三里塚新やぐら裁判 萩原さんが陳述 成田空港の廃港を求める
週刊『前進』04頁(3244号04面02)(2022/05/16)
三里塚新やぐら裁判
萩原さんが陳述
成田空港の廃港を求める
(写真 反対同盟を先頭にデモに立ち、裁判所前で「東京高裁・渡部裁判長は強制執行を認めるな」と声を上げた【5月9日))
5月9日、東京高裁第2民事部(渡部勇次裁判長)で、三里塚新やぐら裁判控訴審の第3回が開かれ、この日で結審した。
開廷に先立ち、三里塚芝山連合空港反対同盟の呼びかけで、裁判所を包囲する霞が関デモが68人の参加で行われた。意見陳述する東峰の萩原富夫さん、動労千葉の中村仁副委員長などが決意を表し、司会の太郎良陽一さんのリードでシュプレヒコールを上げデモに出発。宣伝カーから婦人行動隊の宮本麻子さんが「やぐら・看板が建つ農地を守り、軍事空港を阻止しよう」と訴えた。
市東さんの営農と生活侵害許さない
裁判では最初に萩原さんが陳述した。「成田空港会社(NAA)は土地の買収で農地法違反を犯し、買収したことを隠していました。空港公団(NAAの前身)は当時存命だった市東東市さん(孝雄さんの父)に何も知らせず明け渡しの要望もせず放置していました。この経緯を見てどこが『移転目的の買収だから合法だ』と言えるのでしょうか。看板・やぐらは反対同盟のものです。その敷地の使用権は反対同盟が持っています。小作権者である市東さんの同意のない契約解除は無効。NAAに収去を求める権利はありません」さらに萩原さんは、「への字誘導路の直線化」を理由にNAAが土地明け渡しとやぐら撤去を求めていることを「市東さんの営農と生活を侵害し追い出すことが目的」と断じ、航空需要激減の中で「機能強化、第3滑走路建設などの計画を中止すべき」と迫った。
そして、「NAAは自然環境を破壊し、無駄に電気を使い、大量のCO2排出で地球温暖化を促進している。戦争になれば成田空港が軍事転用されることは明白。われわれは成田空港の廃港と収去を求めて闘い続けます」と述べ、傍聴席から大きな拍手が起こった。
反対同盟顧問弁護団が重厚な最終陳述を行った。
NAAは市東さんの天神峰農地に建つ監視やぐら、看板など反対同盟所有の四つの物件の「収去と土地の明け渡し」を求めているが、その言い分を丸ごと認めた一審千葉地裁の判決は不当だ。小作者に秘密裏に行われた底地の売買は無効であり、NAAは土地所有権を取得していない。小作者の同意なく行われた土地の賃貸借契約解除申請は農地法に違反し、市東さんの賃貸借契約は存続している。その農地の一角に建つ監視やぐらの看板に書かれた「第3滑走路反対、強制収用阻止」などの訴えは、NAAに抗議し農民として生きる上での命がけの意見表明である。
市東さんが精魂込めて作った土地の明け渡しを求め、営農を破壊することは許されない。一審判決を取り消し、NAAは提訴を取り下げよ。
弁護団のこの陳述に、NAAの代理人弁護士は打ちのめされ、あせりといらだちを隠せない。渡部裁判長は無表情を装いつつ弁論の終結を宣言し、判決を9月2日午前11時に指定した。
報告集会で傍聴者が万感の思い語る
弁護士会館で報告集会が反対同盟の伊藤信晴さんの司会で行われた。萩原さんが自身の陳述を振り返り、一層の支援を要請した。会場参加者からの発言で、A県の労働者が目を潤ませながら「今日たまたまこの裁判を傍聴し、みなさんの訴えが胸に迫った。市東さんのご苦労を思い、自分も力になりたいと感じた。今日体験したことを明日からの職場での実践に生かしたい」と語り、共感の拍手で迎えられた。