米中間選挙の核心は戦争 挙国一致へ動く支配階級 闘う労働組合が存在感示す
週刊『前進』04頁(3271号02面03)(2022/11/28)
米中間選挙の核心は戦争
挙国一致へ動く支配階級
闘う労働組合が存在感示す
11月8日に行われたアメリカの中間選挙は、米帝国主義がウクライナ戦争の激化と中国侵略戦争―世界戦争に突き進む中、戦争への支配階級の「挙国一致」体制をつくり出すものとなった。だが国内階級支配の危機も一層深まり、階級闘争は重大段階を迎えた。
民主・共和両党が戦争政策を支持
中間選挙の結果は事前の予測とは違い、与党議席の大幅減とはならず、上院は民主党が過半数を確保し、下院は共和党が過半数となったが小差だった。この結果を「民主主義の勝利」のように描き出すのは違う。問題の核心は戦争だ。バイデンの支持率は7月に35%まで下がっている。ウクライナ戦争・コロナ・インフレ生活苦への大衆の怒りは激しい。にもかかわらず共和党が票を伸ばせなかったのは、資本家階級の大勢がバイデン支持に回った結果だ。従来共和党寄りだったメディアも含めて必死にバイデンを支持する報道をしてきた。バイデンが開始した戦争に自らの延命をかけた米帝支配階級が、挙国一致の戦争翼賛体制形成に全力で動いたのだ。
だからこそ、戦争を選挙の争点にすることは徹底的に避けられた。2001年のアフガニスタン戦争、03年のイラク戦争開戦時には、極少数とはいえ民主党内からの反対票があったが、現在はゼロだ。口先だけの戦争反対派さえ一人も登場しない選挙となった。
世界戦争・核戦争へと突き進む米帝
だが、現政権が盤石で強固な支配を確立できたわけではない。現実は正反対だ。この選挙は2年前のトランプ支持派の連邦議会襲撃事件の延長であり、投票日直前の10月末にはペロシ下院議長宅が襲撃される内乱的激突となった。トランプ個人がどうなろうと、この衝突は選挙後もますます激化する。この激突はそれ自体、米帝の世界戦争・核戦争への突進と国内での階級戦争をさらにエスカレートさせるものになる。バイデン政権は労働者階級に対し「学費ローン免除」「高齢者年金の増額」などを公約したが、共和党が下院で多数をとったことを利用してこれをほごにし、一切を世界戦争のために注ぎ込もうとしている。バイデンは「アルマゲドン」(破滅的な世界破壊)がありうると叫びつつ、ウクライナの戦場のすぐ近くで核爆弾投下演習を行った。国家安全保障戦略で中国主敵論を打ち出し、沖縄などへの中距離ミサイル配備を進め、核先制使用に向かっている。極右に制圧された共和党は、対ロシアのウクライナ戦争より対中国の戦争にもっと集中しろと主張し、民主党をたたき、それがバイデン政権の戦争エスカレーションをさらに加速させる。こうして2大政党は互いに激突しつつ帝国主義の利害を貫くのだ。
労働組合の組織力で住民投票に勝利
しかし労働者階級人民の中には戦争への根強い反対の声があり、支配階級への怒りはますます高まっている。労働組合への支持率は71%(8月末調査)で60年ぶりの高さだ。それは、戦闘的・階級的労働運動が極右勢力と実力対決して勝利してきたからだ。だからこそバイデン政権は、選挙結果の大勢が判明するや直ちに演説し、「民主・共和両党の協力」を強調したのだ。階級闘争を制圧するための支配階級の結束の呼びかけだ。
だが中間選挙で示された階級支配の崩壊的危機は、そんなことでは修復できない。それを示すのが中間選挙と同時に行われた多くの住民投票だ。その投票率は議会選挙より高かった。
保守基盤が強いケンタッキー州では妊娠中絶の禁止を州憲法にまで書き込むという改憲投票が行われた。中絶禁止は白色テロ集団・米極右の結集軸として推進されてきた。これに対する猛烈な反撃戦の結果、反対票が52%を占め、押し返した。その他の州でも中絶禁止反対派が勝利した。
同じく右翼の地盤であるサウスダコタ州では、メディケア(低所得者への医療扶助)の拡大が56%の支持で勝利した。多くの州の住民投票で最低賃金の引き上げ案が通った。巨額の資金が動く議会選挙と違って、住民投票は労働者人民の地道な個別訪問などの活動で票を積み上げるしかない。闘う労働組合の組織力が勝利を支えたのだ。
住民投票の勝利の結果に示された戦闘的労働組合の大前進、新たな労働組合の結成、ストの大波は、世界戦争・核戦争と闘う不可欠の基盤だ。そしてその勝利のためには、プロレタリア革命のための目的意識的な闘いが不可欠になる。
11月集会で発言したスティーブ・ゼルツァー氏とともに日韓米の国際連帯を築いてきた国際港湾倉庫労組(ILWU)の仲間たちが、動労千葉の「新・戦争協力拒否宣言」と一致した闘いを組合の内外で組織し始めている。この国際連帯をさらに強めよう。