G7―NATO首脳会議を弾劾する 全世界を第3次大戦に引き込む 米欧日帝の暴挙に怒りの反撃を
週刊『前進』04頁(3252号03面01)(2022/07/11)
G7―NATO首脳会議を弾劾する
全世界を第3次大戦に引き込む
米欧日帝の暴挙に怒りの反撃を
(写真 「帝国主義者らの会議だ!」「戦争やめろ!」。約6千人がG7サミットに抗議のデモ【6月25日 ミュンヘン】)
6月26〜28日の主要7カ国首脳会議(G7サミット)と29〜30日の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は、帝国主義の延命のために全人類を第3次世界大戦へと引きずり込もうとする米欧日の頭目どもの戦争会議となった。ウクライナで始まった「対ロシア戦争」を果てしなく激化・長期化させ、さらに中国をロシア以上の「敵」とみなして全面対決することを、米欧日帝国主義は二つの会議で確認したのである。だが、この戦時下で各国の労働者階級の闘いは、世界の根底的変革を求めて荒々しく高揚している。この闘いと固く連帯し、世界戦争・核戦争を阻止する今夏8・6広島―8・9長崎闘争の歴史的成功をかちとろう。
NATO戦略概念を大転換
米バイデン政権によるウクライナへの高性能兵器の供与が矢継ぎ早に打ち出される中、ロシア・プーチンは焦りに駆られてウクライナ東部への攻勢を強め、6月25日には要衝セベロドネツクが陥落、7月4日にはルガンスク州のほぼ全域をロシア軍が制圧した。対してバイデンは1日、新たに8・2億㌦の追加軍事支援を発表、2月以降の米帝の対ウクライナ軍事支援は総額69億㌦に達した。こうした中で開かれたG7サミットでは、当然ながら「停戦」や「和平」に向けた検討などは一切行われず、ウクライナ戦争を米帝主導のもとでさらに激化・長期化させることが確認された。G7共同声明はその冒頭に、ウクライナへの軍事面を含むあらゆる支援を「必要な限り」行うと明記。また「ロシアに対する経済的措置をさらに強化する」として、ロシア産の金の輸入を禁止することが合意された。さらに中国の進める巨大経済圏構想「一帯一路」に対抗し、G7として中・低所得国のインフラ整備に向け5年で計6千億㌦(約81兆円)を投資することを決めた。こうした動きに、ロシアはもとより中国も激しく反発しており、G7に対抗して6月23日に行われた新興5カ国(BRICS)のオンライン首脳会議では、習近平がBRICS加盟国を拡大する方針を初めて明言、これに応えてイランやアルゼンチンがただちに加盟を申し出た。
何より重大なことは、このように米欧日帝国主義と中国・ロシアとの間で文字通り世界が真っ二つに分断される中で、来年のG7サミット(5月19〜21日)を広島で開催することを正式に決定したことである。核戦争を準備する米日帝をはじめとしたG7の頭目どもが、「核なき世界の実現」などと称して被爆地・広島の怒りと闘いを踏みにじりにくるというのだ! 絶対に許すわけにはいかない。
中国に初めて言及即応部隊30万人へ
続いて開かれたNATO首脳会議は、結成以来最大の歴史的転換を宣言する場となった。NATOの行動方針となる「戦略概念」を12年ぶりに改訂し、これまで「戦略的パートナーシップを求める」としていたロシアを「最大かつ直接の脅威」とみなした。さらに決定的なことは、戦略概念で初めて中国に言及し、「中国はわれわれの利益、安全保障、価値に挑み、法に基づく国際秩序を壊そうとしている」と激しい敵意をあらわにしたことである。米欧に対して中国が「体制上の挑戦」を突きつけているとまで断言した。これを踏まえ、来年までに有事対応の「即応部隊」を現在の4万人から一気に7倍以上となる30万人超に大幅増強することを決定。また米軍はポーランドに東欧で初となる常設司令部を設置し、ルーマニアやバルト3国にも部隊配備を強化する。さらにウクライナへの包括的支援策として、ウクライナ軍が現在使っている旧ソ連時代の兵器・装備をNATO標準のものに置き換え、そのために必要なウクライナ兵の訓練などもNATOが全面的に行うことを決めた。これが意味するのは、ウクライナ戦争がいよいよ本格的に「NATO対ロシア」の戦争に転化していくということだ。
