自衛隊に青年情報を無断提供 自治体が違法な募兵協力 「赤紙(召集令状)」を配るな
週刊『前進』04頁(3270号03面02)(2022/11/21)
自衛隊に青年情報を無断提供
自治体が違法な募兵協力
「赤紙(召集令状)」を配るな
全国1741の市区町村のうち、昨年度は962の自治体が、住民の知らぬ間に防衛省の自衛官募集業務に関与。勧誘の対象として18歳、22歳を迎える男女の個人情報(氏名・住所・生年月日・性別)を無断で自衛隊に提供している事実が明らかになり、大問題になっている。憲法と地方自治、住民基本台帳法、個人情報保護法・個人情報保護条例に違反する行政当局の重大な犯罪行為である。
米日帝国主義の中国侵略戦争が現実になる中で、自治体が戦争遂行のための募兵業務への直接関与を始めたという許しがたい事態だ。そもそも自衛隊自体が違憲の存在である。戦後、「二度と赤紙(召集令状)を配らない」と誓った自治体労働者・労働組合の戦争動員拒否の闘いを先頭に、地域住民と一体となった怒りで違法な情報提供を中止させよう。実質改憲と戦争国家化を阻止しよう。
住民名簿を「提供」宛名シール印刷も
自衛官募集をめぐっては2019年2月、当時の首相・安倍が「6割以上の自治体から協力を得られていない」「憲法にしっかりと自衛隊と明記して違憲論争に終止符を打とう」と発言。21年2月、防衛省と総務省は市区町村に「募集業務に関する資料の提出」を求める通知を発出し、それまでの住民名簿の「閲覧」から「提供」に切り替える自治体が続出している。判明しているだけでも神奈川県横浜市や相模原市、京都市、岡山市などでは、自衛隊が勧誘の手紙を送る宛名シールを印刷して渡すことまでしている。神奈川県横須賀市や川崎市、静岡市なども名簿を提供し、東京都板橋区などでは提供年齢を22歳から18歳まで拡大することを公然とHPに掲載している。自治体当局・職員による事実上の募兵業務への踏み切りだ。
貧困層を誘導する「経済的徴兵制」だ
戦争が現実のものとして迫る中で、自衛官への応募者が激減。募集対象の18~26歳を32歳まで引き上げたが、2012年度に約11万5千人だった応募者数は、21年度は約8万5千人に。「ロシアのウクライナ侵攻で我が子を自衛隊に入れたくない親世代が増えた」とこぼす自衛官もいるという。当然のことだ。定年年齢を引き上げ再任用枠も広げたが、自衛官不足が自衛隊を締め上げている。この危機的状況下で政府は自治体に協力を迫り、地方自治の原則すら踏みにじって違法行為を強いる事態が広がっている。
中には生活保護世帯・住民税非課税世帯の青年の情報を自衛隊に提供し、学校での勧誘や戸別訪問に手を貸す自治体まで出ている。貧困が広がる中での社会保障費削減と一体で、自衛官応募に誘導する「経済的徴兵制」が始まっているのだ。
さらに来年にはマイナンバー法を大改悪し、住民の診療情報と健康状態、運転免許、医師・看護師などの資格、所得・資産情報などあらゆる個人情報をひも付け、国家の掌握下に置くことが画策されている。徴兵・徴用(戦時動員)の土台となる大攻撃だ。
戦争動員拒否する労組・地域の闘い
しかし各地で住民訴訟が起こり、闘うことで情報提供を中止に追い込んだ勝利も多数出ている。沖縄県名護市は9月、ヘリ基地反対協議会の抗議申し入れを受けて、21年度からの名簿提供を中止し23年度から閲覧に変更すると回答した。強制ではない、法的根拠がないとして応じない自治体も多い。鬼頭宏・上智大名誉教授(歴史人口学)は「自衛官が自由応募である限り、情報の閲覧は制限されるべきだ」と指摘する。自衛隊による閲覧自体をやめさせるべきだ。
一つひとつが職場・地域から戦争を拒否し戦争国家化を阻止する闘いだ。圧倒的な正義の闘いとして東京五輪反対、安倍国葬粉砕を闘った労働組合、改憲・戦争阻止!大行進の闘いを先頭に、自治体の募兵協力・戦争動員を粉砕しよう。