「こども家庭庁」の正体 国家が子どもを管理・支配/戦争への総動員を狙う

週刊『前進』04頁(3249号03面02)(2022/06/20)


「こども家庭庁」の正体
 国家が子どもを管理・支配/戦争への総動員を狙う


 岸田政権は今国会で「こどもに関する取り組み・政策をわが国社会の真ん中に据える」と称し、その「司令塔」として「こども家庭庁」を新設した。来年4月開庁を予定し、まずは厚生労働省と内閣府が担ってきた保育所、こども園、児童手当、児童虐待防止といった児童福祉中心の政策をそこに移すという。
 そして、①「家庭を基盤」に親の成長を支援」し、②「妊娠前から、妊娠・出産、新生児、乳幼児、学童、思春、青年の一連の成長過程において、良質かつ適切な保健、医療、療育、福祉、教育を提供」し、18歳という年齢で区切ることなく、③民間を活用し、④データや統計を活用し政策を立案するという。そのために「自治体や学校をとおして『家庭の経済、学校の生活、家庭生活の状況』を(データとして)集積し、分析する」というのだ。
 この「こども家庭庁」は子どものためのものでは全くない。子どもを社会(保育や義務教育などの国と行政の責任)で育てることを放棄し、保護者の自己責任にし、子どもが生まれる前から死ぬまで一生の個人データを国家が管理し支配するというものである。実に恐ろしい。

教育の国家統制強化と戦前の家族制度の復活

 この「こども家庭庁」にかけた岸田政権と支配階級の意図は決して見過ごすことはできない。
 「こども家庭庁」はそもそも、菅政権の時にデジタル庁の創設と一体で構想されていた。デジタル庁と同じく内閣総理大臣の直属の機関として設置する。縦割り行政の弊害をなくすと称するが、閣議決定などを通りこし内閣総理大臣の権限が強化され、独裁への突破口となる。
 さらに名称に「家庭」が入っているのは、極右・日本会議の中心的メンバーが主張する「親学」のことであり、それは戦前の家父長制的家族観をベースに、子育ての責任を家庭とりわけ母親のみに押し付けるという意味である。
 岸田は選挙公約で「家庭教育支援法」の制定を掲げており、こども家庭庁をその突破口としている。「家庭教育支援法」とは何か。2015年に安倍政権の下で安保戦争法が強行された時、教育勅語が暗唱させられる森友学園で「安倍首相、ガンバレ。安保法制、国会通過良かった」と子どもたちが大きな声を出している映像が報道された。岸田や自民党の狙いはこの森友学園のような状況を全国につくり出すことにある。軍国少年・少女、最終的には「お国のために率先して命を捧げる兵士」をつくり出すことを目指すものだ。こども家庭庁の設置は教育を戦争の道具にしていく新たな攻撃でもある。

「産めよ増やせよ」政策への女性の動員許すな

 コロナ×大恐慌下での日帝の危機は「少子化」の進行を伴ってますます進んでいる。日帝は今やその一切を戦争で突破しようと必死になっている。女性の戦争動員と新たな「産めよ増やせよ」政策はその柱だ。
 岸田政権は骨太方針の中で、出産・育児休業給付をはじめ日本の子育て関連の公的支出を欧米並みに将来的に倍増するとした。財源についても「公平な立場で広く負担していく新たな枠組み」を検討し、勤労者と企業が保険料を負担する「こども保険」導入を視野に入れている。
 財界も学校教育などの民営化を叫びだした。増税をビジネスチャンスに資本の延命を図るというのだ!
 子ども(労働者家族)の貧困、虐待、いじめの根本は、新自由主義の行きづまりと崩壊そのものである。その解決は、この社会そのものをひっくり返す以外にない。新しい社会をつくり出そう! その主体は子どもであり、労働者階級だ。労働者は今、生きるために労働組合を選択し、あらゆる契機から立ち上がり始めている。現場労働者の怒りで「こども家庭庁」を粉砕し、岸田政権を打倒しよう!
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