そして、このように対ロシア戦争に前のめりになるNATOが、新たな戦略概念で「ロシアと中国は、法の支配に基づく国際的な秩序を揺るがそうと協力し合っている」と決めつけ、ロシアもろとも打倒・粉砕すべき対象として中国を名指したのである。このことは極めて重大だ。これまでドイツ、フランスなどの欧州帝国主義は、欧州連合(EU)と中国との包括的投資協定に大筋合意(20年末)するなど一定の経済協力を進めてきたが、今やNATOは、「経済的な結びつきがあるから戦争にならない」といった牧歌的・経済主義的な俗論をあざ笑うかのように、米帝の主導のもとで対ロシアのみならず対中国の軍事同盟=戦争遂行同盟として自らを全面的に再編することを宣言したのである。日本の首相として初めてNATO首脳会議に参加した岸田は、「ウクライナは明日の東アジアだ」と発言してNATO新戦略に賛意を示した。
世界戦争情勢は、G7およびNATO首脳会議をもって完全に新たな段階に突入したのである。
「台湾有事」をあおる米日帝
今回のG7サミットとNATO首脳会議に先立ち、ドイツの有力シンクタンク「国際安全保障問題研究所(SWP)」は「G7の未来」と題する特別報告書を公表し、現在のG7に韓国、オーストラリア、ニュージーランド、そして台湾を加えた「G10プラス1」を発足させることを提起した。すでに米日帝は大枠こうした考えのもと、ロシアおよび中国を相手に世界再分割戦に乗り出している。とりわけ重大なのは、米帝の台湾政策のエスカレーションである。米国防長官オースティンは先月、日本経済新聞のインタビューに答え、台湾への武器調達を後押しするため年間で数十億㌦の支援を検討していることを明かした。また米上院では6月中旬に超党派で「台湾政策法案」が提出された。「『外国軍事資金供給(FMF)』と呼ばれる既存の枠組みを通じて資金を提供し、台湾が米国製の武器調達や米軍との軍事訓練に使う。4年間で45億㌦(約6000億円)の提供を目指す」(6月23日付日経新聞)という。
米帝は、ウクライナで親ロシア派政権が転覆された14年2月のクーデター以降、21年までの7年間で総額25億㌦の軍事支援を供与し、ロシアとの軍事的緊張を意図的にあおり激化させながら、ウクライナを「反ロシア軍事国家」へと仕立て上げた。それと同じ手口で、米帝は巨額の軍事支援を通じて台湾政府を手なずけ、中国本土からの「分離・独立」を促し、台湾を帝国主義陣営の側に組み込もうと動いているのである。それは領土の分割そのものであり、中国スターリン主義・習近平政権にとっても絶対に(プーチンにとっての「ウクライナのNATO加盟」以上に!)容認できない。米帝の台湾政策は、それ自体が「台湾有事」をあおる挑発的な戦争策動にほかならない。
戦争とインフレに労働者の怒り拡大
他方で、労働者階級人民の生活を困窮に追い込みながらロシア・中国との戦争にのめり込む帝国主義に対し、今や世界中で怒りが爆発している。どんなに「ロシア・中国の脅威」をあおっても、今日の新自由主義大崩壊と物価高騰下で生存の危機に追い込まれてきた労働者階級人民の不満と憤激はおさまらない。それが各国の階級闘争をますます激化・先鋭化させていることに、G7の頭目どもは震え上がっている。「賃金ではなく利潤を、福祉ではなく戦争をカットしろ!」と掲げて大規模ストに決起したイギリスRMTを先頭に、欧州各国では「鉄道や航空業界などのストライキが相次いでいる」(7月5日付日経新聞)。