西諸島、そして台湾が米日帝による中国侵略戦争の「舞台」とされつつあるのだ。報告書は、嘉手納基地の「滑走路の両脇には日米の機体の残骸が並び、基地の病院に収容された負傷者は数百人に上る。多数の死者に対応するため仮設の墓地も作られる」という生々しい表現をあえてとる。
そして「1日当たりの死者140人はベトナム戦争での30人、アフガニスタン戦争での3人に比べて格段に多く、第2次大戦当時の300人に迫る」「米軍の死傷者と行方不明者は1万人近くに上り、米海軍は空母2隻、駆逐艦や巡洋艦など20隻を失う。空軍は軍用機168〜372機を失う」と算出する。
しかしCSIS=米帝が求めているのは、このような凄惨(せいさん)な戦争を止めることでも、犠牲を最小化することでもない。報告書はむしろ「重大な死傷者に直面しても作戦を継続する必要性を認識せよ」と明記している。南西諸島が血みどろの戦場となり、膨大な数の住民が命を落とすことも承知の上で、あくまで侵略戦争を貫徹し、中国を打ち負かすことを求めているのだ。
三里塚闘争の継続が戦争とめる力に
報告書の全編を貫く激しい危機感と焦り、「多大な犠牲を払ってでも祖国を守り抜け」という労働者階級へのむき出しの恫喝は、米帝の危機の深さの表れだ。7章の「提言」では、軍用機をミサイル攻撃から守るためには駐機場の拡張や格納庫のシェルター化と並んで「米日が民間の国際空港を利用できるように動く必要がある」が、「地元の政治的反対が平時において日本の民間空港の使用を阻害する可能性があり、戦時にもそうなりうる」としている。三里塚・市東孝雄さんの農地に対する強制執行攻撃の本質はここにある。
成田軍事空港絶対反対を貫く三里塚闘争、沖縄をはじめ全国各地での反戦・反基地闘争こそ、米日帝国主義の中国侵略戦争を内乱へと転化する力となる。
G7(主要7カ国)議長として帝国主義戦争を推進する岸田政権を倒し、中国侵略戦争を絶対に阻止しよう。大軍拡・戦争国会粉砕の1〜3月決戦に立とう!