「はじめての防衛白書」撤回を 「働く自衛官の声」の取材に中高生を動員 国防教育と募兵活動を許すな

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週刊『前進』04頁(3268号03面02)(2022/11/07)


「はじめての防衛白書」撤回を
 「働く自衛官の声」の取材に中高生を動員
 国防教育と募兵活動を許すな


 防衛省が7月、2022年版防衛白書に併せて、小学校高学年以上を対象にした「はじめての防衛白書~まるわかり!日本の防衛~」第2版を発行した。中国侵略戦争に動員するための国防教育と募兵活動を推し進めるものだ。とくに今回、中高生を取材記者として作成に関わらせ、戦争協力へと踏み込ませたことは重大だ。徹底弾劾し、「はじめての防衛白書」の副読本化を許さず、撤回させよう。

国家主義を教え込む

 第2版の特徴は、中国との争闘戦に打ち勝つ戦争国家体制をつくるために、大軍拡を扇動している点だ。
 冒頭の章では、第1版と同様に「日本を攻めることを思いとどまらせる力を『抑止力』といいます」と、他国を圧倒する軍事力をもたなければならないと強調している。
 続く「日本の周りの安全保障環境」の章では、米中激突の激化を新たに確認し、「中国は速いペースで国防費を増加させている」「日本の固有の領土である尖閣諸島周辺で活動を活性化させている」「中国はルールに基づく行動が求められている」と台湾情勢にも言及しつつ、前回を超えるトーンで中国を居丈高に非難。そして「防衛関係費」の章で「防衛力を強化するスピードを速める必要がある」「1人あたりの国防費は、日本はほかの国より低水準」だとし、大軍拡へ誘導する。
 だが、これらは大ペテンだ。何よりも米帝が中国侵略戦争をしかけ、日帝が参戦しようとしている核心的事実を隠し、中国スターリン主義などの反人民的な軍事的対抗のみを焦点化している。「尖閣諸島」も、日帝が日清戦争の過程で窃取したものだ。軍事費も、日帝は世界第9位(ストックホルム国際平和研究所調べ)の軍事大国である。
 他の章でも、違憲の自衛隊を合憲と強弁し、核共有や敵基地攻撃能力の議論をよそに「非核三原則をかたく守っている」「専守防衛を貫いている」とウソを並べている。
 そして今回、「先端技術を活かした新たな挑戦の時代へ」という経済安保の章を新たに設け、軍事研究・開発を「日本全体として取り組むことがますます重要」だと国家総動員を打ち出したのだ。
 核戦争・世界戦争の切迫に対し、戦争を絶対に繰り返させないことが労働者民衆の立場だ。だが「はじめての防衛白書」にはその立場は皆無。むしろ、労働者民衆が国家の犠牲になるのは当然だと、子どもたちに国家主義・排外主義を無批判に教え込み、中国侵略戦争に駆り立てる。
 しかし、こんな戦争教育を教育労働者は断じて許すわけがない。脈々と継承された平和教育をつぶす攻撃との闘いはこれからだ。

侵略軍隊化と性暴力

 第2版のいまひとつの特徴は、広島を始めとする反対運動で第1版が全く普及しない中で、防衛省が中高生を動員して国防教育と募兵活動を推進しようとしていることだ。
 第2版では、「中高生に親しみを感じてもらうため、中高生の感想を取り入れるなど『一緒に作る』形を取り入れています」として、随所に中高生の疑問に応える箇所を挿入している。全34㌻中8㌻を割いた「働く自衛官の声」の章では、中高生が陸海空自と防衛大を取材した記事を掲載した。自衛隊の欠員は21年3月末で1万4645人。自治体の自衛隊への住民名簿提供とも一体で、防衛省は募兵活動に必死なのである。
 許し難いのが、防衛省が女子中学生に「かっこよくて憧れる女性自衛隊員」と紹介させていることだ。いま元女性自衛官が隊内にはびこる性暴力を命がけで告発している。日本軍軍隊慰安婦制度の歴史が示すように、侵略軍隊と性暴力は本質的に一体だ。自衛隊の侵略軍隊化が隊内の性暴力を激化させた。戦争の実相を隠ぺいし、女性を戦争動員するなど絶対に許せない。

副読本化を阻もう

 「教え子を再び戦場に送らない」闘いが今こそ必要だ。
 「はじめての防衛白書」初版を企画した自民党・松川るい参院議員が「多くの学校で副読本にしてもらいたい」とツイートしたように、副読本化も狙われている。また文部科学省が8月、公立・学校図書館に北朝鮮拉致問題に関する図書の充実を依頼するなど排外主義もあおられている。
 しかし、現場は戦争絶対反対だ。図書館への国家介入に対し、図書館司書が「戦前の『思想善導』になる」と、次々と抗議の声を上げた。教育労働者も国葬反対で立ち上がったように、教育労働運動の後退を突き破る動きが始まっている。芳野友子連合会長の国葬出席に賛成した日教組本部をぶっとばし、現場から闘う教職員組合を再生させ、労働者の団結こそが戦争を止めることを示そう。
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