また欧州外交評議会(ECFR)が欧州10カ国を対象に行った世論調査によると、ウクライナ戦争について「早期に戦闘を停止し交渉を始めるべき」と答えた人は全体の35%を占め、「(ロシアに代償を払わせるために)戦闘の長期化、死者の増加もやむを得ない」と回答した22%を上回った(「どちらともいえない」は20%、「その他」は23%)。前者と後者の比率を国別にみるとイタリアは52%対16%、ドイツは49%対19%、ルーマニアは42%対23%、フランスは41%対20%と大差がつき、政府が特に好戦的な姿勢を示してきたイギリスですら22%対21%と拮抗した(比率が逆転したのは10カ国中でポーランド1国のみ)。G7およびNATO首脳会議の意に反して「今すぐ戦争をやめろ!」の声は各国で急速に拡大している。
加えて重要なことは、英国防省が「ウクライナ、ロシア両軍とも士気が低下」「ウクライナ軍はここ数週間、兵士の脱走に苦しんでいる」と発表したように、ウクライナの戦場で両軍の兵士が戦争を拒否し始めていることだ。特にゼレンスキーの総動員令で無理やり戦場へと駆り出された若い労働者が「自殺行為に近い作戦」を命じられ、武器を置いて逃亡するケースが増えているという(6月23日付共同通信)。
この兵士たちに延々と血を流させ、殺し合いをさせているのは、プーチンのみならず米帝をはじめとした帝国主義各国の支配階級である。この連中こそ全世界の労働者階級人民の敵であり、打倒対象だ。
8・6広島―8・9長崎闘争へ
米バイデン政権は、今秋の中間選挙を前に支持率の急落にあえぎ、全米で拡大する労組結成の動きとストライキ・デモの高揚に追い詰められている。米帝支配階級の中で求心力を維持するためにも、バイデンはますます対中強硬策=中国侵略戦争へ突き進む以外になくなっている。そして日帝・岸田は完全にそれと一体化し、参院選を経て大軍拡と改憲への攻撃を一気に強めようとしている。米日帝が狙う中国侵略戦争で、南西諸島をはじめ日本列島はウクライナ以上の戦場にされる。石垣市と宮古島市が有事における住民の避難に必要な航空機の数や期間などを見積もったところ、宮古島は避難のために航空機381機を必要とし、石垣島は1日45機の航空機を運航した場合、全市民の避難までに「9・67日」を要することがわかった。また沖縄県は、国民保護法に定められた「武力攻撃予測事態」を想定して、住民を県外に避難させるための図上訓練を年内に実施するとしているが、人口5万人前後の石垣島・宮古島ですら途方もない回数の空輸が必要となるのに、120万人以上が暮らす沖縄本島からどうやって避難させられるというのか。本当に住民の命を守るなら、米日帝の中国侵略戦争を阻止し、すべての基地を撤去するまで闘う以外にない。「沖縄から移動すべきは住民ではなく軍事基地」(具志堅隆松さん)なのだ。
岸田政権は一方でこのような破滅的で犯罪的な中国侵略戦争への策動を推し進めながら、他方では「国力」のすべてを大軍拡と戦争に集中し、労働者階級人民の生活と社会のすべてを崩壊させようとしている。JR在来線の4割廃線を掲げた国土交通省検討会・内閣府による「国家改造計画」はその最たるものだ。7・17国鉄闘争全国集会はこの攻撃と真っ向から対決し、「新・戦争協力拒否宣言」を発した動労千葉を先頭に、反戦闘争を基軸とする階級的労働運動をあらゆる職場に組織するための総決起集会だ。7・17集会を成功させ、さらに戦争を阻止する実力闘争の先頭に立つ戦闘的学生運動の荒々しい登場をかちとろう。
歴史の決着は、世界戦争か世界革命かの二者択一へといよいよ絞り上げられた。23年広島サミット開催に向けた国家権力の一切の弾圧・規制を実力で打ち破り、今夏8・6広島―8・9長崎反戦反核闘争の成功をかちとろう。
〔水樹豊〕