戦争挑発のペロシ訪台弾劾 日米軍事演習が一線をこえ 中国侵略戦争が発動段階に
戦争挑発のペロシ訪台弾劾
日米軍事演習が一線をこえ
中国侵略戦争が発動段階に
ペロシ米下院議長の台湾訪問とそれを前後する米軍・自衛隊の激しい軍事演習・軍事展開が、中国侵略戦争へ向けた米日帝国主義の一線を越えた動きとして行われた。これが日本階級闘争の激動も規定している。安倍国葬粉砕を、中国侵略戦争―世界戦争阻止、改憲・戦争の岸田打倒の闘いとして爆発させよう。
史上最大の対中示威行動
8月2日、ペロシ米下院議長が軍用機で台湾を訪問し蔡英文(さいえいぶん)総統と会談した。直前の米中首脳会談で中国政府が強い反対を示したのを無視し、台湾近海に米空母ロナルド・レーガンや強襲揚陸艦トリポリを臨戦態勢で展開させながら訪問を強行したのだ。大統領継承順位で副大統領に次ぐ位置にある下院議長の訪問は25年ぶりである。これに対し中国軍は台湾を取り囲むような形で大規模な軍事演習を連日展開し、一触即発の事態に入っている。
ペロシ訪台は、軍事挑発を行い対中国の戦争情勢を激化させているのが米帝であることをはっきりと示した。米帝と日帝は、5月の日米首脳会談とクアッド(日米豪印)首脳会議、6月の首要7カ国首脳会議(G7サミット)と北大西洋条約機構(NATO)首脳会議を転換点に、対中国の軍事演習をすさまじい頻度と規模で行っている。そこには質的転換がある。
米軍は東中国海で6月下旬から約1週間、嘉手納基地のF15や岩国基地のF35B、FA18戦闘攻撃機など大量の戦闘機を飛行させ、中国本土に接近する挑発的な飛行訓練=軍事作戦を行った。米軍が「最大級の圧力を加える作戦を実行する」と説明し、日本政府高官も「米軍による史上最大の対中示威行動だった」というすさまじい軍事行動が、NATO首脳会議の過程で行われていたのだ。
それに続いて6月29日から8月4日まで、米海軍が主催する多国間海上軍事訓練の環太平洋合同演習(リムパック)が米ハワイ沖で行われた。クアッドやオーカス(米英豪)をはじめ26カ国が参加し、艦艇38隻、170機以上の航空機、兵員約2万5千人を動員した世界最大級の多国間演習だ。米空母や、空母への改修を進める海自護衛艦「いずも」など各国の主力艦を投入し、「対中国を念頭に主要参加国の最先端能力の統合を図る」(6月25日付読売新聞)という中国侵略戦争へ向けた大規模演習が1カ月以上にもわたって展開されたのである。
重大なことは、このリムパックの終盤に、自衛隊が「存立危機事態」を想定した実動訓練を初めて実施したことだ。「存立危機事態」とは、2015年に成立した安保戦争法の要である武力攻撃事態法に基づき、「密接な関係の他国への攻撃」を日本の「存立危機」とみなして、その段階から集団的自衛権の発動による武力行使=本格的参戦を可能とする事態のことである。訓練には海自とともに日本版海兵隊=水陸機動団が所属する陸自西部方面隊も参加した。
8月6~7日に日本戦略研究フォーラムが実施し、防衛相経験者ら国会議員、元自衛隊幹部が出席した机上訓練において、「尖閣諸島」有事は日本への武力攻撃が発生した「武力攻撃事態」に、台湾有事は「存立危機事態」に認定するとした。この実動訓練がすでに始まっているのだ。
これらすべてが、対中国の作戦構想EABO(遠征前進基地作戦)を実際に発動していくための実戦訓練として行われている。8月前半の米インドネシア軍事演習「ガルーダ・シールド」(14カ国・5千人規模が参加)にも、自衛隊が初めて参加した。両軍空挺(くうてい)部隊とともに陸自第1空挺団の部隊がパラシュートで降下し、攻撃目標を3カ国の部隊で制圧する訓練が行われた。
