イギリス 戦争とインフレにストで反撃 鉄道労働者先頭に
週刊『前進』04頁(3259号03面04)(2022/09/05)
イギリス
戦争とインフレにストで反撃
鉄道労働者先頭に
(写真 積年の攻撃に対する怒りのストライキに入ったRMT組合員のスト防衛のピケットライン【8月18日 マンチェスター】)
6月以来の闘いが継続・拡大へ
イギリスで8月18~20日、鉄道・海運・運輸労組(RMT)4万人に加えて機関士・機関助手労組(Aslef)、運輸職員労組(TSSA)傘下の労働者がロンドン地下鉄・バスなどの都市交通、全国鉄道網でストライキに決起し、交通機関の80%を停止させた。要求は3年間停止されていた7〜8%の賃上げ、労働条件の改善だ。鉄道当局は要求に応えず、組合運動の抑圧・分断を策動。闘争は継続されている。鉄道労働者のストは今年6月に開始された。3波にわたる24時間スト、全国の交通網を包括する交通3労組のかつてない共闘は社会に衝撃を与えた。メディアは一斉に「福祉国家の解体」「労組なき社会」を掲げて新自由主義を強行した保守党サッチャー首相が退陣した1992年以来で最大のストだと報じた。
さらに、この闘いに応えてイギリスの2大労組であるUNISON(公共サービス労働者137万人を組織)、Unite(建設・運輸・製造業・物流など129万人を組織)、通信労組(CWU)、ジャーナリスト労組(NUJ)などが8月中旬から9月上旬にかけてのスト日程を発表した。都市交通、全国鉄道、港湾、医療、教育、郵便、電信電話、運送、消防、廃棄物処理・道路清掃などあらゆる産業部門の労働者から法廷弁護士までがストに決起し、イギリスは事実上のゼネスト情勢に突入しようとしている。
新自由主義崩壊が怒り解き放つ
その背景にあるのは戦争とインフレに対する怒りだ。何より、ジョンソン保守党政権のもとで、欧州帝国主義のなかでもひときわ深々とウクライナ戦争に介入してきたのが英帝だ。ロシアへの経済制裁は、すさまじいインフレとなって英労働者階級の生活を直撃・破壊している。7月のインフレ率は前年同月比10・1%で、過去40年で最高の水準となった。8月の食品価格上昇率は11・6%で調査開始以来最高を記録し、光熱費も4月から54%引き上げられ、来年にかけてさらに値上げされる。約半数の人々が食費を切り詰めざるを得なくなっている。
加えてコロナ危機の激化、国民保健サービス(NHS) の崩壊的危機、労働条件の悪化など、新自由主義の破産が極限化するなかで、労働者階級の怒りがストの波となって広範な規模で爆発しているのだ。
RMTのミック・リンチ書記長は「労働者の間には積年の攻撃に対する反抗の波が高まっている」と語った。ストの現場からは「ピケットラインへの他労組の組合員の連帯表明、乗客の激励が強まっている」と報告が上げられている。
核使用公言する支配階級と対決
6月以来の鉄道ストの直撃を受け、ジョンソン首相が7月に辞任を表明した。しかし英帝は、この政治危機を賃下げや大量首切り、労組破壊など労働者階級への攻撃に利用しようとしている。次期首相候補者であるリシ・スナク前財務相とリズ・トラス外相は2人ともメイ前政権以来の閣僚経験者であり、抜本的なストライキ制限法を制定し、今回の鉄道ストのような「常軌を逸した行動」(ジョンソン)を根絶しなければならないと公言している。これに対してRMTとUniteは怒りに満ちた戦闘宣言を発出。ストに対する政府の攻撃が、炭鉱・鉄道・港湾労組の「三角同盟」が牽引(けんいん)した1926年ゼネストに対する反動攻勢以来の歴史的挑戦であるとして弾劾している。
また、トラスは「(世界が全滅しても核のボタンを押すことは)首相の重要な義務だ」平然と核戦争にたたき込もうとしている人物だ。英労働者階級の怒りは、戦時下で軍事的突出を競い合う保守党党首選に対しても向けられている。
戦後世界体制崩壊、新自由主義破産、世界戦争情勢のただ中で戦争とインフレに立ち向かう英労働運動と連帯し、安倍国葬の強行と戦争への総動員に突進する岸田政権を打倒しよう!