国鉄解雇撤回裁判は真の山場 原告本人の尋問を押し込む
国鉄解雇撤回裁判は真の山場
原告本人の尋問を押し込む
国鉄1047名の解雇撤回を否定した中央労働委員会の反動命令の取り消しを求めて動労総連合が起こした裁判の第12回口頭弁論が12月23日、東京地裁民事第11部(前沢達朗裁判長)で行われた。
前回裁判で原告代理人弁護団は、解雇を首謀し実行した井手正敬(元JR西日本会長)と深沢祐二(現JR東日本社長)、JR設立委員だった横路孝弘(元北海道知事)の証人尋問を求めていた。また、動労総連合の田中康宏委員長と被解雇者の原告本人の尋問を申請した。今回の裁判は、証人尋問を認めさせるか否かが最大の焦点だった。結論として裁判長は、田中委員長と原告数人の尋問を認め、井手、深沢、横路の証人採用は留保するとした。これまでにない傍聴結集の力が、結審もありうる緊迫した状況を打ち破った。
法廷で原告代理人弁護団は、動労総連合組合員をJRから排除するために作られた「不採用基準」の策定経過について、「認否の必要を認めない」と言い張る中労委に対し、「事実を争わないということか」と問いただした。中労委は「積極的には争わない」と答え、裁判長も「事実関係が問題になると裁判所が判断した場合、中労委は争っていない状態と理解する」と明言した。
不採用基準は1987年2月2日、井手がJR設立委員長だった斎藤英四郎(当時、経団連会長)と直談判し、その指示のもとに作られた。これにより当初はJR採用候補者名簿に載せられていた動労総連合組合員の名前が削除され、JR不採用とされた。中労委がこの事実から目をそらすのは、それを認めればJRの不当労働行為を認定せざるをえないからだ。だが、事実がなかったとも中労委は言えない。
原告代理人はまた、井手、深沢らの証人尋問を強く求めた。不採用基準を作った井手は、分割・民営化を最も強硬に推し進めた国鉄官僚の唯一の生き残りだ。その証人尋問は事実の解明にとって不可欠だ。
深沢は国鉄職員局次長だった葛西敬之(元JR東海会長)の部下として、組合員の名前を名簿から削る実務に携わった。JR東日本社長の深沢は、不当労働行為を現にしている張本人でもある。不採用基準による解雇は無効であり、JRには原告を採用する義務がある。中労委は「時効」を盾にJRを免罪するが、採用拒否という形でJRの不当労働行為は今も続いている。この事実を明らかにするためにも、深沢の尋問は必要だ。
これに対し裁判長は、田中委員長と原告のうち1人を尋問すると言ってきた。原告側は複数の原告の尋問を求め、結論は進行協議にゆだねられた。裁判長はまた、井手、深沢らの証人採用については留保するとした。次回期日は未定。
署名を広げ井手と深沢ひきずり出せ
裁判に先立ち、国鉄闘争全国運動は解雇撤回判決を求める署名947筆を東京地裁に提出し、累計の署名は1万1343筆になった。
裁判後に弁護士会館で行われた総括集会は、結審策動を打ち破って裁判を継続させたことにより確保された時間を活用し、署名をはじめとした運動をさらに広げ、井手、深沢らの証人尋問を何としても実現すると確認した。