刑法改悪を弾劾する 政治犯への転向強要を狙う戦時刑法への大転換許すな

週刊『前進』04頁(3253号04面01)(2022/07/18)


刑法改悪を弾劾する
 政治犯への転向強要を狙う戦時刑法への大転換許すな


 刑罰から懲役と禁錮を廃止し、新たに「拘禁刑」をつくる刑法の改悪が、6月13日に国会で成立した(公布から3年以内に施行)。
 朝日新聞(6月11日付)は、「(刑法から)懲らしめの意味合いが強い懲役をなくし、拘禁刑に『改善更生』を明記することで、受刑者の立ち直りや再犯防止をより具体的に実現する」などと報道している。これは、今回の改悪の危険性をまったく無視した翼賛報道そのものである。
 今回の刑法改悪の核心は、これまでの刑法体系を根本的に破壊し、「更生」「改善指導」の名のもとに、国家(「刑事施設の長」)が受刑者の内面にまで踏み込むところにある。それは、戦争のために、とりわけ政治犯に対する「思想改造」=転向の強要を狙い、それを刑法上の「義務」にするということであり、戦時刑法への大転換にほかならない。
 ウクライナで始まった戦争は、米帝による中国スターリン主義打倒を核心とする、米帝・NATOブロック(日帝を含む)対中露ブロックによる世界戦争=第3次世界大戦に向かって、日々激化している。一方で世界中の労働者が、この情勢の根底からの転覆、つまり社会変革をかけて、労働組合の結成とストライキやデモをうちぬいている。革命的情勢が日々拡大・深化しているのだ。
 この中でとりわけ日帝は帝国主義における最弱の環ゆえに、米帝とともに中国侵略戦争に踏み込むことを決断し、前のめりになって戦争と改憲に突っ走り始めた。われわれの眼前で日々展開されているのは、まさに新たな戦前であり、日帝権力はすべての政策や法の制定を、戦争準備の一点に絞り込もうとしている。刑法の改悪もその重要な一環だ。全力を挙げてこれを粉砕しなければならない。

「拘禁刑」を導入

 今回の刑法改悪は、懲役刑と禁錮刑を廃止して「拘禁刑」に一本化した上で、「作業」(強制労働)とともに「指導」(矯正=人格改造プログラム=転向強要)を「改善更生」のためと称して受刑者に強制するものだ。
 「拘禁刑」に一本化することで、今までの懲罰としての「刑務作業」はなくなるなどと報道されている。また「拘禁刑」とは自由刑であるかのように報道されているが、まったくのペテンだ。そもそも「自由刑」とは、定められた施設に拘禁して移動の自由を制限するだけの刑を指す。それ以外に労働などを強制してはならないというのが、国際的な標準となっている考え方だ。だが今回新設された「拘禁刑」では刑務作業の強制はなくならない。その目的が「懲罰」から「改善更生のため」にすり換えられるだけである。
 とりわけ政治犯の扱いにおいて、今回の改悪は決定的に重大だ。改悪法では、内乱罪などの政治犯に対する刑罰としてあった禁錮刑を廃止して拘禁刑に変え、「改善更生」の名による刑務作業の実施に加えて、さらに「指導」と称する矯正=人格改造プログラムが義務として強制される。実際にはとんでもない転向強要攻撃への踏み込みだ。
 また「作業」も「指導」もその行使権限は刑務所長にあるとされた。それらの実績を「評価」する権限も刑務所長が握るということである。その場合、評価によっては新たに懲罰対象とされ、あるいは懲罰が延長されることになる。さらに将来的には、政治弾圧としての恣意(しい)的な刑期の延長=予防拘禁制度の導入なども狙われているとみるべきである。まさに中国侵略戦争に向けた戦時刑法への大転換だと言える。

侮辱罪の重罰化

 今回の刑法改悪では同時に、ネット上の「悪質な言論」の規制を口実にして、「侮辱罪」の重罰化が行われた。これまでの「拘留(30日未満)か科料(1万円未満)」から、「1年以下の懲役・禁錮か30万円以下の罰金」に引き上げられた。しかもこの侮辱罪改悪部分だけは他に先立って、参院選さなかの7月7日に施行されたのだ。
 この重罰化ではネット上の「誹謗(ひぼう)中傷」への対策には効果がないとされているばかりか、「侮辱」の定義があいまいで、どのような表現であれ権力が危険とみなせば「侮辱」として重罰の対象にされてしまう。すなわち、政権や戦争、天皇(制)に対する批判などの正当な論評を委縮させ、表現の自由を脅かすことこそが改悪の目的なのである。戦時下の弾圧、思想統制攻撃として、断じて看過できない。
 翼賛国会の中で改悪刑法は可決・成立させられたが闘いはこれからだ。全世界の労働者と連帯し、戦争絶対反対の闘争を爆発させ、中国侵略戦争・第3次世界大戦を阻止する闘いの中で、戦時刑法への大転換を覆していこう。
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