焦点 「侮辱罪」改悪 厳罰化で言論弾圧を狙う
週刊『前進』04頁(3250号03面03)(2022/06/27)
焦点
「侮辱罪」改悪
厳罰化で言論弾圧を狙う
6月13日、刑法第231条「侮辱罪」が改悪され、重罰化された。改定前の231条は「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する」と規定していた。この「拘留(30日未満)又は科料(1万円未満)」の刑罰に「1年以下の懲役・禁錮もしくは30万円以下の罰金」が加えられた。公訴時効は1年から3年に延長された。侮辱とは「他人に対する軽蔑の表示」を指す。
インターネット上での誹謗(ひぼう)中傷により、自殺に追い込まれたり、病気になったりすることが社会問題化するなかで、侮辱罪を厳罰化し、誹謗中傷などの攻撃を抑止しようというのが今回の刑法改悪の表向きの理由だ。
政権批判の萎縮が狙い
戦時下に突入した現在、日帝・岸田政権が侮辱罪の厳罰化で狙っていることは、誹謗中傷の抑止ではなく、政権批判の言論を萎縮させ自己規制に向かわせることである。言論の自由、表現の自由の圧殺、すなわち階級闘争への弾圧は外への侵略戦争と常に一体である。反戦闘争、階級的労働運動の爆発で岸田の反革命的意図を粉砕しよう。そもそも侮辱罪は、1875年の太政官布告、讒謗(ざんぼう)律に由来する。これは、人民の名誉ではなく政府の官吏を批判の嵐から守ることを目的に運用された。新聞紙条例とともに当時の自由民権運動の弾圧のために頻繁に適用された。「言論の自由」「表現の自由」を奪う法律が現代まで生き残り、強化されたことは、日本国家の専制主義的本質が150年前から変わっておらず、岸田のいう「日本は民主主義国家」がいかに虚構であるかも示された。
「首相はうそつきだ」と言っただけで逮捕できる侮辱罪の重罰化は到底許せない。
処罰の基準あいまい
侮辱罪の適用対象の多くは、集会での演説や発言、やじ、デモで叫ばれるシュプレヒコールやスローガンなど大衆的な抗議表現である。これらを恣意(しい)的に処罰の対象として取り締まろうとしている。厳罰化に伴い、逮捕条件も緩和され、住所不定でなくても逮捕・勾留が可能となり、最長23日間も拘束されれば、労働者は職を失うことを恐れざるをえないし、家族のことも心配になる。権力は罪を認めれば留置場から出られると誘導する。現行犯逮捕でなくても令状による逮捕はある。警察内の任意の取り調べも可能だ。
古川禎久法務大臣は法案の審議で「『首相はうそつきだ。早く辞めれば』と言えば犯罪にあたるか」と質問され、「犯罪の成否は証拠に基づき捜査機関によってなされる」と答えた。どのような表現が処罰の対象になるのか、基準はあいまいなままである。権力側の恣意的な判断で犯罪と認定され、逮捕・勾留・起訴される。
法務省と警察庁は、正当な言論活動は処罰対象ではなく、「現行犯逮捕は実際上は想定されていない」という政府統一見解を提出した。だが「正当な言論か否か」を判断するのは権力の側だ。権力が不当な言論だと判断すれば現行犯逮捕も令状逮捕もあり得る。
侮辱罪の厳罰化は、政権を批判する言論・表現活動を萎縮させ、あるいは弾圧して抑え込み、戦争に向かおうとする攻撃である。むしろ萎縮せずに反戦デモ・集会を行い、大衆的な怒りを爆発させ、言論弾圧を粉砕しよう。