鉄道軍事利用を防衛省が明言 国鉄闘争は戦時体制との対決に
週刊『前進』04頁(3250号02面02)(2022/06/27)
鉄道軍事利用を防衛省が明言
国鉄闘争は戦時体制との対決に
政府とJR資本は、ローカル線の大規模な廃止に踏み出している。それは「ローカル線の大虐殺」とも表現される激しい攻撃だ。1987年に強行された国鉄分割・民営化は大破産し、地域をなで斬りするような鉄道の大再編が避けられなくなったのだ。
ローカル線の廃止は、戦争に向けて国家と社会のあり方を全面的に改造する攻撃の一環だ。岸田政権が6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2022」は、防衛費倍増をはじめ戦時財政への転換をあからさまに打ち出した。その骨太方針には「地域公共交通の再構築」という項目も盛り込まれた。「地域公共交通の再構築」とは、鉄道は地方ではもはや主要な交通手段になりえないと決めつけて、バスに転換するなどして廃止するということだ。戦争を最優先する国家は、地方の住民の生活を一切顧みない。岸田政権はこうした姿勢をあらわにした。
国土交通省は、ローカル線の廃止を沿線自治体に半ば強制的にのませようとしている。そのための方策を定めるために設けられた「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」は、7月中に報告をまとめる予定だ。「鉄道の維持を前提にしない」という同検討会での議論の経過から、報告の中身がローカル線の大幅な廃止へかじを切るものになることは明らかだ。
これと同時に国交省は、今年3月に「今後の鉄道物流のあり方に関する検討会」を設置し、JR貨物をめぐる議論を重ねてきた。ローカル線を大規模に廃止するとしても、鉄道による貨物輸送網を寸断するわけにはいかないからだ。
5月に開かれたこの検討会には防衛省の幹部が出席し、自衛隊による鉄道利用の構想を明らかにした。これは国鉄分割・民営化以来なかった異例の事態だ。もちろん自衛隊は、これまで何度もJR貨物を軍事利用している。陸上自衛隊10万人を動員した昨年9〜11月の大演習に際しても、JR貨物は武器・弾薬を輸送した。だが、これはいわば「公然の秘密」だった。こうした事実を防衛省やJR貨物が正式に公表したことは一度もない。だが今回は、鉄道の軍事利用があからさまに議論された。これは岸田政権が中国侵略戦争を決断したことと一体だ。
この検討会で防衛省は、「有事の際、北海道〜本州の基幹部隊について、南西地域へ各種輸送力により速やかに輸送を行う必要がある」とし、その主な輸送手段は「鉄道、トラック、船舶、航空機の民間輸送力」だとした。そして、「鉄道輸送は……安全性やダイヤの安定性の観点からも輸送力としての期待は大きい」ので、「自衛隊の輸送力向上のため、鉄道輸送の更なる活用を追求」すると述べている。中国侵略戦争を遂行するために、鉄道輸送は不可欠だというのだ。
国鉄分割・民営化以来の鉄道の位置づけは変えられようとしている。それは国鉄分割・民営化が前提としていた枠組みが変更されることも含んでいる。日本の鉄道が150年前に国有鉄道として始まったのは、鉄道と軍事は直結しているからだ。鉄道の「再国有化」とも言うべき事態が、戦争国家への転換とともに進もうとしている。
言うまでもなくそれは、鉄道が公共性を取り戻すということではまったくない。ローカル線の廃止はこれまで以上に進み、医療や教育など労働者人民の生存に必要なあらゆる領域はさらに激しく破壊される。
JR東日本の「業務融合化」に示される、雇用と労働のあり方を一変させる攻撃も、戦争国家化と連動し始めた。それは労働者を国家目標に従わせ、労働者に国家目標を体現させるために強行されつつある。
だが、そこには絶対に矛盾がある。職場・地域でこの攻撃に立ち向かい、粉砕することはできる。その闘いの基盤になるのは、反戦闘争を反戦闘争として押し貫くことだ。動労千葉はその道を決断した。これに続く闘いの陣形を広く厚く確立する場が、国鉄闘争全国運動の7・17集会だ。