サイバー警察局設置の狙い 中国侵略戦争への体制づくり 自衛隊と一体のサイバー戦部隊
週刊『前進』04頁(3241号03面02)(2022/04/25)
サイバー警察局設置の狙い
中国侵略戦争への体制づくり
自衛隊と一体のサイバー戦部隊
4月1日、警察庁は同日施行の改悪警察法に基づいてサイバー警察局を約240人で、また警察庁関東管区警察局にサイバー特別捜査隊を約200人で設立した。これは3月17日に防衛省が540人で「自衛隊サイバー防衛隊」を設立したのと一体で、ウクライナ戦争のただ中、中国への侵略戦争体制構築を狙う重大な治安弾圧攻撃である。徹底的に弾劾する。
世界的に激化するハイブリッド戦争
現代の戦争は旧来の軍事力だけでなくサイバー空間での戦闘も含めたハイブリッド戦争と言われており、それへの対処が中国侵略戦争体制構築を急ぐ日帝にとって死活的課題だ。そのことが衝撃的に明らかになったのが2014年ロシアによるウクライナ侵攻であった。当時、ロシアは電子戦によってウクライナのレーダーを使用不能にするとともに、サイバー攻撃(ハッキング)で発電所、放送局の機器を乗っ取った。さらに携帯電話を一時的に使用不能にし、その機能が回復した時には多くのフェイク情報をメール等で大量に流した。このためウクライナの住民は混乱に陥った。ロシアは少ない軍事力で短期間に作戦をなし遂げたとされ、「高い現代戦能力に世界が驚いた」(防衛省幹部)という。
このように正規軍、非正規軍の活動の他に、サイバー戦や情報戦を組み合わせる戦い方は「ハイブリッド戦争」と呼ばれている。
米帝はこの事態を掌握・分析してロシアのハイブリッド戦争への対抗策をウクライナのゼレンスキー政権とともに準備してきた。
ロシアは今回も14年と同様の攻撃をしかけたがウクライナは米帝の支援を受けて「IT軍」を創設し、暗闘・死闘が繰り広げられた。マイクロソフトなどの米帝企業もウクライナへのサイバー攻撃を阻止するのに全面協力した。
日帝は、昨年9月28日に閣議決定された「サイバーセキュリティ戦略」で、サイバー攻撃の脅威国として中国・ロシア・北朝鮮を名指しして、「同盟国・同志国」と連携した取り組みの強化を求めている。
原発などへの攻撃も「武力攻撃」と認定されれば自衛隊が対応するが、認定されない限り、警察がサイバー犯罪として捜査する。その境目はあいまいだ。そのため自衛隊と警察の双方にサイバー戦争を担う部隊が必要なのだ。
「国家警察」復活の道を開く改憲攻撃
戦前の日本の警察制度は国家警察そのものだった。内務大臣が地方長官である警視総監や府県知事等を指揮監督し、これらの地方長官が国の機関としての警視庁や道府県(警察部)とその下に置かれた警察署等を指揮監督した。また、警察機関の業務の範囲は、現在より広く衛生、建築、労働などまで担当していた。このように戦前の警察は社会秩序、治安を守ると称して、治安維持法や特高警察のように天皇制テロルと一体で治安弾圧体制と戦争遂行体制の基軸であった。
戦後、1954年に施行された現行警察法においては、建前上は中立な国家公安委員会のもとに警察庁を置き、しかもこの警察庁は実行部隊を持たず、各都道府県の自治体に設置された公安委員会のもとでの都道府県警察が警察活動を行うとされてきた。
ところが今回の警察法改悪によって警察庁が直接サイバー特別捜査隊という捜査を行う部隊を持つことになる。これは戦後改革で否定されてきた国家警察復活の突破口である。
警察法改悪は常に改憲・戦争攻撃と一体だ。15年の戦争法案強行採決の年にも警察法が改悪され、国家公安委員会の任務に「特定の内閣の重要政策」を助けることが加わった。その結果、警察庁出身の杉田和博元官房副長官や北村滋元国家安全保障局長が政権中枢に入り込んだ。
監視国家化と反戦闘争弾圧を許すな
サイバー特別捜査隊の任務はインフラの防衛とともに「個人情報の保護」が目的だとされているが、それは口実でしかない。すでに見たようにインフラ防衛という名のサイバー戦争への備えが主任務なのだ。警察法第2条は「犯罪の予防」をうたっている。サイバー犯罪を予防するためと称してあらかじめ個人情報を含むあらゆる情報を無差別に収集してサイバー攻撃を予防し、戦争体制を築くことこそがサイバー警察局の目的なのだ。デジタル庁が発足した昨年9月1日以降に警察庁がサイバー警察局の検討会議を開始したことを見ればサイバー警察局の狙いは明らかだ。すなわち昨年成立した重要土地調査規制法が、基地防衛と称して反基地闘争弾圧のための住民情報の収集を合法化したが、サイバー警察局はデジタル庁とともにデジタル版の特高警察制度を作る策動なのだ。
だがこのような策動など日本の労働者階級人民の労働運動と反戦闘争の爆発で粉砕することは全く可能だ。ウクライナ反戦闘争の高揚をかちとり改憲・戦争攻撃を打ち破ろう。