大軍拡・戦争予算粉砕を 防衛費・基金合わせ10兆円規模 「戦時財政」への全面転換狙う
週刊『前進』04頁(3276号03面02)(2023/01/09)
大軍拡・戦争予算粉砕を
防衛費・基金合わせ10兆円規模
「戦時財政」への全面転換狙う
岸田政権は昨年12月23日、すでに閣議決定した安保3文書に基づき、中国侵略戦争に向けた戦後史上空前の大軍拡を強行するための2023年度当初予算案を閣議決定した。「5年で43兆円規模」とされる大軍拡予算の初年度として、米軍再編経費などを含む「防衛費」は6兆8219億円となった。防衛費の増額は11年連続となるが、これまでの増額幅が前年度比1%前後だったのに対し、今回は実に前年度比26・3%増、金額で見れば過去30年の増額幅の合計約1兆円を1年で大きく上回る1兆4214億円増となった。文字通りけた違いだ。これに今回新たに設置された「防衛力強化資金」への繰り入れ金3兆3806億円を含めると10・2兆円に達し、11年連続で過去最大を更新した歳出総額約114兆円の1割近くにもなる。
医療の崩壊を促進国債で艦船建造も
防衛力強化資金は、24年度以降の複数年度にわたって軍事費として使えるものとされ、特別会計の剰余金などがここに繰り入れられる。厚生労働省が所管する国立病院機構と地域医療機能推進機構の積立金のうち746億円(地域医療の拡充や設備更新に充てることが想定されていたもの)を前倒しで国庫に返納させ、防衛財源に充てることが昨年12月に決まっていたが、今回の予算案が医療崩壊を促進することは不可避だ。このほか国有資産の売却益などの税外収入を基金化して「防衛力強化の財源」にするという。他の省庁の予算や積立金などを軍事費に回すこと自体が異例中の異例だ。社会保障を解体し、地域の医療や教育、鉄道などの社会インフラを徹底的に破壊してでもなりふり構わず戦争のための金を確保するという、文字通りの戦時財政化が転換的に進められようとしているのだ。さらに、財政法第4条第1項の但し書きで「公共事業費、出資金及び貸付金」に限り例外的に歳出財源としての発行を認めたいわゆる「建設国債」を、護衛艦や潜水艦の建造の財源にする「禁じ手」にも手を染め、4343億円がこれに充てられる。建設国債をもって軍事費をまかなうのは言うまでもなく戦後初であり、「戦時国債」そのものだ。この意味でも歴史的転換となる。
南西諸島の自衛隊配備を大幅に増強
軍事費の内訳を見ると、スタンド・オフ防衛能力=長射程ミサイル保有に約1兆4千億円、うち米国製巡航ミサイル「トマホーク」の取得費に2113億円を計上し、さらに国産長射程ミサイルなどの研究開発費は8968億円と前年度比3・1倍となった。これには射程3千㌔級の極超音速ミサイルの開発も含む。さらに目立って大幅増額となったのが「継戦能力」の必要経費で、火薬庫増設など弾薬取得費に前年度比3・3倍の8283億円の予算が計上された。安保3文書決定をふまえ、もはや単なる軍事費の量的増大にとどまらず、実際に中国と戦争をすることを前提とした「戦争遂行予算」としての質的転換が一気に進められようとしているのだ。
加えて重大なことは、台湾から東にわずか110㌔の位置にある与那国島の陸上自衛隊与那国駐屯地の拡張に向けた用地取得費用が計上されたことだ。すでに防衛省は与那国駐屯地に新たに地対空誘導弾部隊を配備する方針を固めており、新ミサイル部隊のための基地拡張計画であることは明白だ。さらに陸自那覇駐屯地を拠点とする第15旅団の師団化、与那国島への電子戦部隊の新たな配備、うるま市の陸自勝連分屯地での地対艦ミサイル連隊本部発足の関連費用、宮古島・石垣島の陸自施設の整備予算なども盛り込まれた。南西諸島に部隊を素早く輸送する目的で陸海空の輸送力を強化する「機動展開能力強化費用」には、2696億円が計上された。
岸田はこの予算を、野党の屈服・翼賛勢力化に助けられて今通常国会で成立させようとしている。戦争絶対反対の巨万の怒りで〝戦争国会〟を包囲し、大軍拡予算を絶対に粉砕しよう。