8月14日から九州で始まった陸自と米陸軍の実動訓練「オリエント・シールド22」には、米本土から第1多領域部隊(ミサイル、電子、サイバーなどの能力を一体的に扱う作戦部隊)が初参加する。同部隊と陸自が連携して電子戦を展開し、妨害電波で相手の指揮系統を混乱させ、陸自の「12式地対艦誘導弾」や米軍の高機動ロケット砲システム「ハイマース」などで直接的な攻撃を加えるといった想定での訓練だ。
7月には木更津駐屯地に暫定配備されている陸自オスプレイが初めて九州まで飛行して訓練を行った。オスプレイは南西諸島への部隊上陸の要を担う主力機だ。米日帝国主義の中国侵略戦争が一気に発動段階に入ろうとしている。
中国本土へ全面戦争想定
米日帝の構える対中国侵略戦争は極めてリアルな作戦として構想されている。
それは、2010年QDR(4年ごとの戦力見直し)に初めて記された「エアシーバトル構想」において、その恐るべき姿がはっきりと示された。
エアシーバトル構想とは、陸海空・海兵隊、サイバー、電磁波、宇宙も含めた統合戦力による領域横断的な戦争を展開し、中国軍を第1列島線の内側に抑え込みながら、東中国海における海洋戦争から中国本土への縦深攻撃までを想定した全面戦争計画である。それは核戦争を不可避とするものだ。そのあまりの激しさゆえに、現在の国家戦略としては公然とは採用されていないが、その基本構想が土台になっている。
南西諸島の島嶼(とうしょ)戦などでの限定戦争に抑え込む「オフショアコントロール」、そして2019年に発表され「インサイド・アウト防衛」(第1列島線の付近のインサイド部隊としての陸軍・海兵隊と陸自、アウトサイド部隊としての海空軍)という戦力投入の考え方を明確にした「海洋プレッシャー戦略」も基本的にエアシーバトルを補完するものだ。そこでは、空母打撃群を中心とした海軍戦力・航空戦力をいかに投入して、中国本土も含め全面戦争を貫徹していくかに主眼が置かれているのである。
自衛隊の「南西シフト」も2013年の防衛大綱に初めて登場し、15年の与那国島への陸自沿岸監視隊の設置を皮切りに、奄美大島、宮古島、そして石垣島、沖縄本島・勝連分屯地へのミサイル部隊の配備が進められている。
そして相浦駐屯地(佐世保市)に本部を置く水陸機動団も18年に連隊が編成された。南西諸島を戦場にたたきこみながら、中国への侵略戦争の戦端を開く。それを自衛隊が中心で担うのだ。絶対に許すことはできない。
大軍拡進める岸田打倒を
内閣改造を前倒しして発足した第2次岸田政権は「有事対応の『政策断行内閣』」「防衛力強化が最優先の課題」と宣言した。来年度予算に向けた防衛省の概算要求では、閣議了解した今年度予算比の約4千億円増となる5兆5947億円とは別に、要求金額を示さない「事項要求」を100項目以上盛り込もうとしている。5年間で倍増へ向けて、歯止めなき軍事費拡大の道筋をつけようとしている。
年末の国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画の3文書の改訂で、「反撃能力」と称した「敵基地攻撃能力」(相手国中枢機能への攻撃も含む)を盛り込むことを前提に、相手射程外から攻撃できる「スタンド・オフ・ミサイル」の導入に巨額の予算をつぎ込もうとしている。長射程ミサイル1千発の保有が検討されており、イージス・アショアに代替する「ミサイル防衛」用のイージス・システム搭載艦にも長射程ミサイルの配備を狙っている。陸上自衛隊への無人地上車両(UGV)の導入費も計上する。
今秋は、中国侵略戦争へ向けた改憲・大軍拡を阻止する大決戦だ。全学連を先頭にした労働者階級の実力闘争で国葬を粉砕し、改憲・戦争でしか延命できない日帝を打倒する大闘争を切り開こう。9・23全国闘争へ総決起し、自国帝国主義打倒の反戦闘争の歴史的突破口としよう。