入管法改悪絶対許すな 〈ウクライナ避難民保護〉の狙い ミャンマー559人を難民不認定に
入管法改悪絶対許すな
〈ウクライナ避難民保護〉の狙い
ミャンマー559人を難民不認定に
難民認定わずか74人
出入国在留管理庁は5月13日、2021年の難民認定者等を発表した。難民認定されたのは過去最高(!)の74人だが、認定率は0・7%という低水準だ。昨年2・1国軍クーデターが起こったミャンマーが32人で最も多く、次いで中国が18人、アフガニスタン9人、イラン4人、イエメン3人、ウガンダ2人、カメルーン2人、イラク、ガーナ、パキスタン、南スーダン共和国が各1人だ。
「難民として認定されなかったものの『人道上の配慮』から在留を許可された(人道配慮措置)」のは580人であり、そのうちミャンマー国籍が498人だ。昨年5月、入管庁は在日ミャンマー人を対象に在留や就労を認める緊急避難措置を決め、今年3月末までに約4600人に許可が出された。しかし緊急避難措置は、「一時保護」にすぎず、この措置を難民認定や人道配慮と混同してはならないとされている。
入管庁は、この498人に「緊急避難措置」で6カ月の在留資格を付与した人が何人いるのか、公表すべきだ。「過去最高の水増しを行った疑い」がある。
さらにミャンマーの難民認定申請者で不認定にされた人が559人もいる。入管庁は昨年来、緊急避難措置による6カ月在留を与える条件として難民申請取り下げを要求するなど、難民申請者数を減らすために圧力をかけてきた。加えて今回の水増しだ。
ミャンマー国軍司令官ミンアウンフラインは、民主化を求め不屈の抵抗を続ける労働者民衆を「テロリスト」と呼び、「最後の一人まで撃滅する」と言い放っている(2月27日、国軍記念日演説)。日本政府は日本にいるミャンマー人、ロヒンギャ難民をこそ、直ちに難民として保護すべきではないのか!
日本政府・財界は今も国軍に資金を提供し続け、4月から新たにミャンマー国軍幹部4人を防衛大学などに留学生として受け入れ、殺人訓練を施そうとしている。これこそミャンマー国軍による残虐な人民虐殺に直接加担する行為だ!
秋の国会で改悪狙う
ウクライナ「避難民」は、岸田が受け入れを表明した3月2日から5月14日までで979人となった。そのうち難民申請をしたのは3人に留まっている。
日本は、難民条約上の難民とは、①人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員である、または政治的意見を理由に②迫害を受ける恐れがあるという十分に理由のある恐怖を有する、③国籍国の外にいる、④国籍国の保護を受けることができない----という4条件に限るとしている。しかも政府に迫害対象として個別に標的にされていない人は難民ではない(個別把握論)というのだ。
難民支援に携わる高橋済弁護士は「シリア人を含め、ほぼ全ての難民訴訟で国は個別把握論を主張し、認定を拒否した。個別に標的になっていなければ駄目だとするのは、難民条約上の根拠がない勝手な解釈だ」と指摘している。
このような日本の難民認定基準では、〝ロシアの無差別攻撃は迫害に当たらない〟〝個別に狙われていない〟からウクライナから戦火を逃れた人々は難民ではなく、「避難民」だというわけだ。戦争による爆撃、無差別虐殺を「十分に理由のある恐怖」ではないというのか! こんな基準は、すでに国際的には通用していない。
5月13日の国会で岸田は、ウクライナ避難民を保護するために「準難民」制度の創設を含む入管法改悪案を秋の臨時国会に提出する方針を示した。昨年廃案となった入管法改悪案の「補完的保護対象者」の焼き直しだ。
これに対し「準難民は口実」「昨年廃案に追い込まれた入管法改悪を狙っている!」「真の狙いは送還停止効の廃止だ!」という怒りが噴き出した。現行法では難民申請中は強制送還されない「送還停止効」があるが、これを3回目以降の難民申請者には例外規定を設け、送還を可能にするというのだ。何度も難民申請を繰り返すのは、日本が難民を認めないからだ。
在留資格がないだけで差別し、裁判もなしに長期収容する入管行政。ウィシュマさんを始め多くの外国人が命まで奪われている。
5月13日の記者会見で古川禎久法相は、「適切な保護と、送還忌避・長期収容問題を一体的に解決するため必要な法整備を進める」と、語った。ウクライナ戦争で900万人にも達しようとしている戦争難民「保護」との抱き合わせで入管法改悪を狙っているのだ。ウィシュマさん虐殺の真相究明も行わず、責任者として処罰されるべき法務大臣・入管庁長官がさらに罪を重ねようというのか!
ウクライナ難民保護も、ロシアへの経済制裁や武器供与を競う米帝・NATO加盟諸国と張り合い、中国侵略戦争に踏み込む岸田政権の戦争政策の一環だ。激化する差別・排外主義、ヘイト攻撃と対決し、入管法改悪を絶対阻止しよう。